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 バツブルー『乳がん』診断までのまとめ丸レッド

バツブルー『膠原病』について丸ブルー

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今日のT先生の診察は4番目。

前の人が呼ばれた時点で診察室の前でスタンバイ。

 

前の患者さんは若い(?)女性。お母さんとおぼしき人が付き添っていた。

出てきたあとからすぐに『魔法の手を持つ看護師』さんが追っかけてきて、ふたりを呼び止め「○○さんの面接を受けましょう。」と言っていた。

 

○○さんというのは日本でも数人しかいない乳がん専門の看護師で、痛みや副作用のこと、精神的な相談までケアしてくれるエキスパート。

 

私も1月25日の治療方針の説明の後、同じ様に『魔法の手を持つ看護師』さんに呼び止められて説明を受けた。

 

当時(今も)は結構『能天気』に努めて(?)元気に振る舞っていたので、今は必要ないと判断し、判断されて、そのエキスパートの看護師にはいまだ会ったことはない。

 

でも、彼女には必要と思われた…。

その気配を感じながら、診察室へ。

 

 

 

T先生は、いつもと違う空気を吐いているように思えた。

 

重い。オーラが重い。

 

私は保冷剤を入れたガラガラ(小さいスーツケース)を隅に置きながら、しばらくその重い空気をどうしたもんか…と立ったままでいた。

 

T先生はパソコンの画面と一緒にフリーズしていたようだったが、はっ!と振り返って立ったままの私を見たので、すかさず

 

おはようございますっ!

 

と最高の滑舌で挨拶をし、椅子に座った。

 

T先生は我に返ったように、

「体調はどうですか?」と取ってつけたようにいった。

 

完全に引きずってる。たぶん前の人のカルテが、まだT先生の頭の半分以上を占めているに違いない。

 

私としては私に集中してほしい。

今日が『最後の診察』になるのだ。

 

でも、理解できた。T先生も『人』だ。神様じゃない

 

なんとかコチラに脳内をシフトしてほしいと、いつもと違う『最後感』を出そうと…

「すんごい元気!」と言ってみた。

 

T 手は?むくんだりしてない?
 
Y 手?むくんでる?
 
T レイノーとか…。
 
Y ほら。(こっちを見ない先生に手を差し出す)レイノーはね、今日が最後の抗がん剤かと思ったら興奮しちゃって、出なかった。
 
やっとT先生が、こちらを見て声を出して笑った。
 
よし!もうちょっと。
 
Y さっき『問診表』に書いたよ。見てない?
 
T 『問診表』? 見てないなぁ。 他は?
 
Y えーっと。 ジーラスタの後にすごく体が痛くなるんだけど。今までは我慢して4,5日…。
だけど、今回は「なんで我慢してんの?」って思って、ロキソニン飲んだ。
 
T 我慢してたの?
 
Y うん。でも「バッカじゃないの?何と戦ってんの?」と思って、飲んじゃった。ジーラスタの夜に1錠、次に日に2錠。 それだけ。それだけで痛みなくなった。 今までなんで我慢してたんだか…。
 
T よかったね。そのぐらいなら問題ないよ。飲んでも。
 
Y もらったロキソニン飲んでるけど、アセトアミノフェン(バファリンとかの鎮痛成分)でもいいの?
 
T いいけど、弱いよね。どうせ飲むなら効果が期待できるものを飲んだほうがいいでしょ?
ただし、ロキソニンは強い分胃がやられるから長く飲むのは注意しないと。胃が傷つくと困るから。.
 
Y うん。効き目がある分そんなに飲まなくて済むから。それでも気を付けます。
あと、先生。今日で抗がん剤おしまいで、先生に会うのはあさってのジーラスタが最後?
 
T うん。次は手術の説明になるかな? えーっと。ジーラスタ…。あ、ボクいないや。
はは…誰かにお願いする。
 
Y あーそ。(すんごく残念。)じゃあ、次は6月7日まで会わないのね?
 
T そうだね。(これからの予定表のページを見ながら) 6月7日に手術の説明があるから…。
そのあと6月9日に入院だからね。
 
Y それそれ!6月7日まで今日から約1か月。その2日後に入院。2日間で入院に必要なものとか用意するの大変だと思うの。もう入院の日程が決まっているなら、この1か月の間に準備できるものは準備したいんだけど。
 
T あー。そうね。じゃあ、入院の申し込みをしないとね。
 
Y へ?入院申し込みってもうするの?
 
