貞彦314話 『自分と向き合う時』

 

 

いつもの習慣でリビングの
天井を見上げてはメロス
がいないことを知り、気が
つけば時間の経過と共に
私とぷう助は、メロスが
いない生活が普通に

なっていて、半袖で

すごしてもいいくらい

暖かい陽気の春を迎えた。

アパートでの冬が寒すぎて
春の暖かは心の力が抜け、

溶けてしまいそうな
ゆったりとした気持ちに
なる。

そんな土曜日の夕方、
兄からメールが来て、
実家で兄の友達も
一緒に夕食を食べるから
来ないか?という誘いで
行くことにした。

兄たちがいると賑やかで
ぷう助も喜ぶし、母も
元気になってくれる。

母は、ゆっくり家事を
しながら調子のいい時は
散歩へ行き、父と2人で
静かに食事をしては休んで
の繰り返しで、身体は
なんとか大丈夫だけど
気持ちが落ち込みがち
だから、兄の友達が来て
くれるのはとてもありが
たい事。

私にとっても子供の頃
からよくうちへ遊びに
来ていたから、何の違和感も

なくもう1人の兄くらいの

気持ちで久しぶりに会える

のがとても嬉しくて、すぐ
ぷう助と実家へ向かった。

そして、大喜びのぷう助を
つれて実家へ着くと、すでに
兄と友達はビールを飲みながら
盛り上がっていて、その
光景を母が笑顔ですぐそばの
ソファーに座ってみている。


「ばぁば~!!」

「ぷうちゃ~ん、あ~可愛いぃ
 可愛いぃ」

「ばぁば元気になった?」

「元気だよ、あ~可愛い」


孫はその存在だけで、母の
寿命をのばしてくれる間違い
ない存在だなと思いながら、
2人がラブラブな恋人同士の
ようにいちゃついている間、
私は久しぶりに会った兄の
友達との再会に盛り上がり、
ビールを口にする。

ぷう助は母と遊びたくて
夕食はまだいらないといい、
母と遊べるようソファーに
おもちゃを並べはじめたから
ご飯は後にして、私は何でも

本音でおしゃべりができる

至福の時間を楽しませて
もらう。


「まぁみちゃんは昔おもしろい
 ことばかりやってたよね」

「みんなと違って元気に
 動ける時間が少ないから、
 動ける時はこれでも
 かってほど勝手なことを
 していたかも」

「いつだったか好きな
 映画監督に会いたい
 とかで、いきなり
 電車を乗り継いで会いに
 いったことあったよね。
 
 たしかその時は会えな
 かったけど、監督と仕事の
 取引きがある人に出会って、
 ポスターもらって帰ってきた
 時はびっくりしたな。
 
 情熱は伝わるものなんだと
 思った」

「変わり者の学生がいきなり来た
 から、きっと同情してしてくれ
 たんだよ。
 
 でも、母親になったら変わる
 もので、もうあんな楽しく
 過ごせる毎日はないな」


そんな話を兄の友達と
していると、やや酔い始めた
兄が静かに本音をいう。


「母親だからとか関係 
 ないね。
 
 まぁみはこっちで
 暮らしてから上っ面
 ばかりの幸せ偽善者に
 なってるんだよ」

「やっぱり私、そう見える?
 実は自分でもずっとそういう
 もやもやしたっていうか、
 なにかがひっかかっていて。
 
 間違いなく貞彦さんと暮らして
 いた時より幸せで、これで
 いいはずなのになんだか
 腑に落ちていないっていうか
 よくわからないの。

 みんなが助けてくれるし、
 パートの環境も恵まれてるし、
 十分幸せなはずなのにね」

「親だからとか、金がない
 とかそりゃー色々あるんだろう
 けど、今まで夫を理由に
 自分の人生を考えてない、
 夫中心の人生をおくって
 きたんだろう。

 それはそれで結婚相手を
 信じるのは普通だから
 大変な思いはしただろうよ。

 でも、離れただろ。
 
 そこからなんだよ。

 理由にしていた夫が
 いなくなったら今度は
 『子供がいるから』
 『親だから』
 って理由をくっつけてさ。

 自分自身を取り戻す
 作業が1番辛いから、
 そうやって犠牲的な
 気持ちで浅い幸せ面
 してるんだよ。

 自分を取り戻せ。
 
 そうじゃなきゃ、子供が
 手を離れたっていつも
 何かの理由を探して
 犠牲的に生きる人生に
 なるぞ」

「…そっか、そんな
 ことまったく考えて
 いなかった」

「俺は昔、散々まぁみの
 影響をうけまくって
 育ってるんだよ。

 好きな映画監督の
 映画をテレビで何度も
 見ているのを一緒に
 見て見ると、本当に
 面白くて自分も好きに
 なってるんだよ。

 そうかと思えば謎の音楽
 ばかり聴いていて、俺もいい
 音楽だなって思ったから
 何の音楽なのか聞いたら、
 ドラマのサウンドトラック
 を作る作曲家さんのCD
 だったりして、どうして
 そんなマニアックな、でも
 いいものばかり見つけて
 くるんだって不思議でさ。

 そんなことばっか。

 その時のまぁみは本当に
 楽しんでいたよ。
 ドアホなこともめちゃくちゃ
 笑ってやってるの。

 自分と向き合えば
 取り戻せるよ、絶対に」

 

 

私はビールがなくなり

レモンサワーの缶を開ける。

 

 

 

☆まだスマホがなく携帯電話が主流の時の

お話です。

現在は離婚して平穏に暮らしています。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

 

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バナーの絵は、漫画家さんが

イメージを作り描いてくださった

私と貞彦さんの後姿です。

 

まだふたり暮らしをしている時の

若く懐かしいシーンです。

漫画家さんと繋いでくださった

株式会社パルソラ様の提供です。

 

 

【お気に入りの紹介です】

 

めしあがれ [ 視覚デザイン研究所 ]

おいしそうなスイーツがいっぱいの

0歳からお勧めの絵本です。

他にもシリーズがあるのですが、

スイーツが1番食べたくなりました。

猫好きな大人にもぜひ読んで

いただきたい1冊です。

留守番中の猫がどんなことをして、

何を思っているのかが可愛いお話

になっています。

 

 

絵本とお菓子の紹介です。

 

最後の最後までお読み頂き

ありがとうございます。

体調の悪い人が少しでも

よくなりますように。