電子レンジ導入前まで、家のオーブン仕事を一手に担っていた、
無口で大きくて頼もしい、橙色の四角の箱。
火加減が難しいのよ、と、母親はコンロの前で仁王立ち。
スポンジのふくらみに一喜一憂し、焼き色がつくのを待ち切れずやきもきしたり
ボウルについたクリームをぺろんと分けてもらったり、パンの生地を一緒にこねたり‥
オーブンの前には、美味しさばかりではなくひそひそたのしい時間もありました。
無愛想な箱から出て来るのは、
ごくシンプルなケーキやシュークリーム、カスタードプリン、
アップルパイに、手こねのやわらかロールパン。
玉子とバターと小麦粉と、
熱に膨らみ甘く広がる香りは幸せの象徴みたいで、大好きな香り。
お誕生日のケーキは格別でしたが、何でもない日の、
てづくりのおやつもたまりませんでした。
素朴なおやつは、何よりのたのしみで、
家に帰って「おやつのにおい」がした日には
ご機嫌につま先立ちをしてしまうのでした。
特別な道具を使うでもなく、家族のために焼くおやつ。
よろこぶ顔をみるのが、母のたのしみだったのでしょう。
そのたのしさは、自分が、誰かのためにぐるぐるおやつをつくるようになってから、
ようやくわかるようになったもの。
自身の供したものをわかちあえる相手がいる、
というのはふつふつ湧き上がるうれしさにつながるのだと知りました。
甘さは控えめ、飾りっけもなくて。
すこしぼそぼそしても、焦げすぎても、だけどふかふかあったかい。
完璧じゃないのに、完璧な味!
わたしがマルカフェで焼いているのは、
その頃のハッピーな記憶をイメージしたおやつ。
それが、「マルカフェのパウンドケーキ」だったりします。
懐かしさを感じていただけるのなら、それはレシピの簡素さと、
ブブンとひと混ぜに込めたわたしの記憶と
あなたの記憶が重なったせいかもしれません。
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「ガスオーブン」は電子レンジにその地位を追われ、引っ越しの際に処分することに。
母が大事にしていたものだから、お別れのとき時にはすごく切なくて。
「便利だねー」なんて、新参レンジの出番はやたら増えたものの…
母がおやつをつくることもだんだん少なくなって、
代わりに、わたしが焼きはじめるようになりました。
たべるひとからつくるひとへ。
つくるひとからたべるひとへ。
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【今後の予定】
●6月15日(日) マルカフェ文藝部「おすし」電子版販売開始
●8月1日(金) マルカフェ文藝部「棕櫚shuro」第三号/紙本版販売
●10月12日(日) MBC#006
●10月25日(土) 御嶽商店街ハロウィン17:00‐18:30
●11月24日(月) 第十九回文学フリマ出店
営業時間内外、ご予約・貸切随時お承りしています★
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●金土日の週末カフェ(営業時間 11:00-17:00)
●Malu Cafe/マルカフェ
〒145-0073 大田区北嶺町37-2
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