まずはこれだけ!「教育」

 


学力低下は、実態を分析し、対象と目的に合わせた対策をとるべき


 であり、ゆとり詰め込み二者択一で論じるべきものではない



・日本の戦後教育は、「自由ゆとり」と「管理詰め込み」の間をずっと揺れ続けてきた。


・一部のランキングやゆとり世代批判に振り回されず、まずは、「どのような層の、どのよう


 な学力が、どれだけ不足しているのか」という学力低下の実態を明らかにすることが必要。


・単なるゆとり脱ゆとりではなく、上位層を伸ばす英才教育や、底上げのための下位層の基


 礎学力の向上など、取り組みの対象と目的を明確にして、その必要性や効果を検討すべき。


教育格差の固定化を防ぐための「機会の平等」は大切だが、子供たちの資質やその時点での


 習熟度には差があり、誤った平等意識にとらわれて画一的な教育を行うべきではない。



教育問題はいずれも、教員・保護者・関係機関連携して取り組む


 べきものであり、学校や家庭のみに責任転嫁すべきではない。



学級崩壊モンスター・ペアレント親のモラルの低下家庭での躾不足に、教員の不祥事


 いじめの隠蔽は学校側に問題があるが、批判ばかりでなく、連携による解決を図るべき。


・下位層の家庭学習の不足や生活習慣の問題は、家庭の教育力の低下によるものであり、自覚


 に欠ける親に、家庭で果たすべき役割を認識させるなど、親を育てる教育も必要。


・学校側も、事なかれ主義ではなく、警察などとも連携して問題の再発防止を図るべき。



学力に加え、主体性社会スキルも育む全人教育が求められている。



コミュニケーション能力などの社会スキル、国際化に対応した異文化理解や実用的な語学力、


 問題解決能力などの社会的要請に応えるには、指導者の育成教材や指導法の開発が必要。


・学校にあれもこれもと押し付けず、家庭や地域社会との連携や役割分担も考える必要がある。



結論:時代のニーズに合わせて教育の目的手段を見直し、学校だけ


   でなく、家庭や地域社会も役割を担い、連携することが大切。




まずはこれだけ!「少子高齢化」



晩婚化一人っ子の増加による深刻な少子化に対し、「産みやすく


 育てやすい社会」にするための社会的サポートが求められている。



少子化の背景には、結婚観や人生観の変化教育費の増大、長引く不況などがある。


女性の復職を促すため、育児休業を取得しやすくし、待機児童が多い保育所を拡充すべき。


性別役割分担に縛られず、男女ともに働き方を見直し、仕事と家庭生活の調和を考えるべき。



医療の発達による高齢者の増加に加え、少子化により、高齢化が急


 速に進んだ日本では、労働人口の減少社会保障費の増大が深刻に。



・世界で最も急速に高齢化が進んだ日本は、4人に1人は高齢者で、超高齢社会を迎えている。


労働人口の減少は、日本経済を支えてきた国内市場の縮小を意味し、国力の低下につながる。


人口増加経済成長をあてにしていた年金医療保険は破綻寸前であり、制度改革が急務。


保障と税負担のバランス世代間格差が大きく、現役世代の不公平感の解消が課題。



老後の充実には、年金医療保険だけでなく、社会全体で支える


 「介護の社会化」や、予防医学終末期医療社会参加などにより、


 総合的に高齢者のQOL(生命の質)を高めていくことが大切である。



家族任せの介護は個人の負担が大きく、社会的入院介護疲れ老老介護孤独死が問題に。


・無理な延命治療を見直し、本人の希望に沿った終末期医療のあり方を考えることも必要。


・高齢者の社会的孤立を防ぐため、社会参加の機会を作り、地域の連帯を強化することも大切。



結論:男女ともに、育児や介護を含めた家庭生活と仕事の調和を図り、


   一部に集中しがちな負担を分散させ、地域の連帯を強化して、


   子供や高齢者を社会全体で支えるしくみを整えるべきである。





まずはこれだけ!「社会保障」



誰もが社会的弱者になりうることから、あらゆる立場の人々が暮ら


 しやすい社会を目指す「共生」こそが、社会保障の基本理念である。



障害者高齢者、女性、子供、外国人、貧困層など、社会的弱者が負っているハンデはさま


 ざまだが、ハンデに応じた適切な支援さえあれば、その能力を社会に活かせることも多い。


共生に基づくノーマライゼーションの実践には、物理的なバリアフリーだけでなく、心の壁


 をなくす「心のバリアフリー」も必要であり、偏見無理解をなくす教育や啓蒙活動により、


