貞彦313話  『メロスとお別れ』

 

 

メロスは手足が長く
スタイルがよかったから、
抜け殻のように動かなくなり
丸まっている姿に、ぷう助は
メロスだと気がつかず、
告げるのを一瞬躊躇したけど
伝えた。


「…あのね、メロスが
 死んじゃったみたいなんだ」

「えっ?これメロスじゃないよ」

「よく見て。長い手足を体に
 くっつけて丸くなっている」

「………メロスいつ元気に
 なる?
 メロスの病院に連れていこう」


数秒、間があいてぷう助の

目から涙がぽたぽた落ちて

いく。

私は余裕のない心でいる
朝で、そんなぷう助を励ます
いい言葉も浮かばず、一緒に

涙を流すだけになってしまい、
膝の上に座ってきた
ぷう助を抱く。


「今日、保育園から
 帰ってきたら公園へ
 埋めてあげよう」

「…うん、そうしたら
 明日また帰ってきて
 くれるよね?」

「ううん、もう帰っては
 こないんだ。
 でも、メロスはぷう助が
 寝ている間にどこかへ
 お出かけしていたから、
 もしかしたらメロスの
 子供たちがいるかも
 しれないよ。

 だからこのメロスは
 死んでしまったけど、
 どこかでずっと生き
 続けているはず」

「でも、でも、だって…」

「うん、お母さんも悲しい。
 涙がでちゃうよね」


少しの間ぷう助と泣いた。
1匹の蜘蛛で、飼育して
いたわけでもないけど
悲しい。

子供が犬や猫と暮らす
事や、生き物を飼育することが
教育にいいとされている
のは、最後に『死』を教えて
くれることによって、
生きる時間には限りが
あるから、命の重さを

学ばせてくれるのだと思って

はいるけど、辛い時間。

ぷう助が少し落ち着いた
ところで、メロスは保育園
から帰ってきたら一緒に
公園へ埋めてあげようという
ことになった。

ぷう助は泣いた目のまま
保育園へ行き、担任の先生に
事情を話して気が乗らない
ぷう助を教室へ連れて行って
もらった後、私はパートへ
行き、誰もいない駐輪場で
四条先生に連絡をする。

メロスのことで気持ちが

いっぱいになっているけど、

調査報告書はどうしても
許せなくて、調査をやり直して
ほしいというつもりで、

報告書と保育園の先生から
聞いている内容が違うと

いうことを先生に強く訴えた。

でも、四条先生からの返答は

 

「たしかに、かなりかたよった
 報告書であることは間違い
 ないです。

 ただ、今回はぷう助君へ
 直接的な調査をまぬがれた
 ので、これで親権が決定
 することはないはずです。
 訴えたところで結果は

 かわりません。

 裁判になった時に
 もう1度調査官調査が
 行われて、その時の
 調査官は別の人になるはず
 なので、このままいきましょう。
 
 腹立たしい気持ちは
 わかりますが…」


四条先生は、ここで報告書の
ことを訴えて長引かせている
と、ぷう助が快復して調査
可能ということになる
だろうし、それなら裁判
で早く新しい調査官になった
ほうがいいというような
説明をしてくれる。

 

親権が決まるものではない

調査官調査ならば、なんの

ためのものだったのだろう

とは思った。

でも先生の言っている通り、

調査官が変わるほうがいい

ということは理解できる。


感情はそう簡単に変化しては

くれないから、もやもやと

した気持ちはまだ残っている

けど、先生の助言に従う

ことにしてパートへ急いだ。

そして、メロスの事や

報告書で暗い気持ちのまま

パートを終わらせた後は、

ぷう助を迎えに行き家へ

帰って、テッシュに包んだ

メロスとスコップを持ち

夕方の公園へ行く。

昨日の夜、いつもだったら
毎晩寝る前に天井を見上げて
メロスを確認していたはずで、
朝だってメロスを見ていた
のに、報告書の事で頭を
いっぱいにしていたから、
そんな時に限っていつもの
メロスを見ていなかった
ことが悔しくなる。

公園へ着き、どこへ埋めようか
見渡すと椿が咲いている
花壇があって、そこへ小さな

穴を掘り、テッシュに包んだ

メロスをそっといれて土を

かぶせた。

ぷう助は私の腕を掴み、
反対の手では涙を拭いている。

『メロス、ありがとう』

2人でそういい、いくつか
落ちていた綺麗な椿を
全部あつめてメロスが眠っている
上へ飾った。

そして、帰りに飾った椿を1つだけ

持ち帰り、小さなコップに
浮かべてテーブルへ置く。

ぷう助は何もいわないで

見つめていた。

 

 

☆昨日は体調が悪くなってしまい

 投稿をお休みさせて頂きました。

 すみません。

 毎年4月は、環境が新しくなり忙しい

 せいか、お決まりのような体調不良に

 なるのですが、今日のお昼には治ったので

 大丈夫です。

 季節の変わり目でもあるので、皆様も

 体調には気をつけてお過ごしください。

 

☆まだスマホがなく携帯電話が主流の時の

お話です。

現在は離婚して平穏に暮らしています。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

 

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バナーの絵は、漫画家さんが

イメージを作り描いてくださった

私と貞彦さんの後姿です。

受け取った時、夢を見ているかの

ような気持ちでした。

漫画家さんと繋いでくださった

株式会社パルソラ様の提供です。

 

【お気に入りの紹介です】

 

おいしそうなスイーツがいっぱいの

0歳からお勧めの絵本です。

他にもシリーズがあるのですが、

スイーツが1番食べたくなりました。

猫好きな大人にもぜひ読んで

いただきたい1冊です。

留守番中の猫がどんなことをして、

何を思っているのかが可愛いお話

になっています。

 

 

最後の最後までお読み頂き

ありがとうございます。

 

素敵な明日になりますように。