What a wonderful world and life -6ページ目

What a wonderful world and life

イギリスでの生活や、大学院の授業、そしてphysiotherapyについて

だいぶと前回から空いてしまいました。
今回は
Stepping before standing: hip muscle function in stepping and standing balance after stroke
立位の前にステップ:脳卒中後のステップと立位での股関節筋の役割
17名の片麻痺患者群と、16名の健常群を比較した研究です。
測定には表面筋電図(SEMG)を使用し両側中臀筋、長内転筋を測定。
片麻痺患者ではMVC(maximum voluntary contraction)実施が難しいので、歩行の開始を標準としている。されに、床反力(外転トルク)、骨盤の偏位を測定
測定は Sideways push trials(横に押される) とSTEPPING時に行われた。

(結果)

Sideways push trials時: 
右側へ押された場合、健常群ではまず、右中臀筋が活動し、次に左長内転筋が活動。
片麻痺患者が麻痺側へ押された場合、麻痺側中臀筋(活動開始は健常群よりも遅い)の活動は小さいが、非麻痺側内転筋の活動が優位に大きい。非麻痺側へと押された場合には、非麻痺側中臀筋の活動は少し小さく、また潜時が長い。麻痺側内転筋の活動は小さく潜時が長い、もしくは反応が見られない。

Step時:健常群:まずスイング側の中臀筋が活動し、対側の長内転筋が活動する。下肢の挙上と共に支持側の中臀筋、対側の長内転筋が活動する。踵接地時には中臀筋、長内転筋が活動。自分で重心移動を起こした際の筋活動は押された場合の筋活動と類似している。
右片麻痺患者の場合、右下肢をステップする際、または右に押された際にまず活動するはずの右中臀筋の働きが非常に小さい。
左下肢をステップする際、または左に押された場合の非麻痺側(支持側)の内転筋の活動が健常軍に比べると小さい。しかし、傾向としてはステップ時の方が、健常群での筋活動と類似している。

考察:押された場合には非麻痺側の内転筋の活動がコントロール群に比べると大きく、またできるだけ早く活動している。これは麻痺側の弱い、または遅れた筋活動を代償しているためと考えられる。
ステップ時にはより、正常に近い活動が見られるので、押された場合とステップ時には違うメカニズムが関与していると考えられる。

(感想)
まず、EMGのnormalizationの手順がこれでOKなのかがまだ知識不足の私には不明です。この手順で標準化出来ているのであれば、データとしては使えるのかもしれません。MVCは片麻痺患者では困難ですので、参考になるかもしれません。とりあえず、私はEMGのnormalizationについて調べないといけません。

押される課題の場合には、外乱刺激に対して、より皮質で下肢の支持をコントロールしているのかもしれないと考えました。
ステップの課題の場合には、より自発的に麻痺側への重心移動も行われているので、駆動させる経路は異なるのかもしれません。
また、考察されていませんでしたが、麻痺側をステップするとき、またはそちらの方向に押される時に本来起こるはずの中臀筋の活動が出ていません。

では、治療的にはどうなのか?
下肢の支持性を向上させるために、単純に麻痺側への重心移動を行うよりも、ステップ課題の中で中臀筋、内転筋etcの活動を促す方がよいのか?

外乱刺激に対して、予測的に麻痺側下肢の支持を意識すること自体が構えを作り、時には恐怖感を生み出してしまい、通常の活動と異なる反応を生み出しているのであれば、立位でのバランス練習でも、より小さい刺激の範囲内、または自発的な重心移動(恐怖感が出ない範囲など)であればどうなのかとも考えました。以前紹介した論文でも、恐怖感が生じる場合にはヒラメ筋の活動が変化するなど、情動の部分からの影響も出る可能性があります。

また麻痺側下肢のスイングの際にも、支持側への重心移動に関連する麻痺側中臀筋の活動は低下していますので、誘導する際には考慮すべき点かもしれません

なんにせよ、タイトルにある立位の前にステップというのはこの結果からだけではちょっと不十分ではないかと個人的には感じます。


これを読んだあと、個人的にはタスクのなかでの下肢の筋活動が気になりました。下肢に対して注意を向けず、課題に対するプログラミングが起これば、起こる筋活動も異なるのではないのかなと。そういう論文があるかどうか探してみます。
(今回の文献)
Luft, A.R. et al., 2005. Brain activation of lower extremity movement in chronically impaired stroke survivors. , 26, pp.184-194.

fMRIを使用し膝関節屈伸運動時の皮質の活動を測定している。また、同時に下肢の屈伸運動の実施時に生じた不随意的な非麻痺側下肢の共同収縮に関してはEMGを使用して(内側、外側広筋)測定されている。
31名の患者が参加。患者は、損傷部位により分類されており、皮質(9)、皮質下(12)、脳幹(10)の3群に分けられている。また、10名の健常群も測定されている。

(下肢の運動に関しては前回書いたものとほぼ同じです。今回の論文の方が古いですが、DTTで測定されていませんが、参加人数が多いですので、こちらのデータの方が妥当性は高いと思われます。)

