貞彦271話  『お父さんがほしい』

 

 

ぷう助は入園して
から大きなトラブル
もなく、お友達とも
仲良くやっている
ようだった。

途中入園という

タイミングで、たまたま

夏祭りや親子遠足などの
行事が続き、次は
運動会でそろそろ
疲れがでるかもしれ
ないな…なんて

思っていた頃、
夜、電気を消して
これから寝るという
時にぷう助が


「ぼく、運動会には
 でないからね」


といい、聞き間違えた
のかと思った。

毎日お迎えに行くと、
先生から運動会の
練習を楽しんでいる
という話はきいているし、
ぷう助もリレーの
練習で1番になったと
いう話を教えてくれた
のに、突然の発言で
体は疲れているのに
目が冴える。


「運動会嫌い?」

「嫌いじゃないよ。
 だから練習はする。
 でも運動会の日は
 休む」

「なんで?」

「だってぼくには
 お父さんがいないから」


とっさに返せる言葉が
でてこなかった。

家をでてから数ヶ月、
お父さんが恋しく
なったのだろうか…と
一瞬思ったけど、
ぷう助と貞彦さんの
間に、恋しくなる
ような思い出はない
はず。

それでも、みんな
にはお父さんが
いるのだから、
そう思ったのか
もしれないけど
困った。

もし、どうしても
貞彦さんに来て
欲しいなら、でき
なくもないけど、
色々な危険をおかす
事になるから、四条
先生に相談しながら
進めていくしかない。

貞彦さんは、よい父親
を演じているのだから
喜んで来るだろう。

だけど、今までの
貞彦さんとぷう助を
どれだけ思い返しても、
ぷう助が貞彦さんに
会いたいと希望して
いるようには、やっぱり

思えなかった。

でも、私の知らない
ぷう助の気持ちだって
あるのだし、いちおう
聞いてみる。


「お父さんに連絡する
 ことはできるけど……」

「あのお父さんじゃなくて
 ぼくは、みんなみたいな
 お父さんがほしいのっ!!!」


そういい、ぷう助は
布団にもぐり込み
大声をあげて泣き出す。

そして布団の中から、
篭った嗚咽に混じる
ぷう助の訴えが次々に
途切れなくでてくる。

感情が噴出し思う
ままに放つぷう助の
訴えは、

 

『お父さんという
 存在は誰のお父さん
 でも意地悪なものだと
 思っていた。

 自分はお父さんから
 解放されたけど、
 みんなは、あんな
 お父さんと一緒に
 暮らさなくちゃ
 いけなくて大変だな
 と思っていた。

 でも、親子遠足で
 友達のお父さんが
 アスレチックで遊んで
 くれた時に、お父さん
 って本当は優しくて
 かっこいいんだって
 いうのがわかって
 ショックだった。

 みんなにはその
 お父さんがいて、
 自分にはいないなんて
 悲しくてみじめな
 気持ちでいっぱい。

 だから友達のお父
 さんが来る運動会は
 でない。

 でも運動会の練習は
 好きだから毎日
 楽しみ』


親子遠足の時、
お父さんが参加
している子が何人
かいて、フリータイム

の時にお父さんたち

が率先して子供たちの

面倒をみてくれた

おかげで、母親同士の

おしゃべりを楽しむ

時間があった。

ぷう助は、その時に
楽しく遊んでもらえて
とても喜んでいた
けど、あれから
こんなことを考えて
いたなんて、何て
いったらいいのか
言葉に迷い、


「運動会はでなくて
 いいよ。
 でも頑張っている
 ぷう助をみたいから
 練習の時に見に行って
 いい?」

「…いいよ、リレー1番に
 なるよ」

「じゃあ、先生に伝えて
 おくね。気が変わったら
 また教えて」

「…うん。
 かわらない」


ぷう助の気持ちを

受け入れることにした。

 

これから先、どれだけ
頑張っても、うちに
優しいお父さんが来る
ことはないのだから、
少し強めに言い聞かせて
参加させることも
出来たと思う。

でも、ぷう助だって
言葉をだせなくなって
しまった時があるくらい、
たくさんのことを感じ

ながら生活を送って
いるのだから、無理を

させないことにした。

ぷう助は優しいお父
さんが欲しかったと
訴えたけど、普通の
お父さんがあたり前
にいてくれたら、
それで十分だった
のだろうし、ぷう助の
悲しみに自責の念を
感じる夜だった。


その数日後、
いきなり兄から、
ぷう助の運動会に
兄の若い後輩たちが
父親役として参加
してくれるという
メールがくる。

驚いたままぷう助に
聞いてみると、
飛び跳ねて喜び、
お願いすること
になった。

私は少し前に母との
電話で、軽く運動会の
話をしていて、母が
それを兄へ伝えたの
だという。

ぷう助はその日から
いつも以上に練習を
はりきり、運動会を
迎えた当日、私の
両親と兄に加えて、
5人の後輩が見にきて
くれたことで大盛り
上がりになり、運動会
が終わった後は、
実家でバーベキューを
して最高の思い出
となった。

 

感謝だらけの出来事

だった。

 

☆まだスマホがなく携帯電話が

主流の時のお話です。

現在は離婚して平穏に暮らしています。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

 

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『はらぺこあおむし』
の作者エリックカール氏
の絵本です。

はらぺこあおむしは、
だれもが知っている
とても有名な絵本ですが、
それ以外にも素敵な
絵本がたくさん出版
されています。

『おほしさまかいて』は、
小さな子でも、わかり
やすい鮮やかな絵が多く
太陽、猫、鳥、お花、
そして大きなお星さまが

でてきます。

大人の目線で読む
内容は、絵描きの
人生が描かれています。

絵描きが色々な絵を

書いていく人生は、

太陽が昇る世界で
始まり、人間は物を作り
植物や動物と共存しながら、
自然のなかで生きて
いきます。

命の時間は刻々と進んで
いき、最後は太陽が沈んだ
夜空へ、永遠の旅にでる
お話です。

この絵本の素晴らしい
所は、大人が読むと
内容の意味は深く
心に残るものですが、
子供の目線になると、
とてもシンプルに
優しく進んでいく
お話で、他の絵本と
なにも変わりなく
楽しめる1冊になる
ところです。

年齢が上がっても
長く楽しめる絵本なので、

購入する絵本としても

おすすめです。

最後の最後までお読み

頂きありがとうございます。

 

今日も1日、大きな災害も

なく無事にすごせますように。