- ちゃんちゃら (講談社文庫)/朝井 まかて
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親も知れない孤児のちゃらは、
子供時分に庭師の親分さんに引き取られ、
今では一端の植木職人となっていた。
周囲にいる人達も、親分の娘百合や、気の良い職人揃い。
ところが、京都からやってきた庭師・白楊は、
どうも庭の造形だけでなく、怪しげな占いまで初めて居る様子。
そして親分に対し、恨みを抱いている模様。
白楊はちゃらを勧誘し、
自分の傘下に入らねば、大事なものが次々と奪われてゆくだろうと告げるのだった。
その言葉通り、
ちゃらの大事なものが尽く悲惨な目にあっていく。
だが、白楊に心酔した者達もまた、
店を乗っ取られたり気が触れたりしているのだ。
白楊とは何者なのか。
ちゃらは、どう対抗していくのか!
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一気読み。
才気あふれる若き職人ちゃらと、
江戸っ子女のきっぷの良さを身につけた働き者の百合。
そして薬問屋の一人娘、悲惨な運命に流されながらもそれに抗おうとする留都。
憧れのお嬢さんと、幼なじみのちゃらをめぐる三角関係(っぽいもの)。
そんな、ほのかな色恋も面白いのですが。
ちゃらに庭を任せた老夫婦の、
「生きてるって、ええもんや。
でも死ぬこともまた、ええもんや。
みな死ぬために生きてる。
この世に居るのもあと少しやと思うたら、どんな辛いことも懐かしいものになる」
このセリフに、
魂の奥底から感銘を受けました。
そしてもう一つ、
病で倒れたり住む家のない貧しい人に奉仕している妙青尼さまがすごい。
いつまでも情けにすがり仕事もしない人たちに対して憤りを覚える百合たちに、
「考えとしてはもっともなことだが」と前置きし、
「この世は強いものばかりではない、
何の希望も持てず、捨て鉢になってしまう人も多い、
その人達をどう導くかが、今後の問題だが難しい」
と吐露する姿は、
今この現代の格差社会にも繋がる深淵を垣間見せていただいた気がします。
朝井まかてさんは、50代半ば。
この歳でこの人生観、
何とまぁ想像力に長けた方であろうかと。
同じ年令で上っ面のことしか書けない作家や、
女にモテモテなんじゃよーな内容しか書けない作家に比べて、
「言葉の重みと責任」を
判ってらっしゃる方かとお見受けしました。
朝井まかて、面白いです。
キャラ小説の畠中恵さんより、
骨太のこちらが好み。
アクション、ミステリ要素、
不条理な運命に翻弄される人たち、
そして百合とちゃらの恋の行方。
庭師のことを江戸では、空仕事と呼んだのです。
空に近い場所で働くから、空仕事。
風情のある言い回しではないですか。
胸の奥がジーンとしてくる、
そんな作品…。
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