M. L. ステイリー 作 「盗まれた心」(8)
The Stolen Mind By M. L. Staley


*** [盗まれた心 (7)] のつづき ***


「ええ、まあ」 とクエストはゆっくりと言った。「でも、弟さんの企みを挫いた後のぼくはどうなるんです?」

「それは簡単なことだ」 とクレイソン氏が微笑んだ。「だが、心配になるのはもっともだ。君の意思をフィリップから引き出して君の体に戻して、それから謝礼の1万ドルを支払う」

「本当に出来るんですか?」

「全く問題ない。私がフィリップの手に触れて、君の意思を取り戻せばいいだけのことだ。そしたら私はタンクの中に入って、スイッチをプラスにする。その浸透的な行為によって、二人の意思は私の体から抜け出す。だが、溶液の中に2つの体と2つの意思が共存すると、均衡を保とうとする力が働いて、それぞれの意思が本来の体を探してその中に入り込む。そうなったら、君と私は今の私たちと全く同じ状態でタンクから出るのだ」

「何にしろ、不可能なことはないと信じたいのは山々ですが」 とクエストが頭を振った、「失礼ながら、僕にはあなたがこの発明について仰ってることは、馬鹿げたことに思えるんです」

「無理もない」 とクレイソン氏はすぐに認めた。「こんな玩具じみたものの働きなんぞ、説得力に欠けるとは思う。では、 "リベレイター" が実際に動いているところを見せるから、いっしょに来てくれ」


   *   *   *   *   *

(つづく)