爪の基本構造 | makidumedeskのブログ

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巻き爪治療のプロのためのブログです。
爪の性質と治療技術に関する最新の情報を提供しています。

今までも何回か出している画像です。OHIOの画像ほどきれいにその様子を表している画像を見たことがありません。

ここに掲示してしまうと、少し見えにくくなるのですが、私の持っている画像ではもっとずっときれいに、その細胞の結合状態がわかります。

第1層は、黄色の線で示しています。層構造をして、縦方向にケラチンが連結して、後ろから前に押すようにして進んでいくことがわかります。しっかりとしたケラチン繊維でできています。先端付近では、実はこの層は無くなっています。第1層が、先端にはない状態になっています。その代りに、水色で示した第2層が、先端付近で長く伸びていて、爪の表面とほぼ平行になって、あたかも第1層であるかのように見えます。爪が根元から出てきて、先端まで来るのに、6か月かかることを考えてみると、その間に擦り切れる可能性もありますが、ネイルをしていて、磨かれて、表面が擦り切れてしまった可能性もあり、正確に、どれくらいの量が摩耗するものかは、わかりません。

しかしながら、第2層のこの構造は、表面の代償をするのには、とても適した構造になっているといえます。

第2層は、このように、層を次々に新たに爪母部分から出してきます。生涯新たな層を作り出して、爪を作っていくことになります。stripe状の層を作り、縦方向に連結していることが見えます。もちろん横方向にも連結していることは、実物の爪を見ることで確かめられます。つまり、ケラチン繊維は、書物には、第2層はケラチンは横に走っていると書かれていますが決してそのように走っているわけではないことがこの画像からわかります。爪母の内部にいるときから、前後の細胞は緩い結合状態でいて、そのまま爪の内部に入っていくことになります。

明らかに前後では、連結しています。ただ、ケラチン繊維の染色を見ると、第1層ほど強く縦方向に染色されてはいませんので、強いしっかりとして縦方向の繊維は少ないかと思われます。横方向にも連結はあると考えています。

第3層は、爪母部分と、爪床部分とからなっています。

爪母部分では、2種類の細胞があって、それが爪の中に入っていきます。核の染色性が異なるので、2種類あると考えています。

爪床部分と異なる点は、爪床の細胞とは、細胞の種類が異なることと、爪の中に入っていくときに細胞が破壊されずに入っていくという点です。爪床が長い距離であるのに対して、爪母部分は、かなり短い長さです。あとからわかることですが、爪床部分からSS物質を作りだすときに、その部分とは明らかに異なる行動をとります。ここでは、連続した繊維を作ることはしません。バラバラに細胞が爪の中に入っていって、連続性はありませんし、左右との連続性もありません。ただ、この部分は、第2層と絡み合って出てくるので、第2層と下の部分とを接着しています。

爪床部分は、その前までに爪の最下層を構成する爪母部分の細胞に押されるように、あるいはこすられるようにして、成熟して少し上方に出てきた細胞が、破壊されながら爪の最下層の成分となります。この時に、細胞成分がゾル状態からゲル状態に変化し、さらに乾燥してキセロゲルという状態になっているのではないかと考えています。この状態変化があるために、爪の接着とスライドという機能が存在しているのではないかと考えています。爪は、完全に下側に接着しているわけではなく、一部は接着し、一部は離れているということが起こっているものと考えています。ここで、重要なことは、接着しているとはどういうことか、離れているとはどういうことかという問題があります。ある程度の固さがあるものが、密着して相手の形と同じ形で固まっている状態が接着で、それが、この場合には、片方あるいは両方が軟らかくなっている場合には、接着ではないと考えています。(これは、勝手にそう思っているだけです。)(接着という問題は、プラスチックを爪につけるときに持ち上がった問題でもあり、面白い問題ですが、ここではこの辺にしておきます)この接着とスライドがうまくいかなくなると、爪には重大な障害が現れることになります。爪が素直に前に進めなくなると、爪は後ろから強く押されて、厚くなりながら、破壊と前進を繰り返すことになり、爪甲後湾症を起こすことにもなりますし、左右のバランスが異なると、爪が曲がって生えてくることになります。

いずれにいたしましても、この接着とスライドという機能が、第3層の重要な機能になります。

ところが、第3層は、水分が多く、状態変化が大きいために、収縮・硬化と膨張・軟化という状態変化を起こしやすくなります。

この性質こそが、巻き爪を起こす性質になるものと考えています。それには、あるいは、その上の層の水分の透過性という問題もあるかとも考えています。老人になると、明らかに脂質が減少してくるために、下側が乾燥しやすくなると考えられ、そのために、巻きやすくなると考えています。

このように、第3層の成分そのものの変化によるものの場合と、その上層の成分の変化によるものとで、第3層は構造変化を起こしてくるものと考えています。

この結果、爪が少し爪床から離れてくると、そのために、爪床からは正常には見られない構造をした物質を作り出すことがわかります。それがSS物質と名付けた物質です。

爪からの強い摩耗を受けなくなると、爪床細胞は破壊されるtことがなくなります。そして、爪に接着した状態で、爪に引っ張られていうことによって、次から次へ、爪床細胞が連結した状態で、爪床から爪のほうに出ていくことになります。この状態は、第1層の細胞が連結して爪のほうに入っていくことに似ています。このような経過をたどって、爪床細胞は爪の進行に伴って、爪に向かってケラチン繊維を伸ばしていくことになります。それが、SYと名付けたケラチン繊維です。それは、やや黄色透明調でしっかりとした繊維を形成しています。巻き爪が厚くなるときにやや黄色調を帯びる主たる成分となります。そして、その周りに、間隙を埋めるようにSWが存在します。SWは水分の増減によって、膨張収縮を強く行い、またSYよりも、柔らかく、もろい感じです。このため、SYの膨張収縮に伴い、SYが隣のSYとの連結の手を変えて構造変化するとき、その構造物の外側にあって、間隙を埋めるようにSWは存在しているものと考えています。第3層と、SSとは、巻き爪変形を起こす時に、非常に複雑な動きをするものと考えています。そのために、そこには、様々な模様ができてくるものと考えています。層構造を作ったり、繊維構造を作ったり、散在構造を作ったりして、それが入り乱れることもあります。

そして、最終的には、先端において、先端が閉鎖してしまうような構造を作ることもあります。

簡単な巻き爪しか見ていないときには、全く想像もしていないようなことが起こっています。たくさんの巻き爪を、軽症例から重症例まで、きれいに並べていくことによってのみ、その変化の様子がわかり、どうしてそのような構造の変化や、形の変化が起こって来たのかがわかります。こういく仕事の積み重ねによってのみ、巻き爪変形のメカニズムがわかってくるのです。ただ単に、書物に書かれていることをうのみにして、何も考えないでいれば、その変化の様子を理解することは不可能でしょう。少なくとも、爪の専門家と自負している医師であれば、それを地道にしてほしいと思います。そうしなければ、最適な治療などはとてもできないと思います。

その巻き爪に、何をしてあげたらよいのか、おのずと解ってきます。無謀な手術など無くなることと思います。

もっともっと、真剣に、巻き爪と向き合ってほしいと思います。

巻き爪とその周辺疾患は、もっとずっと複雑な構造をしているのですから。