僕の大好きな劇団、ヨーロッパ企画の第36回公演『出てこようとしてるトロンプルイユ』
前回の作品『来てけつかるべき新世界』は〝岸田國士戯曲賞受賞作〟ということもあって(前回のレビューはこちら)確かにこれまでの作品と比べて 未来を警鐘してるような、でもその危惧を楽しんでるような、、ヨーロッパ企画にしては珍しく(笑)考えさせられる内容でした(^ ^)
受賞後の作品ということもあって、書き手としては少なからず今作へのプレッシャーや緊張感もあったかとは思いますが、今作を観る限りでは変に気負ったり気取ったりもなく、いつも通り【わちゃわちゃ学生のノリ、強引で力技な展開(笑)、舞台装置や小道具が面白い】ヨーロッパの魅力を十分に堪能できる楽しい作品でしたo(^▽^)o
題名にもなっているトロンプルイユとはだまし絵のこと。1930年頃のパリを舞台に、画家の卵達が あるアパートの一室の片付けを命じられます。そこは〝生前だまし絵ばかりを描いていて世に名の売れなかった初老画家〟の部屋で、遺品を整理していると出るわ出るわだまし絵の数々。。本物そっくりに描かれた作品達。中にはまるで今にも絵から飛び出して来そうな人物画や想像画もあって。。。というのが大まかな話。
前半はだまし絵を巡ってたくさんの登場人物達が絵画論争したり、絵に騙し騙されわちゃわちゃ戯れてます(笑)
難しい言葉使いたがる実のない論争とか(笑)すぐふざけあっちゃう調子乗り度とか(笑) ここら辺いつものヨーロッパ企画な感じで好きですねー(^ ^)
これといった事件が起こらなくとも見ていられるのは この学生のノリとも言えるゆるさにハマっているからかなぁ(笑)
ところが中盤、実は芝居が始まった時から誰もがずっと気になっていた『部屋の中央にドーンと置いてある大きいもの』。それは大きな布に覆われていて、これをみんなで面白半分にめくったあたりから事態は一転。SF的展開をしていきます(笑)。。。
あの 同じことが繰り返される構成、、、僕的には大好きな展開で(≧∇≦)最初の方こそゲラゲラ大笑いしてハマっていたのですが、、、そんな僕でもさすがに冗長的に感じてきて もう少しコンパクトにできたのでは、、、、と思わないでもなくσ(^_^;)。。。
観客からも少し飽きてるのが感じられるくらいでしたもんねσ(^_^;)。。。でもそんな〝自由さ〟が ヨーロッパ企画らしいといえばらしく、後半につれ収束できないくらいな〝とんでも展開〟なのに 力技でクライマックスに向かう所もまた 彼らの〝自由さ〟であって、理屈や理論で深く考えるよりは目の前の出来事を俯瞰的に楽しめちゃうのがいいo(^▽^)o
【以下ネタバレしております。】
たくさんあるだまし絵の中に『出て来ようとしてるシリーズ』というのがあって(笑)、何枚かの絵で構成されていて、絵をめくるたびに絵の中の人物が額縁から出て来ようとしてる(笑)。。
それとは別に今度は不思議なことに自分たちの絵も見つかりますΣ(゚д゚lll)。。人物画というよりは、リアルタイムに自分たちの今の事が描かれていたりする不思議な絵。。。自分たちが今まさにこの絵を持っている絵なんてものも出てくるΣ(゚д゚lll)(笑)。。
そんな不思議な絵がたくさん出てきたさなか、部屋の中央に置いてあるどでかい作品にみんな目を止めます。それは今にも出てきそうな1つ目の巨人の絵でした。これもどうやら『出て来ようとしてるシリーズ』のようで、、、、さらにはその絵を見ている自分たちのことも描かれてあって、、、。
面白半分にめくっていたら本当に巨人が出てきちゃったぁーー、、、、ってところで舞台が暗転します。みんなが食べられちゃう映像が流れ、巨人が絵に戻ったところで明転します。。
実はそういう流れのある絵を見てるだけだった、という展開(笑)。。。でもまた面白半分にめくっているとその絵の巨人もまた本当に出てきて暗転、、、、やっぱり食べられちゃったーという映像が流れ明転。、、、そういう絵を見てるだけだった(笑)。の繰り返し(笑)。。何度も何度もその繰り返しが続く中で、一人、また一人と既視感を覚え始め めくるのをやめるのですが、それでも結局出てくる展開になってしまうのはまるでコントのよう(笑)。。何度も、巨人が出てこないように阻止することに必死になっていくのですが結局は出てきて食われてしまうー、、、という流れの絵を見ているだけだった💦という感じに進んでいき、、 これが絵画世界なのか現実世界なのか訳分からなくなっていく作りは面白いですねー。
結局彼らの存在そのものも絵だった?みたいなこともさらりと流れ、そこは今回は特に重要じゃないから、みたいな透かしがまたおもしろい(^ ^)。
あんなに繰り返さなくてもσ(^_^;)、、、とも思いますが、ショートコントさながらにいろんなバージョンを思いついちゃったのかも知れませんね(笑)。。。それにリピートものの性質上、飽きられようとも数を重ねることが重要であったりもしますしね。。
ガーゴイルやモナリザも出てきちゃって、ガーゴイルの身体能力とか(笑)モナリザのヘタレ具合とか、、、何気に好き(^ ^)
死んだ画家の友人役の菅原さんはいい声で本当に紳士とか貴族とかお似合い(^ ^) 客演の方で今回で2度目の出演?ですが、好きな役者さんとなりました。
そして今回の作品は今までの作品の集大成って感じも強くあり、そういうのを感じるのもとても楽しかったです。これを機に他作品を見たり、想いを馳せるのも面白いかもですね(≧∇≦)
例えば、、、
だまし絵片手にふざけたり「見ちゃう?これ見ちゃう?」っていうノリから事態が悪化するのは『サマータイムマシンブルース』の「乗っちゃう?これ(タイムマシン)乗っちゃう?」っていうノリから事態が悪化していくのに似てるし、
散らかった部屋をどんどん片付けていく(それでいてなかなか片付かない)のは『ロードランナーズ・ハイ+ロー』の設定と一緒だし、
数々のだまし絵の作品(小道具)を紹介するかの如く次々と出していくのは『遊星ブンボーグの接近』の数々の文房具を出していく感じを彷彿とさせます(笑)
同じことが何度も何度もリピートされていく件りはまんま〝あの作品〟だし、
得体の知れない巨大生物が出てくるのは〝あの作品〟のそれだし、
事態が収拾つかなくなってパトロール的な人が出てくる展開は〝あの作品〟でもありました。。
(★ネタバレになるのでタイトルは伏せておきます。知りたい方のみ最後の方にタイトルバレしてます。)
色々な作品の集大成で、、そう考えるとなんか贅沢な作品でした(笑)。
パトロール隊みたいな酒井くんは頼りになりそうな出で立ちで案の定役立たず、っていうのも面白い(^ ^)
また次作もとっても楽しみな劇団です!!o(^▽^)o
【以下タイトルバレ】
同じことが何度も何度もリピートされていく件りはまんま『ビルのゲーツ』だし、
得体の知れない巨大生物が出てくるのは『火星の倉庫』のそれだし、
事態が収拾つかなくなってパトロール的な人が出てくる展開は『月とスイートスポット』でもありました。。