要点の手がかり④言い換えを押さえる


筆者が伝えたがっている内容のうち、一回で読者に理解してもらえる自信のないものは、形を変えて繰り返し出てくる。
似たような言い方が繰り返されることもあれば、詳しい説明と、その内容を端的に表した表現の組み合わせというのも多い。
繰り返されるということは、それだけ筆者が伝えたがっていることということなので、必ず押さえておこう。



★言い換え・類比


「つまり・すなわち・つまるところ・とりもなおさず」


「言わば・言ってみれば・言うなれば・一言で言えば・簡単に言えば」


「~と言える・~と言ってよい・と言っても過言ではない」


「同じ・同じく・同様」 「似ている」 「共通・相通ずる」


「~もまた・ともに」



★特徴 ※詳しい説明ではなく、その前後で端的に言い表されている部分がキーワード。


「~性・~的・~然・~化」 「~力・~心」


「~観・~感」 ※「観」は考え方やものの見方や評価、「感」は気持ちや感じ方。


「~関係・~社会・~文化」 「点・面・ところ・部分」 


「しくみ・構造・システム・制度・~制」


「役目・働き・機能・役割」 「効果」 「影響」


「方法・~方・~法・~術」 「~式・~流」




さあ、たくさんの語句が出てきたけれど、今までも無意識のうちに目を留めていたものが結構あったのでは?



これからは、速読の際にこれらの手がかりを見つけ、手がかりを含むキーワード、あるいは手がかりの前後にあるキーワードに線を引いていこう。


そして、読み終えたら必ず、印をつけた部分だけをもう一度拾い読みして、要点を頭に入れ直そう。


その際、話題の中心をで囲み、筆者の主張の中心には波線を引き、対比になっている2か所は←→で、言い換えになっている2か所は=でつなぐなどして、キーワードを整理しておくとわかりやすくなるよ。

 

要点の手がかり③対比を押さえる


わかりやすく伝えるために、ほかの何かと比べることも多い。
何と何を比べているかだけでなく、それぞれのどういう面が比べられているのかを正しく読み取ることが大切。



★逆接 ※あとに出てくる部分が重要。


「が・だが・しかし・けれども・ところが」


「もちろんAだがB」 「確かにAだがB」 ※一般的な考え方であるAより、筆者独自の見方を示すBが重要。



★対比・比較


対義語 ※「具体←→抽象」 「精神←→肉体・物質」 「有機的←→無機的」など


不・無・非・未で打ち消された語 ※「非効率←→効率」 「非人間的←→人間的」など


「違う・異なる」 「違い・相違・差」


「反対・逆に・反面」 「~に対し・~に比べ」 「一方・他方」


「AではなくB」 「AだけでなくB」 「AよりB」 「AむしろB」 「あくまで」 


「特に・殊に・中でも・とりわけ・何より」 「最も・最~・一番」


「実は・~こそ・まさに」 


「本当に・本当の・真の・真実の・本来の・本質」

 

 

 

要点の手がかり②文章の構造をつかむ


文章の構造をつかむ上で最も重要なのは、話題転換とまとめになっている部分を見落とさないことだ。
さらに、原因や目的を語っている部分を押さえておくことも大切だ。



★話題転換 ※問題提起の前に多い。


「ところで・さて・では・それでは」



★並列 ※いくつの項目に分けて説明しているのかに気をつける。


「まず……、次に……」 


「一つは……、もう一つは……」 「第一に……、第二に……」



★まとめ


「こうした・このように・こう考えると」


「結論・結局・要するに」 「やはり・したがって」


「たとえば」 ※具体例はかぎかっこでくくって軽く流し、その前後のまとめの部分に注目



★因果関係


「原因・理由・わけ・ゆえ」 


「から・ため・ので」 「だから・なぜなら・というのも」


「~のせい・~のおかげ・~により」 「結果」



★目的


「目的・意図・狙い」 


「~するため・~するには・~するように・~しようと」

 

 



