第8幕の1 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

          第八幕   誕生日(うまれたひ)


 彦間が座敷で、何やら丈瑠に相談を持ちかけている。
「殿、来週の火曜日ですが、栞殿の誕生日でございまして」
「栞の?」
丈瑠も初耳だと驚く。
「何故知ってる?」
「まあ、殿の許嫁でございますれば、身上書の様なものが」
身上書には、簡単な学歴や生年月日等が書かれているらしい。彦間が栞の事に詳しいのはそのせいらしかった。
「誕生日か」
丈瑠も考える仕草をする。
「そこで、家臣達がいた頃の様に、ここは一つ誕生パーティーなどしてはどうかと。栞殿もここへ来て三月あまり、もうだいぶ馴染まれておりますし」
丈瑠も頷く。仲間がいた頃は、それぞれの誕生日をみんなで祝った。栞も喜ぶだろう。
「そうだな」
「そこででございます、殿」
「何だ?」
「栞殿は、台所の仕事もします故、家臣達みたいに内緒でと言う訳には参りませぬ」
「ああ」
「そこで相談なのですが、栞殿を一日、外へ連れ出してはくれませぬか」
パーティーの準備を手伝えと言うのかと思ったら、意外な相談だったので少し驚く。
「お嫌ですか?」
丈瑠が横を向いたまま聞き返す。
「どこに行けばいいんだ?」
「どこへでも、映画でも、買い物でも、栞殿の行きたいところへお出かけくだされ。六時頃までにお戻りくだされば、準備はしておきますので」
丈瑠が渋々頷く。
「では、殿から栞殿をお誘いください」
「俺が誘うのか?」
ぎょっとしたように振り返る。
「殿にさり気なく誘って頂かないと、ばれますので」
丈瑠が気が重そうに返事をした。


 全くジイのやつ。と丈瑠がしかめっ面で廊下を歩いていると、栞が一人で縁側に座っている。丈瑠は小さくため息を吐いて、栞の隣で足を止めると、栞が振り返った。
「休憩か?」
丈瑠を見ると、栞はいつも嬉しそうな顔をする。
「はい。もうすっかり夏の日差しですね」
丈瑠が、軽く深呼吸をして話しかける。
「今度の火曜日、予定は?」
「火曜日ですか?いつもと変わらないはずです」
いつもの稽古と家事だ。
「じゃあ、どこかへ行かないか?」
栞が、驚いた様に丈瑠を見る。
「あの?」
「たまには息抜きだ。ここへ来てからずっと働き詰めだろう」
一応彦間に誘い文句は聞いてある。
「・・・丈瑠様も、ですか?」
丈瑠にもお休みがあるんだ。と言う風に見る。
「一人の方がいいか?」
栞が慌てて首を横に振る。
「いいんですか?」
丈瑠が頷くと、栞がとても嬉しそうな顔をした。
「じゃあ、決まりだ。どこへ行きたい?」
「どこでもいいんですか?」
「ああ」
栞がしばらく考える風に首を傾げてから、にっこりと笑う。
「じゃあ、遊園地」
丈瑠にとっては一番避けたい選択だが、諦めて頷くと、栞がまた嬉しそうに笑った。



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