月に一度の銀座『日本歳時記 壬生 』のお時間です。
『壬生 』は、
私の食人生観を変えてくれた日本の真髄料理店です。
や、
料理店というより、
日本の文化を学べるお教室であり、
現代の『星岡茶寮』といっても過言ではないかもしれません。
私の名前は、
正真正銘「真希絵」ですが、
なぜかこちらでは「まり」です。
女将さんに名前を勘違いされ続け、
早いもので1年が経ちましたが、
「まりちゃん、うちには会員しかこれないんだから、
あーたみたいな世代の人達に、まりちゃんが体感したことをしっかり伝えてよ」
と、
毎回こっぴどく言われているので、
多くの方に伝えるのは、
このブログしかないということで、
以下、長々と書き連ねてまいります。
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入り口の掛け軸は、
先月、『壬生 』ご夫妻がサンセバスチャンに行かれたとのことで、
「サンセバスチャン 想い出」です。
○
掛け軸の下には、
「薬がり」と書かれた「蓬摘み札」が置かれています。
山野に生える薬草(山菜等)を食べていれば、
病気にならず、
薬なんていらないってことです。
このお札の説明を聞いた後、
女将さんに、
「まりちゃん、こっち来て。 今月もきれいよ~」と通されたのが、
○
お手洗いです。
「つれつれ椿」が寝そべってます。
「まりちゃん、この椿、ぜーんぶ顔が違うから、一つ一つ写真撮って」
と言われましたが、
全部撮れって、
んなこと無茶ですから、
女将さんにばれないよう、
そっと4カット位にしておきました。
○
お部屋には、
「ビルバオ」の置き物と、
火事になったという『ムガリッツ (スペインの2ツ星レストラン)』周辺の様子を
模った苔とお花が飾られてます。
○
女将さんがスポットライトで照らしてくれましたが、
『ムガリッツ』の周りは、
どうやらお花と森林に満ちているようです。
『ムガリッツ』話を聞けば聞くほど、
行きたくてたまらないです。
昨年『ファットダック』に行った ように、
『ムがリッツ』が復活したら、
何とか強行突破して行きたいものです。
さてさて、
今月のお料理テーマは、
○
「アンドーニー君」です。
アンドーニ君とは、
先ほど火事にあったという『ムガリッツ』のオーナーシェフで、
火事見舞いの想いをこめたお料理になさったとのことです。
私も『壬生 』料理を頂きながら、
1日も早い復興をお祈り申し上げます。
「薩摩切子」の器を両手で持って、
手に切子パワーがチクチクきたところで、
蓋を開けると、
あ、
その前に、
○
『壬生 』唯一の飲みもの「菊姫」で口を潤します。
こちらに来ると、
昼間っから、
仕事の合間であろうと、
この日本酒をどうもぐびぐびいってしまいます。
改めて、
蓋を開けると(この蓋、めちゃ重いです)、
○
ひじきと白米です。
「この白黒色、ココシャネルみたいでしょ~」と、女将さん。
まさにそうです。
ついこの前、
大阪まで観に行った『ガブリエルシャネル 』がよみがえってきました。
○
シャネルのように美しくオンリーワンの逸品です。
まず白米のみを頂きますが、
白米は、
甘酢と合わせられた酢飯でした。
こちらでは、
こうして最初にご飯が出されることが多いのですが、
食べ始めということで、
お腹を労わるために、
白米の炊き加減は、
いつも柔らかめです。
ひじきは、
ただおだしだけで炊かれたものですが、
磯の風味が鼻腔を抜けていきます。
女将さんに許可を頂いたので、
私も作ってみることに致します。
○
慈姑の素揚げと、
大根のお椀でした。
びよーんと巻いた慈姑は、
「蜘蛛の糸」を表しているそうですが、
なぜ「蜘蛛の糸」かといいますと、
身の回りで良くないことが起こった時、
「蜘蛛の糸」が邪気を祓い、
自身を守ってくれるそうです。
○
慈姑の下には、
おだしのみで焚かれた大根がいましたが、
日本では幸運を意味する「末広がり」型になってます。
もうこれ以上大きくならないという牡丹えびと、
ダイナミックにカットされた鰆のお造りが、
いい子にして氷の上に座ってます。
○
ひげを持って、
「えびで鯛を釣る」ならぬ、
「真希絵(まり)でえびを釣る」です。
○
えびのお頭には、
