爪と巻き爪に関する 新たな知見のまとめ | makidumedeskのブログ

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巻き爪治療のプロのためのブログです。
爪の性質と治療技術に関する最新の情報を提供しています。

OHIO州立大学の解剖学教室が以前公開していた画像と、自分が撮影していた巻き爪の画像から得られた 新たな知見を整理しておく。

 

1.爪の3層構造におけるケラチン繊維の走り方について。

 第2層は、従来ケラチン繊維は、横方向に走っていると書かあれているが、縦方向にケラチン繊維は結び付いている。その連続性の強さは、第1層ほどではない。横方向に関しては、この画像ではよく見えないので、触れることはできない。

 

2. 第3層は、縦方向にケラチン繊維は走っているとされているが、そういう走行性は認められない。第3層は、爪母部分と爪床部分とからなり、各々では、細胞からの成り立ちが異なるし、細胞そのものが異なる。爪母成分は、2種類の細胞からなり、各々は、爪に細胞が破壊することなく入っていくが、そこには連続性はない。斜め上方に向いて、細胞が破壊することなく爪の成分になっていく。爪床部分では、乳頭構造をして、先端を爪の根部に向けた乳頭がきれいに配列して平面を作っている。爪床の細胞は、爪と接触しているところで、爪に押されるようにして破壊されて、それが爪の成分になっていく。そのために、ケラチンの連続性は全く認められない。それゆえに、従来第3層は縦方向にケラチン繊維が走っているといわれていたが、それは、誤りであると考えられる。このケラチンのでき方が、爪の爪床に対するスライドと接着という機能を生み出すことになる。

また、のちに述べるが、爪が爪床から離れてくるときには、ケラチンが爪床から縦方向に連続して伸びる繊維を形成することが見られる。しかしながら、正常の爪においては、縦方向のケラチン繊維は見当たらない。

 

3.巻き爪変形に関して。

巻き爪変形を起こす原因は、爪の下側の層の横方向の長さの短縮が原因であると考える。横方向の長さが短縮する原因は、爪の下側の層が膨張と収縮を繰り返すことによって、構造的に横方向のケラチンが減少して、縦方向に移動して、横幅方向で分子数の減少により、長さが短縮し、厚さの方向に分子が移動することで、厚さが増加するという現象が起こることがきっかけとなる。

この横幅の第3層における減少が、爪の変形の基となる。

すなわち、第1,2層の長さが変化しないのに対して、第3層において、横幅が減少する結果、全体的には、バイメタルの原理のように、上方に突の曲線を形成し、それが、巻き爪変形の基となる。

 

4.巻き爪変形が起こり始めると、爪は爪床から隆起するために、そこには、間隙ができ、爪は、その走行が爪床とは平行にならずに、それよりも、少し上方を向けて伸びるようになる。

 

5. 爪が爪床から離れて、上方に向けて移動するようになると、今まで爪によって破壊されていた細胞は、破壊されずに、爪に接着したまま爪の動きに合わせて、伸びていくことになる。

この時、今までは破壊されて連続性がなかった細胞が、破壊されることなく連続性を得て、連続的に爪床から爪に向かって伸びていくことになる。これが、爪床から爪に向かって連続して伸びるケラチン繊維を形成することになる。こうしてできるケラチン繊維は、たくさん集まることによって、肉眼では、黄色調で透明性に見える。

すなわち、巻き爪変形が始まることによって、爪が爪床から離れだすことによって、爪床から今までにはない縦方向に走る構造のケラチン繊維が爪の成分としてできてくることとなる。

これをSYと名付けておく

 

6. SYは、主に爪床にある乳頭の先端部分から爪に向かって伸びてくる成分からできていると考えられる。大きくなると、その中に血管が入っていることもあり、それは、乳頭の血管部分であると考えている。この構造は、OHIOの顕微鏡画像で確かめられる。

 

7.この繊維構造に伴って、その繊維を取り囲むような成分が存在し、それをSWと名付ける。SYがかなりしっかりした繊維で、連続性もあり、構造的に強いのであるが、SWは水分を吸収すると膨張が強く、また軟らかい成分で、両者の間で異なることがわかる。乳頭の先端から離れた部分の細胞由来であると考えている。

 

8.このSYとSWを合わせて、SS物質を名付けておく。

SSが増加することによって、爪の変形はさらに強くなる。すなわち、SSの膨張収縮に伴って、この部分は、構造変化を大きくする。

SYは集まって、層構造を作ったり、太い繊維構造を作ったり、散在する構造を作る。

また、このSYがこれらの強い構造物を形成するときに、SWは、それらの間質のような役割を果たして、それらの構造の外側に位置するように配列する。

この時、SYは、強く水素結合で結ばれて、硬い構造を作る。

これに対して、SWは水素結合が弱く、水の出入りによって、膨張収縮を簡単に繰り返す。このことによって、巻き爪変形は、さらに進みやすくなる。

 

9.この構造変化の繰り返しによって、最終的には、爪は先端が閉鎖するところまで変形していく。

 

10. この時、爪母部分も爪方向に走行に向きを変化させているために、その厚さを増加させる。それは、やはり、膨張収縮を行うが、その程度は、比較的弱く、変形の強いときでも、その位置は変化せず、構造変化もほとんどない。

 

