貞彦272話『社長が自宅に来る』

 

 

運動会が無事に終わり、
しばらくの間は行事も
なく、あとはぷう助が
体調を崩さずに、私も
寝込まないでやって
いければと願うばかり。

何回か鎮痛剤で頭痛を
ごまかしながらパート
へ行った後、一晩中
吐き気に苦しんだ日
はあったけど、パートへ
行けなかったら1日分の
お給料が減ってしまう
というプレッシャー
のほうが重い。

そんな体調の悪い日にかぎって
社長から電話が来て
しまった時があった。

ぷう助におにぎりと
ゆで玉子にカップ
スープで夕食をすませ
てもらい、私はぷう助が
テレビを見ている後ろで
毛布をかけて休んで
いると、電話が鳴って

「こんばんわー、今
 おうちの前にいる
 んだけど
 いーれーてー」

冗談かと思ったけど
そうではないようで、
猫背でとぼとぼ歩き
ドアをそっと開けて
みると、社長が本当に
立っている。

笑う元気なんてない
はずなのに、笑って
しまいその反動で
嘔吐しそうだった。

職場のリーダーからは
事前に、社長はいきなり
こういうことをする
という話は聞いていて、
迷惑だけど悪気は
無くてすぐ帰えるから
大丈夫だよ、とは

きいていたけど…


「ど~したんだね~。
 具合いの悪そうな

 お顔しちゃって。
 
 しっかし君は廃墟に
 すんでのかね、
 こんな建物ひと蹴り
 したら崩れちゃうじゃ
 ないか」

「頭痛持ちで、よくある
 ことなので大丈夫です」

「まったくー
 ほらっ、おじさんを
 中にいれて!」

「えっ!?」


と言っている間に、
亀裂の入っている
コンクリートの玄関に
靴を脱いで勝手に
室内へ入っていく。


「ありゃりゃりゃりゃ
 床と壁の間に隙間が
 こんなにあったら
 隙間風ぴゅーぴゅー
 じゃないか。

 なんだこれはー
 ベランダの窓と
 家が歪んでるせいで
 ギーギーいって窓が
 スムーズにあかなじゃ
 ないかー。

 お風呂場の窓まで
 割れて、君どうやって
 お風呂入ってるの?
 セクシーショットを
 通行人に見せて
 るのかい!?」

「お風呂場の前には
 コンクリートの塀が
 あるので道路からは
 見えません」

「まったくこんな
 みすぼらしい露天
 ぶろあるかっ!」


社長が小走りで家の
中を移動するスピード
に追いつけず、リビング
にとどまり返答をして
いると、そのスピード
のまま玄関からでて
いってしまい、再び
外に止めてある車から
たくさんの工具を
もってきたと思ったら
アパートの修理を
始めた。

隙間には透明のボンド
のような固まる液体を
ぬり塞いでくれて、
力技で開け閉めして
いた窓にはスプレーを
吹付け、緩んでいた
ネジを締め直してくれる。

お風呂場の窓ガラスにも、

透明で下敷きのような

ものを張り付けたら

あっという間に

「まったくー、おじさん
 帰るからね!
 お嬢ちゃんはゆっくり
 寝なさい!」

といい、私にお礼を
言う隙も与えず
帰っていった。

社長の突撃訪問は
たまにしかないらしい
けど、こんな社長が
いるんだと驚くばかり。

でも、このアパートは
大家さんと入居時の
約束で、修理はしない
という事になっている
から、直してもらえて
本当にありがたかった。

ベランダの窓を動かして
みると軽々と動くし、
これでお風呂もぷう助

と寒さに震えないですむ。

頭がズキズキしながら
ゆっくり室内を歩き
直してもらった
ところを見ていると、
ドアを激しくノック
され、また社長が来た。

「ほらっ、ぼくちゃん
 にやんなさい!
 ろくなもの食べて
 ないんだろ。
 かわいそうじゃないか。
 
 エアコンは来週
 着けてあげるから
 それまで待って
 なさい」

そういい、玄関に袋を
ドサッと置いたら
勢いよくドアを
閉めていった。

コンビニの1番大きい
ビニール袋には、
菓子パンとプリンに
ケーキや社長が好きな
ジュースやサンドイッチ
も入っている。

社長は予測できない
嵐のように来ては
自分節で、すぐまた
別の現場へ去って行く。

パート先の社長が
いきなり自宅に
来たと思ったら
ドスドスあがり
こんでくるなんて、
信じられない会社
だと思う。

でもそんな会社
だから、訳アリの
私をその場で採用
してくれたわけで、
突撃訪問は本当に
やめてほしいけど、
他の会社ではあまり
無い、社長流の情を
感じるありがたい
ものだった。


そして体調が治り
次第、次の調停に
向けて、打ち合わせ
の準備をする。
 

 

 

☆まだスマホがなく携帯電話が

主流の時のお話です。

現在は離婚して平穏に暮らしています。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

 

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『はらぺこあおむし』
の作者エリックカール氏
の絵本です。

はらぺこあおむしは、
だれもが知っている
とても有名な絵本ですが、
それ以外にも素敵な
絵本がたくさん出版
されています。

『おほしさまかいて』は、
小さな子でも、わかり
やすい鮮やかな絵が多く
太陽、猫、鳥、お花、
そして大きなお星さまが

でてきます。

大人の目線で読む
内容は、絵描きの
人生が描かれています。

絵描きが色々な絵を

書いていく人生は、

太陽が昇る世界で
始まり、人間は物を作り
植物や動物と共存しながら、
自然のなかで生きて
いきます。

命の時間は刻々と進んで
いき、最後は太陽が沈んだ
夜空へ、永遠の旅にでる
お話です。

この絵本の素晴らしい
所は、大人が読むと
内容の意味は深く
心に残るものですが、
子供の目線になると、
とてもシンプルに
優しく進んでいく
お話で、他の絵本と
なにも変わりなく
楽しめる1冊になる
ところです。

年齢が上がっても
長く楽しめる絵本なので、

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絵本とお菓子の紹介です。

 

明日も大きな災害が

起こりませんように。