Long term potentiation (LTP)) はシナプス間の伝達に関して重要なメカニズムです。
簡潔に述べると、LTPはシナプス間の伝達の向上が長期間持続している状態です。
学習や記憶においてその重要性がこれまで多く研究されています。
LTPにはよく説明されている3つ特性があります。
state-dependent:LTPにとって重要な、シナプス後膜にあるNMDAレセプターを開くために、強く分極する必要がある。また、シナプス前、シナプス後ろで興奮のタイミングがほぼ同時でないと起こらない。
input-specificity:一つの細胞で起こったLTPは、他の活動していない細胞には関与しない。
Associativity:LTPを起こすのに不十分な活動している細胞が、強く活性化している細胞とペアになる(同じ細胞に接続している)場合、弱く活性化している経路もLTPが生じる。
States dependentの観点から考えると、治療的には、まずシナプスが高頻度で集中的に活動する必要があると言われています。これは、CIやmassed practiceのメカニズムのひとつとも考えられます。また、これらを考慮した上でInterventional Paired-Associative Stimulation (IPAS)という抹消からの電気刺激と、TMSを組み合わせた治療法も開発されています。
Input specificityから考えると、治療時間中に変化が見られなければ、学習は(あまり)起こっていないであろうことが考えられます。また学習を進めるためには、チャレンジすることが必要だと述べられることが多くあります。チャレンジすることは日常的にあまり使用していないネットワークを使用することでもあります。課題志向トレーニングも、本人のできるギリギリの範囲で行うことがよいとされているのもうなずけます。
Associativityの原理を考慮すると、元々持っている強い経路、つまりこれまでに長年の経験があるものや、こだわりのあるものでタスクを行うと、これから活動させていきたい活性化が弱い部分がより効率的に学習が進められるかもしれません(よく言われていることですが)。また、いきなり難易度が高すぎる課題をおこなうよりも、今、できる運動パターン(強く活性化している部分)から、徐々に活動の幅を(まだ活動が弱く、これから学習してきたい方向へ)広げていくほうが学習しやすいのかもしれません。
さらに、LTPには大まかには初期と後期の2つのフェーズに分けられます。複雑な過程なので、書き始めると終わらないので、ざっくりしか説明しませんが、
初期ではまず、LTPが起こるとシナプス間の伝達効率が向上します。これは不活性状態のAMPAレセプターの活動し始めることなどが関与しています。1、2時間程度しか持続しません。
後期には遺伝子発現が変化し、新しくタンパク質が生成され構造自体に変化が起こります。最低でも24時間は持続されるという記載も見受けられます。
このことから、治療中に改善が見られたとしても、それは1、2時間しか継続しないことが推測され、日常生活のマネジメントが治療効果を継続させる上で重要であることがうかがえます。そうすることで、長期にわたって学習効果が向上支持できると考えられます。また、タンパク質の生成が関与することから栄養面も考慮することが重要かもしれません。
後半は少しこじつけのような部分もありますが、シナプス伝達のメカニズムを知ることでも、治療やマネジメントに発展させていくことができると感じていることを表現してみたかったからです。
LTPは当然患者さんにとってよい作用だけでなく、悪循環に陥る可能性もはらんでいます(疼痛、spasticityなど)
LTP自身の知識だけでは当然エビデンスとしては不十分です。
ただ、認知、知覚、コミュニケーションなど少し大きな枠も大事ですが、ミクロな知識も基盤として理解しておくと、より理解が深まるのではないかと考えています。
massed practice
簡単に言うと、まとめて多くの時間を治療に費やすということです。
CI療法にもこの要素は含まれています。
Adomaitis, L. et al., 2005. An intensive massed practice approach to retraining balance post-stroke. Gait & Posture, 22, pp.154-163.