11.このようにして、巻き爪変形は起こると考える。その時、全体的に、均一に下側が収縮するときには、同じ曲率半径で、変形が起こるために、きれいな円周から円に至るまでの変形を見せる。いわゆる遺伝性の巻き爪といわれている巻き爪においては、この形で変形することが多く見られる。また、この場合には、すべてのユビにおいて同じような変形を起こす。

また、全周性に均一に収縮が起こらずに、その爪の一部分で膨張と収縮が強く起こり、その部分でのみ爪が厚くなり、変形を強くする場合もある。その曲がり方は、その部分でのみ急に曲率半径が変化するために、弯曲というよりも、屈曲するという言葉を使う。

 

12.これらの事実より、巻き爪変形の主たる原因は、爪の下側の層の横幅の収縮力による短縮によってもたらされるものと考える。

そしてそれを起こす原因は、爪の下側の層のケラチンの水分子の出入りによっておこる膨張・軟化と収縮・硬化の繰り返しによっておこると考える。

 

13.水分子は、ケラチン繊維間の水素結合している部分に、入って、ケラチン-水-ケラチンという水素結合を起こして、膨張して柔らかさを増すこととなる。乾燥するときには、この部分から水分子が抜けて、ケラチン同士の水素結合に戻る。この水分子の出入りによって、この部分の体積の増加と減少が、その部分の構造の変化を起こして、さらに下側が横幅を短縮していくものと考える。

 

14.この膨張収縮を起こす際に発生する力の大きさは、その部分の厚さに比例することとなる。また、その力が大きくなることによって、全体の収縮できる長さの限界を超えるときには、その部分に亀裂を生ずる。その亀裂の入り方は、岩石における柱状節理を起こす原理と同じで、長さが決まっている方向で亀裂が入る、爪においては、前後と縦方向は長さが固定されていないので、亀裂は入りにくいが、横幅方向では、爪の横幅が固定されているために、横幅方向で、縦に亀裂が入ることが認められる。

逆に、この亀裂を認めることによって、横幅方向に収縮力が発生したことを証明する。この発生する収縮力こそが、巻き爪変形の基となる力であると考える。

この亀裂は、爪の厚くなっているところで強く入る。その部分の収縮する力が強いためである。この亀裂の入り方は、外側から広げる力が働いて亀裂が入るという風には説明できない。なぜならば、外側から広げる力が働いて亀裂が入るのならば、亀裂は爪の薄い部分に入るはずであるが、亀裂は爪の厚くなった、硬い部分に入るからである。この現象が、その部分の収縮力の発生という理論を支持する。

 

15. この爪の下側で発生する収縮力が、巻き爪変形の基となることがわかると、その治療法もわかってくる。

そこで、爪の変形がある部分が、なくなれば変形は無くなると考えたり、一度矯正しておけば治ってしまうと考えることは、治療としては、まったく一時的にすぎないと考えざるを得ない。

その後、再発することは、その原理から当然と考えられる。

 

16. この収縮の原理で変形が起こるのであれば、その原理を逆に使って使って、元に戻すことが可能となる。

すなわち、水の水素結合を利用して元の構造に戻し、元の形に戻せばよいと言ことになる。

 

17.現に、その方法を使えば、巻き爪は、容易に元の形に戻すことが可能で、その収縮に対抗できる力を自分でかけることができるようにしておけば、再発を防ぐことも可能となってきている。

 

18. そのために、爪の最適な部分に、最適な大きさの最適な性質の力を、最適な方向にかけることができるように、様々な種類の器具を考案し、それらを使って、即時に最適な形にし、その形を維持できるような器具を考案して使用している。

また、矯正しながら、爪の構造をもとに戻す処置も行う。その時も、水の水素結合の原理を逆に利用することによって、矯正を容易にすることが可能となる。

矯正とは単に形を戻すだけではなく、その構造も、元に戻すということでなくてはならない。

 

この器具の使用と、その使用方法をあわせて、

”ツメフラ法”と呼んでいる。

 

そしてツメフラ法を使って、巻き爪の治療を現在まで行ってきている。

その方法の使用によって、巻き爪の治療は、短時間に形を矯正することを可能とし、また矯正しても構わないことが実証されている。

また、その形を維持するための器具を、自分自身で着脱することを可能とすることによって、その後の形の維持を可能とする。

すなわち、巻き爪は、その爪の性質によって、下側が横幅方向で短縮する結果起こる現象なので、ほおっておけば、巻きやすい爪は、一度矯正しても再び変形を起こす可能性が極めて高いことがわかってきている。それゆえに、矯正後の再発の問題を解決しておかなくてはならない。

そのために、自分自身で、形を維持できる器具を使用して、着脱を自在にできる器具を使うことによって、形の維持を継続して可能にする方法を考案している。

またそのために、爪の先端から装着できるものと、爪の側方から装着できるもの、あるいは、爪の変形の偏在を考慮して、爪の先端と側方からを使って装着できる器具を用意している。

爪の先端から装着するものは、爪以外の皮膚には接触しないように考案されており、違和感が最も少ない。

そして、それを、使用したいときにだけ装着しておくことで、使用したくないときには外しておくことで、日常生活の不便さを解消している。

このようにして、形の矯正とその形の維持という二つの問題を、このツメフラ法は、可能にしている。

また、ここまでしておくことが、巻き爪の治療であると考えている。

 

ここまでが、現在までに分かってきた巻き爪に関する知見である。