社長・溝畑宏の天国と地獄 ~大分トリニータの15年/木村 元彦

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Amazonから本の内容についてコピペします。
大分トリニータは誰に殺されたのか!? 社長を解任された溝畑宏とチームを襲った悲劇の正体に迫り、Jリーグの病巣、弱小クラブの現実、中央と地方の格差など、様々な問題を暴いたノンフィクション。
この本で取り上げられている溝畑宏という人物については、もうずいぶん前から目にしていて、興味を持っていました。
興味があったのは、その個性的な経歴です。
東大卒で自治省に入省。
1990年 大分県庁に出向。2002年ワールドカップの誘致、現J2大分トリニータを立ち上げ。
県庁職員という身分ながらトリニータのスポンサー営業に奔走。
2004年 県庁職員のままトリニータ社長に。
2006年 総務省・県庁を退職して社長専任。
2008年 ナビスコカップに優勝して日本一に。
2009年 メインスポンサー撤退により資金ショートの責任を取って社長辞任。
2010年 初代観光庁長官に就任。
まぁめまぐるしいのですけど。
なにがスゴいといってもその行動力がスゴい。
彼はワールドカップを大分に誘致したくて。
そのためにプロサッカーチームを立ち上げて。
そのために県知事を動かして、Jリーグを動かして。
当然親会社なんて無かったし、大分県内の企業はどこのスポンサーになってくれなかったので、ジブンですべて県外から大口スポンサーを探してきて。
その営業力がまたずば抜けていました。
元営業マンのワタクシから見ても、それは官僚にしておくのはもったいないほど。
でも。
なんで、キャリア官僚がスポンサー探しの営業活動までしなければならないのか。
そこにこの本のもうひとつの主題があります。
親会社の無いプロサッカークラブの経営は強烈にキビシイ。
ということです。
溝畑サンが獲得するスポンサーというのは、ユニフォームの胸に社名を入れるくらいの大口です。
それが欠けた瞬間にトリニータの経営は破たん寸前になります。
結果として破たんして、溝畑サンはトリニータを追われてしまいました。
私財を数千万円もつぎ込んで、離婚までしてトリニータをバックアップしていたのに。
今年J1で優勝した柏レイソルの親会社は日立。
それを追い上げていたFマリノスのそれは日産。
さらにそれを追い上げていた去年のJ1チャンピオンチームの名古屋グランパスの胸スポンサーはトヨタですよね。
上位チームのスポンサーは安定しています。
こんな大企業の後ろ盾の無いトリニータの経営の厳しさは想像以上。
プロ野球やJ1の上位チームでは決してわからないプロスポーツ経営の裏側を知ることができます。
このドキュメントの主人公だった溝畑サン。
今は初代観光庁長官です。
さっそく、あの「嵐」を観光大使として起用することに成功(しかもノーギャラらしい)するなど、その営業パワーは健在のようです。
これだけ突出している彼は毀誉褒貶の激しい人物。
今でも大分では彼の悪口も多いようです。
でも、官僚としてこれだけの突進力、行動力を持つヒトは貴重な存在です。
彼は今51歳。
ひょっとしたら大化けするかも。
向こう20年ほど、溝畑宏という人物に興味を持って見続けていきたいと思っています。