とろんとろんの青い味噌がつまってます。
○
ひげも、頭の殻も、目も、足も、
ぜーんぶバリバリ音を立てながら、
しっかり噛んで頂きました。
食べ終えると、
氷で汚れた指を洗いますが、
洗わなくても、
嘘みたいに、
生臭くないんです。
とてもピチピチ新鮮な活力あるえびと鰆ってことですね。
女将さんから、
「21世紀の天ぷらよ~」と出されたのが、
この繋がった白うおです。
混ぜ混ぜしてかき揚げみたいにしちゃうと、
食感も良くないし、
衣がつきすぎるのですが、
こうして揚げると、
衣も薄く、
さくっとかりっと揚がるんです。
手間隙かかりまくりの力作です。
○
お箸では食べにくいので、
懐紙で挟んで頂きます。
超高級ファーストフードの超高級ポテトチップスなんです。
ポテチと言ったら怒られそうですが、
私なりの「最上級なおいしさ」ってことです。
○
パクッとかぶりつくと、
目の前のお客様に、
何やらもう一皿が運ばれ、
女将さんが日本酒をびしゃーっとかけてらっしゃるじゃないですか。
私にも順番が回ってきました。
○
「ふきのとうの天ぷら」でした。
この天ぷらに、
日本酒を思いっきりかけて頂くとのこと。
ふにゃふにゃになっちゃうんじゃないかと思ったのですが、
ところがどっこい、
ふきのとうの苦味と日本酒の甘さが見事に手を結び、
より一層ふきのとうが勢力を増したんです。
一人より二人の力ってことでしょうか。
このふきのとうは、
雪の中から掘り起こして採れたものなので、
「雪間草」と呼びます。
凍える思いをして、
このおいしいふきのとうを私のお腹に届けて下さった生産者様にも、
お腹の底から御礼申し上げます。
改めて、
生産者の方々に感謝の意を表します。
ふきは中央部分だけを使われてますが、
この部分だからこそ、
しゃきっとした歯応えが楽しめるそうです。
おだしのみでさっと火が通されてましたが、
舌についただけで、
ふきならではの苦味と旨みが広がります。
同じく、おだしのみで炊かれた根芋は、
長葱を煮たかのようなとろんとした食感です。
うどだけ甘酢風味になってます。
これらは一刻も早く食べないと、
それぞれの良さが逃げてしまうので、
作り置きだなんてもってのほかとのことです。
そして、
この旬をベストの状態で食べるからこそ、
私達の体に英気を吹き込んでくれるんです。
○
それにしても、
見れば見るほど、
見とれてしまうほど、
日本の色です。
と、ここで、
○
山盛りになった木の芽のご登場です。
○
女将さんから掌にのせられました。
これを両手でパーンと音を立てて嗅ぐと、
全身に寒気が猛スピードで走りました。
「この匂いを嗅いで、ゾクゾクこなかったら、おかしい人間だわよ」と、
女将さん。
ゾクゾクきて一安心です。
○
漬け焼きにされた本鱒にのせて頂くのですが、
○
木の芽、てんこ盛り盛りです。
これだけかけたら重くて耐えられさそうですが、
羽毛布団みたいにふんわかした木の芽なので、
圧力はかかりません。
○
木の芽の風味が勝るんじゃないかと思ったのですが、
鱒とのバランスがぴったんこかんかんです。
免疫力UPに貢献してくれるお二方でした。
日本金柑・原種みかん・原種小夏です。
白いワタも皮も頂きます。
五感を通して、リフレッシュです。
大好物の小豆を使ったお汁粉風のお椀です。
器は、
何100年も前の「洛」です。
甘く炊かれた粒あん汁粉に、
濃い抹茶がかけられてます。
スプーンも箸も何も使わず啜ります。
底に残った小豆は、
底を叩いて口に入れます。
力強い甘さと苦さの共演です。
お風呂上りな気分です。
帰り際、
○
女将さんから、
原種小夏と加賀蓮根のお土産を頂きました。
そして、
最後に女将さんより、
背中を叩かれ、
「人間はおいしいものを食べるために働くんだから、
貯金なんかせんで、働いて稼いだら、おいしいごはんのために使う。
いつ何時何が起こるか分からないんだから、貯めててもしゃーないでしょ。
しっかり働きんしゃいよ」
と。
はい、
一度しかない人生、
これからもおいしいごはんを食べられるように、
毎月『壬生 』に通えるように、
傍を楽にするために、
大切な人のために、
自分の喜びと夢のために、
地に足をつけて、
軸をぶらさず、
ちゃきちゃき働きます。
まり。