結果:麻痺側下肢の運動では、皮質下、脳幹損傷群において、precentral region of interest (ROI) が主に活動。健常群も主に、対側が活動した。ただし、皮質群では優位な半球がなく、bilateral precentral gyrus activation.が見られた。

脳幹群ではIpsilateral (contralesional) superior frontal gyrus activationが損傷の大きさと正の相関を示した。

皮質下群では、非麻痺側の運動の際に、the inferior frontal gyrus の活動と損傷部位の大きさに正の相関が見られた。
(要は損傷部位が大きければ、代償的する部位の活動が多くなるということ。)

皮質下脳卒中では、対側M1下肢の表象が強く動員し、それより少ない程度で同側が活動していた。また同時に、両側のSMA、二次運動野、対側視床、同側小脳が活動。
皮質群ではM1の活動が見られない。同側視床、BA 40, cingulate gyrusが活動。

この論文ではさらに歩行能力との関係もみられており、
脳幹群では歩行レベルが高いほど、対側M1の活動が少ない。
皮質下群では同側M1、S1の活動が強いほど歩行能力が高い。

不随意的なmirror movementは脳幹、皮質下群では約50%程度見られたが、皮質群では一切見られなかった。

また、非麻痺側の運動にも影響が出ていることにも触れられており、それは脳卒中後の麻痺側の運動のための脳内のネットワークの改変が影響を与えているのではないかと推測していました。

今回の研究の制限としては、下肢の運動時に、体幹を安定させるために対側の下肢を使用するのを制御しきれていなかったとのこと。同時に活動しているので、両側の半球が活動した可能性もあるわけですね。実際の運動でそこまで厳密に下肢の筋だけを使用するということもあまりないので、条件の設定をどうするのがベストかはわかりませんが、標準化するためにも、体幹部を固定するなどの手順が必要だったかもしれません。サンプルサイズも31名参加していますが、各群に分けると10名程度ずつなので、少なめと思われます。

(まとめ+感想)
脳卒中障害部位によって、回復過程で代償される部位が異なる。非麻痺側の運動も脳内のネットワークの変化により影響を受けている。片側の損傷であっても両側に影響が出るので麻痺側、非麻痺側と単純にわけれないというのがよくわかります。

当然今回の分類に加えて、更に重症度が低い/高い患者の場合には違う傾向が見られると思われます。
ではその違いからどう治療するか?と言われると私にはまだ確たるものはなく、わかりません。感覚入力の量や、より皮質を使わせたほうがよいか、それとも自律的な反応のほうがよいかなど個々の患者さんを評価して試してはいましたが。

運動学習についての研究も増えてきているので、障害部位により、どの学習過程を使うと効率がいいのかを意識していくかも当たりをつけながら治療できるといいのかなと感じます。
これまで読んだ文献に対する個人的な印象では、重症なほど、本来とは違う経路を使っているケースがが多い。つまり、学習するにしても、損傷していない部位を主に使用する学習方法をとるほうが効率的に運動学習につながるのかもしれません。


Cortical reorganization associated lower extremity motor recovery as evidenced by functional MRI and diffusion tensor tractography in a stroke patient
下肢の運動回復に関連した皮質再組織化

今回の論文は、下肢の運動回復にも、上肢の回復と同じようなメカニズムが使われているかどうかをfMRIとDTTで検証しています。
この研究では6人のコントロール群と、17才の患者のみが対象ですので、reorganizationの余地も大きいのではないかと考えられます。もしかしたら、年配の方では異なった傾向が見られるかもしれません。

障害部位

demonstrated a rupture of an arteriovenous malformation which resulted in left intracerebral hemorrhage.

運動能力は発症から10箇月の時点で独歩自立ですが、上肢の回復は見られていない。

膝関節屈曲・伸展運動をメトロノームにあわせて行なっている間に測定

fMRIの結果では、患者では障害側の半球は活動せず、非障害側の感覚運動野が活動し、コントロール群では対側が活動。DTTの結果では、患者の場合には障害側の皮質脊髄路では活動がみられず、非障害側の経路だけが使われていた。この現象はless/ more affected side,両側ともに生じていたそうです。

(感想)実際の画像が添付されていますが、広範囲に障害されています。ですので、以前に紹介したように、広範囲に傷害されている分、反対側の半球で代償しているのかもしれません。もし、小さければ、今回とは違った結果になっているかもしれないので、今後の研究が待たれます。

今回の研究では、患者の場合では下肢の運動時にまったく障害側の皮質脊髄路が活動していなかったにもかかわらず、膝関節の屈伸運動が可能でしたし、歩行も自立レベルであったとのことです。(装具の有無も不明)

歩行に関して言えば、皮質下でのコントロールの影響も大きいとも思いますし、今回の症例では随意的な運動でも非障害側の皮質脊髄路のみが使われていました。

回復は基本的に膝関節、股関節に限定されていたとの記述がありましたが、運動機能の評価スケールすらなかったので厳密には不明です。研究された方が理学療法士だっただけに、そういった評価も付けておいていただけたほうがより実際に参考にしやすかったような気がします。

①としたのは、似たような論文をもう一本持っているので、次回はそれを読んでみます。