 一人一人の違いを認めて受け入れる社会を作ることが大切。



日本では、少子高齢化不況により、年金医療保険など、従来の


 社会システムの破綻の恐れと世代間の不公平感が問題になっている。



・「国民皆保険」で保障を手厚くしながら、人口増加経済成長をあてにして負担を減らした


 ため、超高齢社会を迎え、不況にもかかわらず、現役世代や次世代の負担が重くなっている。



社会保障は、保障と税負担のバランスが問題であり、どちらを重視


 するにせよ、充分な議論による国民の合意形成と、正確なニーズの


 把握優先度の判断に基づく効率的な予算配分が重要である。



・「大きな政府」を目指すなら、高福祉と引き換えに高負担を覚悟する必要があり、「小さな  


 政府」を目指すなら、弱者切り捨て格差社会に陥らないための対策を考える必要がある。


・限られた予算を効率的に配分するには、ニーズの把握優先度の判断が正確であることが必


 要であり、費用対効果を高めるには、施策の事後評価情報の共有と活用が不可欠である。



結論:共生の理念の実現のためにどのような支え合いが必要かを考え


   た上で、保障と税負担のバランスについて国民の合意形成を図


   り、効率的な予算配分費用対効果を高めることが大切である。





まずはこれだけ!「法と政治」



民主主義は、主権者たる国民主体的な政治参加が重要であり、


 自由には責任が、権利には義務が伴うことを自覚する必要がある。



・政党や報道機関は、支持層である高齢者寄りになりやすく、社会保障制度やエネルギー政策


 の見直しにおいて、国の未来を担う世代の声が充分反映されているとは言い難い。


政治不信政治的無関心による投票率の低下はさらなる政治腐敗を生むため、若い有権者


 主権者としての自覚を持って、自分たちの声を反映させるために行動を起こすことが大切。



多数決公共の福祉を重視する民主政治においても、少数派や弱者


 への配慮を欠いてはならない。



基本的人権の尊重の一方で、公共の福祉(社会全体の利益)のために個人の権利を制限する


 ことも認められてはいるが、少数派や弱者に一方的に犠牲を強いるものであってはならない。


・日本は民主国家だが、女性の社会進出、投票率、少数民族への配慮など、課題も残る。


安全保障エネルギー政策など、本来、国民全体で分かち合うべき負担が一部に集中してし


 まっている問題では、負担の分散不公平感の解消が必要。



司法行政も、市民感覚からの乖離を改め、既得権益前例主義


 とらわれないようにしなければならない。



・日本の官僚政治は、成果も上げてきたが、縦割り行政前例主義予算の獲得競争既得権


 益の保護など、無駄の多さ政官財の癒着が問題であり、政治主導が課題となっている。


・日本では司法・立法・行政が牽制し合う三権分立が不完全で、司法が政治判断に左右される。


・専門家のみによる裁判は、市民感覚からの乖離が問題になり、裁判員制度が導入された。


消費者保護労働者保護の観点からも、市民が身近な法律を学び、理解を深める機会が必要。



結論:法や政治の議論では、立場や価値観の違い社会的な影響を明


   らかにした上で、少数派や弱者への配慮を忘れないことが大切。

まずはこれだけ!「社会」



集団主義個人主義も一長一短であり、相互補完が望ましい。



個人は、さまざまな共同体に重層的に帰属することで、アイデンティティーを確立している。


・共同体内では価値観の共有が重要だが、価値観の多様化モラルの低下が問題になっている。


・共同体優先の集団主義は、個人の自由や個性が犠牲にされ、画一化硬直化を招きやすく、


 個人を尊重しあう個人主義も、単なる利己主義に走れば、共同体のまとまりを損ねかねない。


・海外との比較において、日本は閉鎖的排他的同質社会とされ、曖昧な言葉で本音と建前


 を使い分け、以心伝心言外の空気を読むことが求められがちだと批判されることが多い。


主体性個性の育ちにくい画一的な教育や、政財界の横並び意識前例主義も批判されがち。



支え合いの基盤だった地域社会の弱体化が多くの問題を生んでいる。



地域社会は、支え合いの基盤というだけでなく、世代を超えた多様な人間の中で社会性を身


 につけ、知識や経験の共有により問題解決能力を高める場としても大きな役割を担ってきた。


