貞彦462話  『和解が決まる』

 

 

8月。
貞彦さん側から和解の
返事はなく、堂々巡り
のような裁判の書面が
四条先生から届いてから
1週間後のパート中、
和解に応じるという
報告が来た。

和解を待っている状態
ではあったけど、いざ
その連絡を受けてみたら
すぐには信じられず、
美味しいものと不味いものを
同時に食べたかのような
はっきりしない気持ちになる。

気がつくとパートの手が
止っていて、気持ちを
切り替えるためにトイレへ
行くとまた電話がなり、
四条先生からだと思って
作業着のポケットから
電話を取り出そうと
したら着信が切れ、その
瞬間


「お嬢ちゃん~どこへ
 いっちゃったのかと
 思ったら、おトイレで
 休憩してちゃだめですよ~。
 休憩は休憩室でしなさ~い」


社長が来ていて、私を探し
ながら電話をしたらすぐそば
の女子トイレから着信音が
聴こえ、私がトイレへ入って

いるという事を知ったよう

だった。


「休憩じゃありません。
 トイレへ行っていただけです」

「そんなこといってぇ~、
 じゃ、ついてきて」

「どこへ行くんですか?」

「買い物だよ~。君たちは
 大事なおててが荒れちゃう
 からゴム手袋とかハンドクリーム
 が欲しいんだろ。

 おじさんが用意したゴム
 手袋じゃ文句ばっかり
 いうから、まったく
 お嬢様たちは」

「でもまだ倉庫の点検と
 階段の清掃が終わっていません」

「そんなことたいして
 大事なことじゃないんだよ。

 いいかい、ビル管理なんていう
 仕事はいかにやっているフリ
 を真面目にするかが大事なんだ。

 階段を掃除しなかったら
 明日だれか気づくのか?
 3日に1度やればいいんだよ。
 
 その他の日は、作業着を
 来て使わない用具を
 持ち歩き、さりげなく
 アピールしながら
 『今日もがんばってま~す』
 と笑顔をふりまく。
 仕事とはそういうものだ」

「わかりました」


私は笑いながら返事をして
車の助手席へ乗る。

社長と話していると
いつも通りに戻れて
ありがたかった。

そして、おしゃべりを
しながら買い物をして
いるとあっというまに
ぷう助をお迎えに行く時間
になってしまい、慌てて
保育園へ行く。

保育園へ着き携帯電話の
時計を確認するといつも
より10分遅く、夕食は何に
しようかと考えながら
ぷう助を連れて自転車の
カゴへ、自分のバッグと
ぷう助の洗濯物が入っている
リュックを入れて、帰宅を
急ぐ。

今夜はこれからのことも
決めようと思ったりしながら
自転車をこぎ、家に着いて
バッグから鍵をだそうと
した時、バッグの内ポケット

へ入れている携帯電話に

白い線が入っているのが

かすかに見える。

不思議に思いながら
取り出してみると、
画面がハンマーで叩き
割られたかのように細かく
バリバリに割れていた。

 

 

☆まだスマホがなく携帯電話が主流の時の

お話です。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

 

【お知らせです】
いつもお読み頂きありがとう
ございます。
あと何回かの裁判で離婚が
決まり、ぷう助が小学生に
なる前で、お話を終了します。

終わった後は、そこから
現在に至るまでに起こった
いくつかの出来事、この
ブログに登場してくれた
人たちの現在、ぷう助の事、
伝えるつもりが抜け落ちた
部分などの投稿をしてから
ブログの更新を終わらせて
頂く予定です。

あと数ヶ月の更新になるかと
思いますが、お時間の許す
時に読んで頂けたら
幸いです。

皆様のおかげで、とても
幸せな時間を過ごさせて
頂きました。
ありがとうございます。

 

 

 

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【お気に入りの紹介です】

ブログでご紹介している

『ねこはるすばん』を描いている

町田尚子さんの絵本です。

 

ずっとネコヅメのよるをご紹介

したかったのですが、楽天で

確認すると、いつ入荷されるか

わからず、ご紹介できる日を

待っていました。

 

道を歩いていると、たまに

今日はよく猫を見かけるな…

という日があるのですが、

この絵本を読んだ時、

道を歩く猫たちのひみつを

知ったような気持ちになり

ました。

ねこたちが大好きな、ある夜の

お話です。

 

最後の最後までお読み

頂きありがとうございます。

悲しくて悔しい今日だった

としても、信じることを

諦めない明日でありますように。