T そうだよ。えーっと…今日でもいいし、あさってジーラスタの時でもいいけど。もちろん他の日でもいいけどわざわざ来るの大変でしょ?あ、今日は忙しいか…。
 
Y 今日は抗がん剤終わるのたぶん2時か3時ごろだから…。ジーラスタの後はアレ科の予約が入ってる…。でも、すぐ終わると思うからそのあとでもいいかな。どのぐらいかかるの?
 
T 1時間ぐらいかな。ジーラスタの後に予約入れておくよ。(椅子のキャスターを利用して座ったまま廊下の方へ移動…子供みたい)すみませーん! あ、Yさん入院申し込みしたいんだけど…。
 
廊下の方から魔法の手を持つ看護師さん登場! 入って来るなり私に向って親指をたててる。
あ!わかった。 『問診表』を持ってるな。
私も看護師さんに向って親指を立てて答えた。
 
看護師さん  先生!見て! Yさんの『問診表』。素敵なの、ホラ!
実際の『問診表』は写真を撮らずに提出してしまった(残念!最初で最後の『問診表』だったのに)ので、『本日の体調で気になること、他。』という項目に、書くことがなくて私が書いたモノを再現しました。
 
T おお!上手だね。ニューヨークの壁に書いてあるみたいだ…。
 
看護師さん いいわよねぇ。元気な感じ。上手。
 
Y (ニューヨークの壁かぁ…)いいでしょ?『問診表』にいたずら書き。おもしろいでしょ?
 
T (もう『問診表』についてはコメントなし)入院申し込みね。Ⅰさん(看護師さん)。あさって、いいかな?
 
看護師さん いいわねぇ。(まだいってる)はい。12日ですね。
 
Y よろしくお願いします。
 
T じゃあ、それで。(キーボードカシャカシャ…。)
 
Y アレ科の後でもいいのかな? アレ科の診察も術前最後だけど、何か特別に聞いておかなくちゃいけないことあります?
 
T 特別にはないかな。肺に異常が見えた時には診てもらうことがあるかもしれないけど。
 
Y じゃあ、いつもの報告(経過)と世間話だけで。
 
T ええと。この間も言ってたけど,手術は『全摘とリンパ節郭清』でいいのね?
 
Y 他におすすめがあります? 間質性肺炎の影があるから温存できないでしょ?放射線できないから…。
 
T そうです。 おすすめはコレかな。
 
Y いいです。『全摘』 再建もなし!
 
T わかりました。ではそれで。(キーボードカシャカシャ)
 
Y あ、思い出した! CTとMRIの同意書!
 
T ああ。用意してあります。(プリントアウトしてある書類の束を見て…)あれ?(ないようで…)
出しましょう!あらためて。
 
すでにプリントアウトしてある書類は他の患者さんのものだったらしい。
やっぱりT先生は書類の管理は苦手だな。
プリンターから出てきた書類に自分のサインをして渡してきた。
 
T インクがにじんでまだ、付くからきをつけて。ハイ。
 
Y 付くの嫌だな(笑)。 書いて出せばいいのね?今日じゃなくてもいい?受付でスキャンしてもらうのよね
 
T そうね。今日じゃなくてもいいよ。
 
Y はい。 あとは…ないかなぁ。6月7日まであいちゃうからなぁ。
 
T 大丈夫かな?
 
Y うん。じゃあ、最後の抗がん剤!行ってくる。 ジーラスタに会えないし。次は6月7日ね。
 
T うん。頑張って来て!
 
Y はーい!いってきます!
 
【最後(?)の診察】は本当に最後になった。
T先生の脳内は最後まで、どこかにモヤモヤを残したままのような対応だった気がした。
いつものように突っ込めなかった。聞こうと思っていたことも聞けなかった。
 
名残惜しい。今、私には「後ろ髪」どころか髪の毛がないので、先生に向って後ずさりするように診察室をでた。
 
淋しいというより、ちょっと不安なのかもしれない…。
 
診察を出たらすぐにクルッと方向転換。 スーツケースをガラガラ引いて颯爽と廊下を歩いてケモ室へ向かった。