図書館本。
『大山倍達正伝』以来、久々に分厚い本を読んだ。
本を読む速度はかなり早い方だけど、さすがに通勤往復で読んでも1週間かかった。
戦後から五輪頃までの混沌とした時代のノンフィクションは本当に興味深く読める。
本書もたいへん面白く、分厚さが気にならないレベルで一気読みした。
古い話にも関わらず、ここまでまとめ上げた著者の取材力と筆力には感銘すら受けます。
弟子の岩釣の全日本入り(馬場へのガチ対戦アピール)という導入部分も素晴らしい。
かなりのファンタジーだった『空手バカ一代』、実は割といい線描いてたのだな。
ただ、いくつか気になる点も。
執拗な木村上げ&力道下げは趣旨的にも仕方ない。
ただし、木村の凄さを喧伝するためか、『空手バカ一代』的な盛った描写はちょっと醒める。
プロレス側のアングルは明確に否定しているため、余計に滑稽に感じてしまう。
また、基本的には当時の報道なども裏取りして丁寧に書かれてはいるのだが、
一部「〇〇氏が証言しているから間違いなく事実である」というのが散見される。
その方の意図なき記憶違いや、話を盛った可能性を頭に入れずに断言するのは乱暴かと。
タイトルは刺激的だが、悪意が感じられてあまり好きじゃないな。
別に力道ファンでもなんでもなく、エリオを撃破した木村政彦は大好きなのだけど…。
それにしても、大河ドラマで十分1年分作れるだけのネタ量。
力道山戦は置いといて、エリオ戦をゴールにしたものなら見たいとすら思った。
読了して、つべであらためて力道対木村戦を見てみた。
本書のとおり、木村攻勢の場面等が一部カットされており、これだけでは良く分からない。
ただし、木村の身体は18の頃の筋肉量と全く違い、両者の練習量には差がありそう。
力道山がアングルだけの男だったらともかく、映像見る限り打撃技はホンモノの破壊力。
「寝技が全くできない」と本書に書かれていたが、相撲出身だけに腰が強く、簡単には寝まい。
ともに全盛期の実力比べならともかく、この状況だと初めからガチでもどうだったか…。
極真でも新日でも「異常な練習量(と理不尽な質)はよく出てくるが、
木村の現役時代の練習や拓大時代の指導もかなりメチャクチャ。
現代では受け入れられないだろうけど、ああいうのが昭和世代の強さの秘密ではあると思う。
UWFが新日に参戦して関節で沸かせていた時、坂口が木村健に軽ーく脇固めを決めて、
「こんなんもん昔からやってること」と一瞬ガチ競技者に戻ったのは面白かった。
岩釣がその坂口に一本勝ちしてたり、ラシュワンの師だったりしたのは知らんかった。
いろいろと密接に結びついてますなぁ…。