第9幕の5 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

 夕食の時、栞は丈瑠と顔を合わせるのが怖かった。どんな顔をしていいのか全然分からない。あれだけ、ただ命令されただけの許嫁だと、自分の気持ちではないのだと、苦手な嘘で偽っていたのに、たったの一言でぶち壊してしまった。あれではまるで告白だ。丈瑠は栞の気持ちに気が付いてしまっただろうか。
 彦間の話に上の空で返事をしてしまい、彦間も何かあったことはすぐに分かった様だが、栞には何も聞かなかった。
 夕食がすんで、栞が黒子達と座敷を出てから、彦間が丈瑠に聞いた。
「殿、栞殿の様子がおかしかったのですが、何か聞かれたのですか?」
丈瑠が困った顔をする。栞がおかしかったのは、多分そのせいではない。
「栞も父親の事は知っていた。ここへは、ただ命令されて来ただけだと」
丈瑠が栞に聞いたまま答える。
 しかし、丈瑠自身その言葉を信じてはいなかった。
 命令されて許嫁になっただけだと言うくせに、時々違う行動を取る。二人でいる時に見せるふとした表情や、観覧車の中で次の約束をしようとした事。そしてさっき、流ノ介の事を誤解されたくなくて告白した事。どれも、やってしまってから慌てていた。彦間の言うとおり、栞は何かを隠している。苦手な嘘を付いてまで、自分を偽るのはそのせいだろう。栞が時折見せる悲しそうな表情も。
 栞が黙っている以上、何もかも謎のままだ。丈瑠がため息を吐いた。
「栞殿を信用しても?」
「栞を気に入っていたのは、ジイだろう」
「しかし」
彦間が言い募る。栞の様子がおかしかったのは、父親のせいではないと言いたかったが、言えば、理由を言わなければならない。
「もういい。相手が外道衆という訳でもない。権力争いになど巻き込まれたくはない」
話を切り上げて席を立つ。
「殿」
彦間が声を掛けたが、丈瑠は座敷を出て行ってしまった。
 残された彦間がため息をついた。




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