映画『パストライブス 再会』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『パストライブス 再会』

『パストライブス 再会』

公式サイト:https://happinet-phantom.com/pastlives/

 

ソウルの小学校に通うナヨンとヘソンは、互いに恋心を抱きながらも、

ナヨンは両親の仕事の都合で海外へ移住することになりました。

12年後、ナヨンはノラと名乗り、ニューヨークで作家生活。

ソウルにいたヘソンとSNSで再会しますが、ビデオ通話のみ。

そして、また12年後、36歳の二人はニューヨークで会うことに・・・。

 

これも4月10日に鑑賞してました。

こちらはオッペンハイマーと違って、ナヨン=ノラとヘソン、

ニューヨークでのノラの夫アーサーさえ覚えておけば大丈夫です。

全くタイプの違う映画ですが、私の好みはあっちより本作です。

といっても、富山での劇場上映は既に終了しています。

 

(以下、“適度”以上にネタバレしています。ご了承ください)

 

簡単な話なんですよ。

ヘソンは12歳のころの泣き虫ナヨンがずっと好きなままなんです。

でも、24年の歳月は二人の環境を大きく変えていました。

ノラは「あの頃はヘソンが好きだった」という

ナヨンだった時の気持ちも残ってる。でも、過去なんですね。

ノラがアーサーとの未来を選択するのは腑に落ちました。

 

アーサーがなかなか素敵でして。

ノラの夫でありながら、彼女がヘソンと会うことを受け入れ、

しかも、三人で食事をしているシーンでは、

最初はノラが通訳なんかもして三人で話していたのですが、

ノラとヘソンの話が弾みだして韓国語だけで会話しちゃったりして・・・。

あれ?俺って実は邪魔なんじゃないか・・・と。これは切ない。

 

でも、ノラは分かっていました。私は12歳の泣き虫ナヨンではないと。

気丈な態度でソヨンに別れを告げ、アパートに戻ったら泣いてしまった。

そんな36歳の今のノラを温められるのはアーサーだけなんですね。

当たり前なんだけど、でも、初恋って特別なところあるじゃないですか。

物語としては、そういうところを上手く突いていると思いました。

ソヨンは恋愛感情がちょっと幼いままなんじゃとも思いますが、

でも、好きになった女性をずっと好きな気持ちは理解できます。

 

またね、映画全体の雰囲気が凄く良いのですよ。

ニューヨークでの大人のデート、台詞が少なくて、

あんまり上手く表現できませんが、とにかく「なんか良い」のですよ。

メリーゴーランドの前で会話するシーンがありました。

『パストライブス』というのは「前世」という意味です。

もし君がソウルにいたままだったら・・・とか、

今のこの状態が前世なら来世は・・・的なことをソヨンは言っていて、

でも、人生はメリーゴーランドのようには元に戻らないのです。

 

ナヨンは12歳でノーベル文学賞、24歳でピューリッツァー賞、

36歳でちょっと考えてトニー賞が欲しいと言ってました。

キャラクターとしても面白いですが、

そういう考え方の変化も含めて、人生は積み重なっていくのでしょう。

長編映画デビューとなるセリーヌ・ソン監督の体験がもとになっています。

だからか展開にそこまで特別感がなく、でも、そこも好きなところでした。