要点の手がかり①主張の中心をつかむ


まずは、最も重要な、話題と意見を押さえるための手がかりとなる表現から。



★話題の中心やキーワード


繰り返される語 ※ただし、文章の前半でしか繰り返されていない語は不要。


かぎかっこ・傍点つきの語 ※一般的な意味と異なる独特の意味を持たせていることも多い。


「~とは」 「~というのは」 「~ということ・~というもの」 「~として」



★問題提起


「~か」 「~だろう」 


「なぜ・どうして」 「どう・どんな・どのように」 「どこ・どの・何」



★意見・発見


「~べき」 「~なければならない・~なくてはいけない」


「~ではないだろうか」 ※この場合、疑問ではなく、筆者の考えは決まっている。


「~を忘れてはならない」

「必要・不可欠・求められている」


「重要・大切・大事」


「わかる・気づく・発見」 「証明」 「確かめる」



★問題点の指摘・批判


「問題・課題・誤り・過ち」 「~が問われている」


「~に陥る」 「~がち」 ※よくない傾向を指摘するとき


「~を忘れた・失った・見失った」 ※なくした大事なものを指摘するとき






「~ものである」 「~しよう」 「~したい」 「~がよい」

(2)速読速解に必要な割り切りと要点の手がかり


読書の愉しみは、そこに書かれている筆者の考えを受け止め、自分ならどうだろうかと立場を置き換えて思いを巡らせたり、感じた疑問に自分なりに答えようと自問自答したりする、言わば、文章との対話にある。
気になる部分を読み返したり、時には声に出して読んでみたりと、自分のペースで楽しめるのがいいところだ。


しかし、要点を拾う速読では、そんな読み方は時間の無駄でしかない。
短時間で情報を処理するためには、ある程度の割り切りが必要だ。


まず、課題文の話題や筆者の主張に、必要以上の関心を持たないこと。
初めて聞く内容に感心したり、納得できないところに反発を感じたりするような、誠実な読み方は必要ない。
とにかく、「はいはい、つまり、言いたいのはこういうことだね」と、軽く受け流すくらいの気持ちで、要点だけを押さえよう。


そのためには、知らない語や意味のはっきりしない表現があっても、そこで足踏みせず、スピードを意識し、集中して一気に読み進めること。
自分のペースでじっくり味わいながら読もうとせず、とにかく要点らしき部分に印をつけることに専念しよう。


現代文でも英語でも、長文読解の際には、読みながら必ずキーワードに印をつけて要点を押さえておかなければいけない。
キーワードがどこにあるのかは、ある程度経験を積めば、感覚的にわかるようになるけれど、まだよくわからないという人は、その手がかりになる語句を憶えるところから始めよう。


話題と意見を押さえる論説文では、筆者が伝えようとしている内容をわかりやすく目立たせるために、お決まりの語句が多用されるので、そうした語句を憶えれば、その前後にあるキーワードを拾うのも簡単だ。
また、自分の主張を書く際にも、こうした語句を使うようにするとわかりやすくなる。


次からの手がかり一覧は、もともとは小学生のために用意したものだ。
中学受験はもちろん、高校受験でも大学受験でも、そして社会に出てからも一生使える技術なので、まだ身についていない人はぜひこの機会に憶えておこう。

 

 


因果関係の提示


一般につながりが知られていないものごとについて、その間にどのような因果関係があるかを説明する。
あるいは、一般にAのせいだと思われている問題について、本当の原因はBだと説く。


時には、「AゆえにB」とされてきたものを、「BだからこそA」と、因果関係を逆転させて説明することもある。


たとえば、歴史上のある文明の滅亡について、これまで知られていた理由とは違う、環境破壊の影響を指摘することで、同じく環境問題に直面している現代文明も同じような道をたどりかねないと警鐘を鳴らす評論家もいる。


