映画『朽ちないサクラ』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『朽ちないサクラ』

『朽ちないサクラ』

(上映中~:TOHOシネマズファボーレ富山、TOHOシネマズ高岡)

公式サイト:https://culture-pub.jp/kuchinaisakura_movie/

 

たび重なるストーカー被害を受けていた愛知県平井市在住の女子大生が

神社の長男に殺害された事件で、女子大生からの被害届の受理を

先延ばしにしていた警察が、その間に慰安旅行に行っていたことが、

地元新聞のスクープ記事で明らかになりました。

県警広報広聴課の森口泉は、慰安旅行の件を親友の新聞記者・津村千佳に

ポロっと話してしまっていたことから、彼女が記事にしたと疑いますが、

自分ではないことを証明しようとした千佳は一週間後に殺害されます。

後悔の念に突き動かされた泉は、捜査する立場にないにもかかわらず、

千佳を殺した犯人を自らの手で捕まえることを誓うのですが…。

 

孤狼の血シリーズの柚月裕子さんの同名小説の映画化です。

例によって原作未読ですが、解説のページによりますと、

森口泉は28歳で顔立ちは少女のようだが、

上司に対して物怖じしない芯の強さを持つ。とのことで、

それはもう杉咲花さんがピッタリはまる配役です。

 

(以下、“適度”にネタバレしています。ご了承ください)

 

ミステリーなので、あまりヒントになるようなことも書けませんが、

泉は慰安旅行の件を千佳に話してしまった時、

「お願い、記事にしないで。クビになっちゃう」と隠ぺいを懇願します。

そして千佳は迷った挙句、自分の職責よりも友情を選びました。

その時の泉は“その程度の”人だったということです。でも、気持ちは解る。

で、個人でもこんな風に隠し事をして身を守ろうと思うのだから、

もっとヤバそうなことがあるであろう権力組織は…ということです。

 

これ、本作だけで考えると、この組織は酷いな…と思えますが、

実際のところ、こういうことってあるんじゃないですかね。

一般企業でも似たようなこと…って結構あるんじゃないですか?

本作での組織は、警察、公安、新聞社、カルト教団など。

それぞれに正義が違う、そして、中には簡単に揺らぐ矜持もあります。

若い刑事が「警察官って自分の正義を貫くもの」なんて言ってましたが、

あなたの正義は自分の正義でしかないからね!と言ってやりたい。

ただ、警察は事件が起きてから解決に動く、

公安は起きる前に防ごうとする…というのは勉強になりました。

 

もう一つ、これは他のミステリーでも使えた手(?)ですが、

キャスティングがね、どうしてもこの人には何かあるな…となるのですよ。

外れたこともありますよ。当たったこともありますよ。

今回は…いや、さすがにそれは書けません。

 

事件の真相にたどり着いた泉はもう“その程度”ではないようでした。

が、彼女はその事実をどうしたのかは分からないまま終わりました。

そして、彼女には新たな目標が生まれました。

原作には続編があるようです。ということは消されてないってことですね。