午前十時の映画祭『空の大怪獣ラドン』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

午前十時の映画祭『空の大怪獣ラドン』

『空の大怪獣ラドン』

(上映中~12/29:TOHOシネマズファボーレ富山)

解説サイト:空の大怪獣ラドン 4Kデジタルリマスター版

 

旅先で「ラドン温泉」の看板を目にすると、

「え?ラドンって、あのラドン?」と妙に興奮していた子供の頃、

テレビ何回か観ただけ(そんなに放送もされなかった)ですが、

たいして暴れてないのに福岡市街地を壮絶破壊するシーンと、

とても悲しくなるラストシーンはずっと目に焼き付いていました。

この度、午前十時の映画祭12で4Kデジタルリマスターで上映。

去年はモスラだったんですが見逃して残念なことをしました。

本作こそは!ということで、まだ観てない話題の新作もある中で、

ある意味“公開初日”に『空の大怪獣ラドン』を観てきました。

 

1956年公開作品。東宝怪獣映画初のカラー作品。

当時のポスターでは「総天然色」と書かれています。

しかし、序盤で地球温暖化のことに触れられていました。

この頃から言われていたのに、いまだに問題は解決されないどころか、

日本では本作公開前年から高度成長期に突入していきます。

また、ラドンの誕生に関しては、この温暖化が要因とされていますが、

その温暖化をもたらしたのは相次ぐ核実験によるという仮説、

ここは「あくまで仮説」としつこく言われてましたが、

1954年のゴジラも本作も、脚本は大人向け怪獣映画です。

 

『空の大怪獣ラドン』というタイトルですが、

82分の映画なのにラドンが登場するのは40分ぐらいからです。

そこまではメガヌロンという巨大ヤゴの怪獣が活躍(?)します。

阿蘇の炭鉱で起きた炭鉱夫の怪死事件の犯人だったメガヌロン。

これが発覚するまでの序盤、かなりの緊張感が演出されてまして。

単純に「怖い」というなら、貞子DXよりドキドキして怖いです。

 

で、ラドンが登場したらメガヌロンはお役御免。

どころか、卵から孵ったばかりのラドンにバクバク食われるという・・・。

にしても、怪獣の食物連鎖の中では弱っちかったはずのメガヌロンが、

2000年のゴジラ×メガギラス G消滅作戦では成獣のメガギラスとなって、

あの怪獣王ゴジラと死闘を繰り広げることになるとは(@ ̄□ ̄@;)!!

 

そして、やはり凄い東宝の怪獣映画の特撮技術。

今のVFXの特撮もいろいろな映像を生み出して素晴らしいですが、

VFXがなかった時代の街の破壊シーンなどは、

多分、一発勝負であったであろう緊張感みたいなものが伝わってきます。

福岡市街地もですが佐世保市の西海橋が落ちるシーンも圧巻です

 

ちなみに、西海橋は1955年に開通。その1年後にラドンに壊されました。

でも、話題に拍車がかかって観光客が多く訪れたそうです。

それと、どんなに街が焼けても「森永ミルクキャラメル」の看板は健在で、

実は他のシーンにも「森永ミルクキャラメル」の文字があって、

勝手な想像でしかないのですが、森永さんスポンサーだったのかな・・・と、

ちょっと大人になるとそんなことも考えてしまいます。

 

ラドンはゴジラ、モスラとともに東宝三大怪獣と呼ばれますが、

ゴジラやモスラのように、その後、主役(?)を張る作品はなく、

主にゴジラのライバル・悪友止まりの名バイプレーヤーという感じです。

私は好きな怪獣だけにちょっと残念です。

ハリウッド映画のゴジラ キング・オブ・モンスターズでも、

出演はしたものの、いかにも端役怪獣という感じだったし・・・(´;ω;`)

マッハで飛ぶことによる衝撃波や翼で暴風を起こしたりはしますが、

放射能光線や糸を吐いたりはしないところがキャラとして弱いんでしょうか。

 

(以下、“適度”にネタバレしています。ご了承ください)

最後にオキシジェンデストロイヤーのような架空物質ではなく、

現実的に可能な方法で殺されたことも、その後、主役になれない要因かも。

といっても、この退治方法も根底には社会問題が描かれています。

ラドンは阿蘇山火口に巣があるので、人工的に噴火させたんです。

地震研究所の先生は環境破壊どころではないと大反対しますが、

対策本部としてはラドンは死滅させねばならない害獣なのです。

人間による核実験に端を発する形で現代に蘇ったラドンが、

今度はその人間の破壊的で破滅的な殺戮方法で死に追いやられる。

しかも、“つがい”と思しき2頭(羽?匹?)が折り重なるように・・・(´;ω;`)

今日の鑑賞でも、やはり悲しくなったラストシーンでした。

 

とはいえ、映画鑑賞としてはたいへん満足いたしまして、

最初は同じ劇場でもう1本、何か観ようかと思っていましたが、

良い感じに高揚したので、もう1本は観ずに、そのまま帰途につきました。

上映後、明るくなった劇場内で軽く周りを見渡すと・・・、

客席は私と同世代と思しきオッサンばかりでした(^^)v

若い世代にもご覧いただきたい、往年の名作だと思うんですけどね。