子供たちの「学力低下」にしても、学校で教える内容が減ったせいだとする人々に対し、むしろ家庭の教育力の低下に原因を求める声もある。


このように、隠された因果関係が課題文の中心になっている場合は、出題者もその指摘を支持していると考えられるため、論拠が弱いと感じられるような課題文であっても、「いや、そんなはずはない」と、その因果関係を真っ向から否定するより、その指摘を受け入れた上で、自分の意見を付け加える形にしたほうがいいよ。

 

 

 

 

新たな価値基準の提示


一般にAという理由で評価されているものを、新たなBという理由ゆえに価値があると評価する。


プラス評価であることは変わらないものの、その理由の部分に、新たな視点が持ち込まれるわけだ。

逆に、一般にAという理由で批判されているものを、新たなBという理由ゆえに問題であると批判するというのも同じだ。


このような新たな価値基準の提示も、筆者の独自性をアピールするための重要な手段だ。



世の中を見渡せば、批判の対象くらい、いくらでも出てくる、という意見もあるだろうが、実際のところネタ切れに近い状況もある。


そこで評論家たちはどうするか。
ある対象についての批判も擁護もある程度出尽くした感があると、今度は同じ対象の切り口を変えてみようということになる。


すでにさまざまな人が批判を書いている対象の場合、新たに書く人は、「これまではAという点から批判されることが多かったが、実はBという点こそが問題なのではないか」と、同じ対象であっても、批判の理由を変えて論じようとする。
もちろん、「一般にはAという点が評価されることが多いが、実はBという点にこそ本当の価値があるのではないか」という、プラスの面の評価の理由を変えるパターンもある。


このように、一見、これまでにもあった批判や評価のように見えて、実はその目の付け所が違っているという文章も多いので、批判や評価の対象だけでなく、その理由のほうにもきちんと注目するようにしよう。




(1)評論家の発想パターン


独自の視点をアピールするために評論家が使う、発想のパターンを知ると、筆者の主張をつかみやすくなる。


だいたい、評論家というものは、それまでの常識や定説に対し、新たな視点を提供しようとする傾向が強い。
ほかの人が言っているのと同じことをいうだけでは、文章の書き手として評価されないわけで、自分なりの独創性をアピールしようとすれば、意識しなくても自然とこのパターンになってしまうものなんだ。



評価の転換


プラスからマイナスへの転換:一般に認められているものの弊害や問題点を指摘する。


マイナスからプラスへの転換:一般に否定されがちなものの意外な価値をむしろ評価する。



わかりやすいのは、「近代化」に関する文章だ。
現在の豊かな生活は、産業革命以降の近代科学や産業の発達に支えられているのだから、近代化がもたらしたプラスの面が大きいのは当然で、近代化は人類にとって正しい選択であるはずだった。


だが、現代社会のさまざまな問題点に目が向けられ、果たして本当にプラスばかりだっただろうかと疑問が投げかけられるようになり、近代化の弊害が指摘され、近代の次に目指すべき社会のあり方をさぐろうという動きが活発になっていく。
この時点で、プラスからマイナスへの評価の転換が起こっているわけだ。


ところが、ここからさらなる展開が見られる。
近代化批判があまりに繰り返されてくると、今度は、「批判されることが多いものの再評価」という方向で書かれる文章が多くなる。
「Aという点を批判されがちだが、実はBという点を評価すべきなのではないか」と、マイナスに見られがちなものの中のプラスに目を向けるというパターンだ。

これまで近代化批判で否定されることの多かったものについて、再評価する動きが出てきて、マイナスからプラスへの評価の転換が起こってくる。


このように、評論家というものは、一般的な感覚に異を唱え、新しい視点を提供することに力を注いでいるので、その「新たな視点」が一般化して、当たり前になってしまうと、さらなる新しい視点が求められ、時には回帰を見せることもあるんだ。


こうした振り子のような動きは、日本の学校教育のあり方にも見られる。
戦後の自由な教育から、詰め込み教育へと変わったかと思うと、落ちこぼれなどが問題になった途端にゆとり教育が求められ、そうかと思うと、学力低下が指摘され始めるや否や、脱ゆとりが叫ばれるといった具合だ。


