言い訳はたくさんあった。
まだ、地面が凍結しているだろう、とか、
もしかしたら、道が閉鎖されてるんじゃないか、とか。
だから、起きても、まだ葛藤してた。
今日は、あんまし、天気も良くなかったし。
わくわくする日の出も、見られそうもなかったし。
けど、負けた。
自分の好奇心に。
見てみたかった。
いつものコースがどうなっているのか。
いつも通り、暗い中、走り出す。
裏道はまだジャリジャリ。
滑らないように、
転ばないように、
いつもの橋の上に立つ。
おお。一面の雪景色。
ちょっとまだらになっちゃってるけど、ラン人生、初めての景色。
コースは順調。
誰が除雪してくれたのか、
そこだけは真っ直ぐに延びていて。
不思議なことに、アタマが理解しているからか、
「雪なんだから、寒いの当たり前」って、
ちゃんと、無意識に覚悟ができているからか、
いつもより、寒さを感じない。
途中、いつものランナーさんたちともすれ違う。
お互い、「この寒いのに、好きだねえ」って顔して、すれ違う。
ちょっとした連帯感。
日陰の雪は、きっと、永く残るだろう。
それでも、春は確実に近づいてくる。
こんな雪を眺めていると、余計桜を恋しく思う。
冬来たりなば、春遠からじ。
4月。桜の木の下で、信じられない雪が降った、この冬のことを思い出そう。
多分、その頃には思い出せないようなこの寒さを、今のうちに覚えておこう。
三か月後はこの道も、桜のピンクで染まるだろう。
この寒さも、もう少し。
春は、もう少し。