・経済成長に伴う人口移動干渉を嫌う個人主義から、相互扶助の精神が薄れ、育児や介護の


 負担の集中や弱者の社会的孤立が起こり、常識やモラルの共有地域文化の継承も困難に。



市民社会では、市民一人一人が社会の一員として自らの役割を自覚


 し、主体的な社会参加により義務と責任を果たすことが大切。



・市民には、自由と権利を主張するだけでなく、義務と責任を果たすことが求められる。


消費者意識の暴走から、理不尽な利己的要求をする人々の、常識やモラルの欠如が問題に。


・自発的なボランティア活動は、自己実現や社会参加など、慈善や奉仕以外の意義も大きい。


政治参加も市民の大事な役割であり、国民が主権者としての自覚を持って、政治不信政治


 的無関心による投票率の低下を防ぐことが大切。



結論:共同体内で、個人の多様性を認めながら、市民意識社会性


   育み、支え合いの基盤となる地域社会の再生を図るべきである。





まずはこれだけ!「環境問題」


近代の人口増加経済活動の拡大の結果、自然の回復力を超えて、


 地球規模の環境破壊が進んでおり、対策が急務となっている。



産業革命以降、農業生産性・医療・衛生状態の向上により、世界人口が急増した。


人口問題は、食糧・水・エネルギーの不足、開発に伴う環境破壊都市問題を生む。


環境破壊は、目先の利益にとらわれ、長期的・間接的な影響を考えない経済活動の結果。


・環境破壊の原因や影響の一部は未解明だが、解明を待っていては手遅れになる恐れがある。



環境破壊の直接原因は、近代の急速な開発に伴う資源の大量消費


 有害物質の排出だが、その背景には、近代化に伴う物質的豊かさ


 生産性の偏重自然の回復力に対する過信や無知がある。



森林破壊も、大気汚染酸性雨オゾン層の破壊海洋汚染土壌汚染も、自然の回復


 超えた開発の結果であり、今後は「持続可能な開発」で、開発と環境保護の両立を図るべき。


地球温暖化の原因であるCO2は、化石燃料の消費を伴う経済活動の結果であり、排出抑制に


 は、生産・流通・消費の各段階での省エネや、リサイクルリユースへの市民参加が必要。



環境対策は、個人や家庭から、地域社会、国、世界まで、各レベル


 で取り組むべき課題があり、意欲的な人々だけでなく、問題意識や


 関心の低い層も巻き込むための工夫や、利害の対立の調整が必要。



環境保護を訴えるEUと、国益優先の米・中や、開発の権利を主張する途上国との溝は深い。


・経済的インセンティブも活用して、環境保護に関心の低い人や企業の協力を促すことが必要。



結論:目先の利害にとらわれず、次世代生態系への長期的・間接的  


   影響にも目を向け、より長い目で、より広い視野で考えるべき。





まずはこれだけ!「情報化」



情報関連技術の発達は、情報の収集・管理・伝達を容易にし、あら


 ゆる分野で情報が極めて大きな価値を持つ「情報化」が進んだ。



・電信や無線通信に続き、コンピューターネットワーク化が、情報化を一気に進めた。


・機器などハードだけでなく、プログラムなどソフトの進化とその活用が大きな意味を持つ。


・経済だけでなく、教育医療においても、進化を続ける情報関連技術の活用が期待される。



情報処理の労力や時間の節約がもたらした利便性の一方で、情報化


 の弊害としてさまざまな問題が生まれ、対策が必要になっている。



情報の氾濫に加え、意図的な情報操作デマなど、信頼性に欠ける情報の流布が問題に。


・利用可能な情報は増えたが、無益なものや有害なものも多く、情報の取捨選択が重要に。


・情報を受け取る際は、発信者のバイアス偏見先入観)がかかっていることを意識すべき。


ネット犯罪情報の流出に対しては、セキュリティーの強化に加え、警戒を促すことが必要。



市民と情報の関係も変化しており、情報格差の解消や情報教育を通


 じて、高度情報社会にふさわしい暮らし方を考えていく必要がある。



・従来は受身であった一般市民による情報発信が容易になり、双方向性が高まった。


・世代や生活環境による情報へのアクセスのしやすさの差(情報格差)は新たな不公平を生む。


・提供される技術の開発や環境の整備だけでなく、「賢いユーザー」を育てる情報教育が重要。


・情報に振り回されずに、正しく見極めて賢く利用できる情報リテラシーの向上が課題に。  


ネット依存などによる低下が懸念される、対人関係に必要な社会スキルも養うことも大切。

 