課題文を読むときにも、このような価値観の変化評価の転換を意識してみよう。

 

 



ここまで説明してきたように、小論文の出来を左右するのは、


・設問の意図や課題文の要点を正確に捉える読解力


・問題視されているものごとやそれが問題視される理由を理解するのに必要な基礎知識


・問題の背景や影響についての考察を掘り下げる思考力


・わかりやすく伝える文章力


という4つだ。



ここからは、この4つをどのようにして鍛えていけばいいのかを説明していこう。


まずは、読解力アップを図らないとね。


課題文が与えられ、その内容を踏まえて論じることが求められるタイプの小論文では、課題文のほとんどは評論か、それに近い内容を軽めの文体で書いたエッセイになっている。


その読解のカギは、課題文の主張の中心となる筆者独自の視点を理解することと、要点をすばやく正確に押さえることだ。

つまり、本文中の要点に印をつけながら速読し、筆者がどういう発想から、何を、どういう理由で問題視しているのかを正しく理解することが、自分の主張を展開するための第一歩となる。


そこで、この第4章では、筆者独自の視点というのが、どのような形で課題文に盛り込まれているのかを知ってもらったうえで、要点を押さえるための手がかりとなる語句を確認していくよ。

(4)一気に書く ②読み直しの際にチェックすべきポイント


小論文では、誤字脱字など表記上のミスも減点対象とされるので、読み直してミスを防ごう。

一文ごとでなくてもよいから、数文あるいは一段落ごとに、読み直す癖をつけておこう。


家で書くのなら、辞書を引いて正しい漢字を確かめるのも立派な勉強になるけれど、試験本番では、うろ覚えの難しい漢字を使おうとしないで、もっと易しい言葉で言い換えるほうが安全だ。

たとえば、「傲慢」の字が出てこなかったなら、「思い上がり」とすればよい。

「憂鬱になる」なら、「落ち込む」でも切り抜けられる。


誤字脱字はないにこしたことはないけれど、小論文の採点では、誤字脱字一か所につき1点引きというような形ではなく、誤字脱字が何か所もあったら全体評価を多少下げるという程度なので、これまで注意してきたような内容に関するミスに比べればダメージは小さい。

ただし、小中学生レベルの漢字を間違えていると、基礎学力も疑われるので、小中学校のテストに出てくるような同音異義語の使い分けはきちんと復習しておいたほうがいいよ。

 
読み直す際は、主語と述語がきちんと対応しているかどうかも必ず確認しよう。
一文があまり長くなると、主述関係や修飾関係がわかりにくくなるので、一文の長さはなるべく100字を超えないようにしよう

(たまになら100字を超える文があってもよい)


長すぎる文によく見られるのが、一文の中で、「……だが、……だが……」、「……ので、……ので……」、のように、逆接や順接を繰り返しているもの。

こうした繰り返しはやめて、2文に分けておこう。

(「……だが、……ので……」のように、逆接と順接が1回ずつなら問題ない)



なお、文体は、「だ・であるの常体に統一するのが基本だ。

「です・ます」の敬体を混ぜないようにしよう。

社会問題などについて論じる意見文タイプではなく、自分の志望動機や将来の抱負を語るような、作文に近い問題では、敬体で書いてもかまわないけれど、常体で書くよりも字数が若干増えるうえ、文末が単調になりやすいので、オススメはしないな。

また、常体であっても、並列や反復のように意図的にリズムを整える場合を除き、「……だ。……だ。……だ。」のように、同じ文末が3回以上続くのは避けよう


 

こうした書き間違いを直す場合は、二行も三行も消さなくてすむよう、なるべく消す分量を減らせるような言い換えを考えて修正しよう。
消しゴムで消して空白のマスを残したり、二重線で消して横に書いたりするのは、試験時間終了間近に使う最終手段だ。

気づいた間違いを放っておくよりはましだが、ミスとしてカウントされるのは避けられない。

書き直すときは、必ず間違いを消して、字数に合わせた言い換えでマス目をきれいに埋めておこう。