フレンチのコースを食べながら、しんとわたしは考えていた。
秘境のレストラン。
雨降りの昼下がり。
例えば自分が思うように、このお肉を食べられないと仮定したら。
目の前にいるその人は、わたしよりずっと『生きて』いた。
自力で歩くことも、一人で食事をすることも、立ち上がることさえできない身体で、
それでも、間違いなくその人は『生きて』いた。
そこにいる誰よりも、強く、深く、自分の人生を歩んでいるように見えた。
このために生まれてきたんだ、と思える何か。
おそらくその人は、それを見つけ、きっと知ることができるだろう。
例え、そのお肉が切れても、走れても、一人で立ち上がれても、あたしはそれを見つけるだろうか。
「何のために生きて行くんだろう」。
それを知る力のあるその人は、大きくて、優しくて、眩しかった。