「1975年の食事が理想」ほぼ同意 | 幕内秀夫の食生活日記

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現代よりも高カロリーだった「1975年の食事」それでも日本人がスリムだった理由

 2013年、和食が「自然を尊重した伝統的な食文化」として、ユネスコの無形文化財に登録された。長寿食としても世界から評価されているが、実は、伝統的な日本食は、健康のための食事としてはいまいち。「ちょっと欧米化」した昭和の和食こそが最強だった──。

【イラスト】1975年の朝食。しらすと小ねぎの卵焼きなどがある。出典は『東北大学 日本食プロジェクト研究室の簡単いきいきレシピ』)

 日本人の平均寿命は世界1位だが、長寿大国=健康大国とは言い難いのが現実。厚労省のデータによれば、BMI25以上の肥満者の割合は男性33.0%、女性22.3%で、ここ10年で過去最高値を記録している。血中コレステロールの値も、この10年間で過去最高。糖尿病が強く疑われる人数は約1196万人と、前回調査の7年前から、約250万人も増加している。

 考えられる理由はやはり“食事“。2005年に行われた東北大学大学院農学研究科と医学系研究科の実験によると、1975年に日本で食べられていた一般的な食事が、もっとも健康によく、寿命を延ばすことにもつながるとわかった。

 被験者を2つのグループに分け、それぞれ現代人の一般的な食事と1975年型の食事を、1日3食、28日間食べ続けるようにしたところ、1975年型の食事をしたグループは、BMIや体重、悪玉コレステロール値、ヘモグロビン、A1c(糖尿病の指数)が明らかに減少した。さらに腹囲が細くなり、善玉コレステロール値は上昇。ストレス指数が減り、運動能力の増加まで見られた。

 この実験に関わった元東北大学大学院准教授の都築毅さんは、1975年型の食事には、5つのポイントがあると言う。

「まず、食材が偏らず、いろいろな食材を少しずつ食べる“多様性”。“調理法”は煮る、蒸す、ゆでる、焼く、生の順で優先します。煮ることで食材の細胞膜が壊れて栄養素を摂取しやすくなるだけでなく、かさを減らすこともできます。

 “食材”のポイントは、豆類や豆腐、魚介、海藻、野菜、きのこ、果物を積極的に摂ること。魚と肉は8:3の割合で、卵は1日1~2個に。現代で流行しているダイエットのように、特定の食材ばかり食べたり、避けたりしないことも大切です。

 そして、だしのほか、しょうゆ、みそ、みりん、酢、酒といった“発酵系調味料”を効果的に使うこと。最後に、主食、主菜、副菜2品、汁物を箸でゆっくり食べるという、昔ながらの“形式”を守ることです」(都築さん・以下同)

 1975年型の食事は、摂取カロリーはほかの年代と比べると高い。戦後間もない1946年が1日あたり1903kcalだったのに対し、1975年は2226kcal。なんと、現代の食事よりも高カロリーだ。

 だが、都築さんによれば、当時の日本人は現代人よりもずっとスリムで健康だった。現代人の1日の摂取カロリーは平均約1800kcal。戦後よりもカロリーの低い食事をしているのに、肥満や生活習慣病患者が増えているということは「食事の内容」に理由があることは明白だ。

「1975年当時、一般的な男性(40代、身長170cm)の平均体重は、現代人と比べると6kgも少なかったのです。栄養は複数のものが補い合って初めて恩恵を得られる。カロリーが高くても、1食で摂取する食材の種類が豊富で栄養バランスが取れるため、現代人よりも消化や代謝がよかったと考えられます」

 現在、健康的にダイエットできるとして、たんぱく質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)のバランスを計算して食べる「PFCバランス」の考え方が注目されている。1975年型の食事は、PFCバランスも理想値に近く、カロリーこそ高いが、太りにくい献立でもあるのだ。食文化史研究家の永山久夫さんは、1975年型の食事は精神的にもよい影響を及ぼすと語る。

「当時の日本人が皆ニコニコと活気に満ちていたのは、食事の影響も少なからずあると考えます。大豆製品やかつおぶしには、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの材料になる『トリプトファン』というアミノ酸が豊富に含まれているのです。当時、海外から来た人が“日本人は皆、ニコニコと幸せそうにしている”と驚いていました」(永山さん・以下同)

 東北大学大学院での実験では、1975年型の食事を摂ったマウスは、平均して2割も寿命が延びた。ヒトに当てはめれば、日本人の平均寿命は100才を超えることになる。

「もちろん、当時は肉体労働が多く、生活環境の違いもあります。しかし、1975年の献立は“スーパー和食”。浸透させれば、日本人の健康寿命はもっと延びるでしょう」

※女性セブン2022年6月9日号

▼「伝統的な和食」という言葉の定義は非常に難しいです。石器時代、縄文時代、弥生時代、江戸時代、昭和・・・いつ頃のことか?私たちの先人はその時代におけるベスト、ベターを選択してきたと思っています。ただ、現代人にとってどの時代の食が理想なのか?参考になるのか?『粗食のすすめ―レシピ集』で紹介した献立は、まさに、都築氏が提唱する1975年頃の食事が基本になっています。「ちょっと欧米化した」ではなく、それまでの食事よりも動物性食品を増やした食事になっています。

 それと、高カロリーだったがスリムだったのは、多種類の食品を摂取してきたからではなく、極めて「工業製品」が少なかったからだと考えています。何度か書いていますが、この時代を境に工業製品が急増します。それを「1980年問題」と書いてきました。

 明治以降、日本の食の考え方は、欧米崇拝に突き進みます。特に、欧米の肉や牛乳、乳性品を多食する食生活を理想と考えてきました。そんな中、嗅覚の鋭い人たちの中から、マクロバイオテイック、玄米菜食主義が提唱されてきました。中には、「動物性食品は一切いらない」などと言う主張も登場します。私自身もその影響を受けています。ただし、玄米はともかく、動物性食品の摂取に関しては疑問を持ちます。それをある雑誌に連載しました。絶賛と猛烈な批判に晒されます。「糖質制限食」に疑問を書いて、批判されたのと非常に似ています。その連載が以下です。

 

 都築氏とちがって、現代の畜産事情を考えたとき、とても肉食を勧める気にはなれませんが、

従来の食事よりも、やや動物性食品が増えた「1975年頃」の食事が理想だと言う主張には同意です。