結論:さまざまな分野で情報化の利便性を活かしつつ、情報化の弊害   


   に対処するため、技術開発や環境整備に加え、個人の情報リテ


   ラシーを高め、情報との付き合い方を考えることが大切である。





まずはこれだけ!「国際化」



人やモノや情報の移動が盛んになり、世界の結びつきが強まって、


 活動やその影響の範囲が拡大し、「世界の一体化」が進んだ。



大航海時代以降、船や航空機など移動手段と、電信やインターネットなど通信手段が発達。


・活動や影響が拡大し、国をまたぐ「国際化」、地球規模になる「グローバル化」が進行。


環境問題感染症金融危機など、グローバル化した問題の対策は、国際協力が重要に。



国際分業による相互依存が進む一方で、各国間の経済格差不均衡


 が対立を生み、紛争の原因国際協調の妨げになっている。 



植民地からの搾取で発展した先進国と、独立後も開発の進まない途上国との貧富の差は拡大。


先進国途上国との南北問題だけでなく、中進国最貧国との南南問題など、格差も多様。


環境保護を進めたい先進国と、開発の権利を主張する途上国との溝は深く、国際会議も紛糾。


・冷戦終了後、頻発している地域紛争も、対立や衝突の引き金は経済格差であることが多い。



外来文化の流入により「世界の均質化」が進むことには批判もあり、


 異文化理解と同じく、自文化の理解伝統文化の継承も大切である。



・欧米以外の地域の「近代化」は欧米の模倣になりがちで、文化の多様性を損ねるため、米国


 文化の流入による「アメリカ化」にも、伝統文化を破壊する文化的侵略だとの批判がある。


・日本が中国や欧米の外来文化を取り入れ、その知識や技術を発展に役立ててきたように、


 来文化の受け入れは新たな文化を生む可能性もあり、伝統文化の継承との両立を図るべき。


多文化共生社会における文化相対主義には限界もあり、普遍主義との併用が望ましい。



結論:グローバル化した問題に世界が協力して対処するため、異文化


   理解を深めて国際協調を進めるとともに、文化の多様性のため、


   自文化の理解を深め、伝統文化の継承も図るべきである。   



 

まずはこれだけ!「近代化」

 

中世から近代への「近代化」は、政治、経済、文化だけでなく、


 人々の
価値観にも大きな変化をもたらし、現代社会の基盤を作った。


・政治面では、市民革命人権意識を育て、議会政治市民社会を実現させた。

・経済面では、宗教革命商業国際貿易を促し、産業革命工業化資本主義を進めた。

・文化面では、ルネサンス人間中心主義合理主義を生み、分析的近代科学を発達させた。

現代文明現代社会は、物質的にも精神的にも、近代化の産物を基盤としている。


近代化は、効率細部を重視して、産業や学問を発達させ、現在の


 
物質的に豊かで便利な社会を築き上げた。


効率主義合理化は、「無駄」と判断されたものを省いて、時間やコストの節約を進めた。

市場原理のもとでの自由競争が、試行錯誤の積み重ねによる技術やサービスの向上を促した。

広告やマーケティングは、大衆の欲望を煽ることで、大量消費社会を生み出した。

細分化数値化による客観的理解を重視する分析主義は、科学技術近代医学を発達させた。


偏った価値観に縛られた近代化の弊害を認識して、切り捨てられて


 きたものを
再評価し、これからの社会のあり方を考える必要がある。


・現代社会が抱える問題の多くは、近代化がもたらした価値観の歪みをその背景に持っている。

生産性や競争結果の偏重は、自然環境の破壊伝統文化の衰退モラルの低下も招いた。

・近代化の流れの中で切り捨てられてきたものを再評価し、多様な価値を認めるべきである。

物質的な豊かさだけでなく、幸福感やゆとりなどの精神的豊かさも大切にすべきである。

・細分化や数値化だけでなく、人間や自然の、複雑で曖昧な全体を捉えることも大切である。


結論:近代化の恩恵を活かしつつ、その弊害を抑えるため、これまで


   の
価値観を問い直し多様な価値を認めることが必要である。





ここからは、頻出分野の基礎知識を学んでいこう。

小論文入試では、テーマしか与えられない場合もあるし、課題文が与えられている場合でも、課題文の内容をなぞるだけでは点にならない。
問われているテーマに沿って独自の内容を盛り込むためにはやはり、ある程度の知識は必要だ。


常識的に知っていて当然の社会問題であれば、その分野でどのようなことが問題になっていて、これまでどのような議論があったのかを踏まえて、何らかの主張を展開しなければならない。
また、たとえ入試本番で初めて知った問題であっても、どのような面に注目し、何を問題視すべきか、似たような問題や関連のありそうな問題を参考に考えていくことが必要になる。


したがって、これから取り上げる頻出テーマについては、自分の志望分野に直接関係がなくても、論点の見つけ方や掘り下げ方、主張や提言のまとめ方の練習と思って、しっかり頭に入れていこう。


用語集のようなもので用語だけを憶えても、自分で使えるようにはならないので、
・どのような問題が存在しているのか。
・何がどう問題なのか。
・その問題をめぐって、これまでどのような議論がなされてきたか。
・その議論において、どのような意見の対立があり、それぞれの立場が何を重視しているか。
こうしたことを整理しながら、そこに出てきた用語の定義を確認していくようにしよう。


この「まずはこれだけ!」シリーズでは、頻出分野ごとに、最低限押さえておくべき事実や論点と、主張を考える際の基本姿勢をまとめてある。
読んで理解できるというだけでなく、自分の解答の中できちんと使えるように、何度か音読しながら、せめて太字のキーワードは漢字で書けるようにしておこう。