こちらの研究では2週間で毎日6時間治療を提供。
治療内容としては、
移動等の機能的な運動や、直立での動的、静的なタスクを行なってます。
その際にも口頭、聴覚、皮膚感覚などの情報を与えられながら、できるだけ対称的な運動を促しています。
タスクは本人が達成できるギリギリの
その理由としては、
代償を極力減らしたうえで麻痺側の四肢の機能的な改善を目指すには、
1)補助具、装具の使用を制限する。
2)対称的な運動を行う
とガイドラインですすめられているようです。(論文に記載がありますが、原著は未確認)
今回の研究はベースラインが患者で統一されておらず、対象も10名と少ないのですが、
全体として、優位にバランス能力の向上が認めら、転倒回数も減少しています。
気になったのは、まったく改善していない項目が人によってあったので、もう少し細かく吟味する必要があると思います。
(感想)
6時間つきっきりで治療を提供することは日本では不可能です。
ですので、この論文の結果を活かすのであれば、自主練習を含めた日常的なマネジメントが必要になります。
タスクもより本人にとって意味があるもの、また本人が達成できるギリギリのレベルのものを設定するほうが良いのですが、一人で実行できるように転倒予防など、様々な工夫が必要だと思われます。
簡単に言うと、まとめて多くの時間を治療に費やすということです。
CI療法にもこの要素は含まれています。
Adomaitis, L. et al., 2005. An intensive massed practice approach to retraining balance post-stroke. Gait & Posture, 22, pp.154-163.
こちらの研究では2週間で毎日6時間治療を提供。
治療内容としては、
移動等の機能的な運動や、直立での動的、静的なタスクを行なってます。
その際にも口頭、聴覚、皮膚感覚などの情報を与えられながら、できるだけ対称的な運動を促しています。
タスクは本人が達成できるギリギリの
その理由としては、
代償を極力減らしたうえで麻痺側の四肢の機能的な改善を目指すには、
1)補助具、装具の使用を制限する。
2)対称的な運動を行う
とガイドラインですすめられているようです。(論文に記載がありますが、原著は未確認)
今回の研究はベースラインが患者で統一されておらず、対象も10名と少ないのですが、
全体として、優位にバランス能力の向上が認めら、転倒回数も減少しています。
気になったのは、まったく改善していない項目が人によってあったので、もう少し細かく吟味する必要があると思います。
(感想)
6時間つきっきりで治療を提供することは日本では不可能です。
ですので、この論文の結果を活かすのであれば、自主練習を含めた日常的なマネジメントが必要になります。
タスクもより本人にとって意味があるもの、また本人が達成できるギリギリのレベルのものを設定するほうが良いのですが、一人で実行できるように転倒予防など、様々な工夫が必要だと思われます。
脳卒中後のセラピーで、運動学習の考えが必要なのは言うまでもありませんが、脳に損傷をもたない人と同じような考え、原理で行なってよいのかどうかを考える必要があります。
Boyd, L.A. & Winstein, C.J., 2004. Providing Explicit Information Disrupts Implicit Motor Learning After Basal Ganglia Stroke. Learning & Memory, pp.388-396.
こちらの論文では、脳卒中患者(基底核、感覚運動野)と健常群でexplicit/implivcit learningを行なった際の違いを研究しています。ただし課題は、非麻痺側の上肢で行われています。
この研究の結果では、explicit knowledgeを用いることで健常群では学習が促進されたのですが、基底核群、感覚運動野群ともに学習が阻害されるという結果になっています。
筆者らはこの原因が、explicit informationがワーキングメモリーに処理できないほどの負荷がかかっているためだと推測しています。大脳基底核はワーキングメモリーの処理にも関与しており、脳に損傷がある患者には対応しきれないのではないかと考えられています。
運動の細かな説明よりも、Prescriptive information(ルールなどに関連した情報)の方が有用ではないかと示唆されています。
この研究では非麻痺側上肢でタスクを行なって時のデータであり、筆者らは、implicit motor-sequence learningには両側の半球の機能が必要であり、治療的介入は両側に対して行われなければならないと述べています。
(感想)患者に説明する際には、あまり細かく運動を指定するよりも、タスクやゴールなど大まかな枠の説明のみのほうが有効かもしれないようです。
実際の患者さんでも、非麻痺側の上肢での、新規のタスク、運動が学習しにくい印象を受ける方がおられます。
日本語だと、書きやすいので麻痺側、非麻痺側と書いていますが、最近の論文ではaffected/less affectedといった書き方が増えてきています、日本語だとどう訳するのかは知りませんが(-_-;)
またワーキングメモリーの処理が困難になっているのであれば、同時にいくつもの情報を入れる(過剰に)ことも避けたほうがいいのかもしれません。治療を行う際の環境設定(視覚、聴覚情報など)でその負荷を軽減した上でタスクをおこなうことも学習を行う上で有効なのかもしれません。