小島一志、塚本佳子『大山倍達正伝』 | たまには跳ばずに観るFOOTBALL

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押忍。この2週間ほど、サカマガもウラマガも格通もランナーズも読まずに放ってました。

通勤中↓ずーーーっとこの本に夢中だったもので…

小島 一志, 塚本 佳子
大山倍達正伝

これはノンフィクションの大傑作。640頁と量的にもかなりの読み応えだった。

比較的読書スピードが速い自分でも結構時間かかった。


本書は第1章と第2章に分かれている。

大雑把に言えば前者が「チェ・ペダル」、第2章が「大山倍達」としての半生を描いたもの。


第1章は、生前の大山総裁を知らない塚本氏が担当。

やや堅く長い印象だが、さながら戦後の“裏・在日朝鮮人の運動と抗争史”といった重い内容に起因するもの。

その証拠に決して冗長ではない。


戦後「密航」で入ってきた在日朝鮮人(の一部)は、「戦勝国側」と称してメチャクチャな無法を働いてた。

日本側による拉致や強制連行なんてのはとんでもない話で、じゃあ彼らの「特権」て何だろうと思ってしまう…

(注:この本を読んだだけで言っているわけではないです。念のため)


第2章の担当は、極真経験のある小島氏。こちらは一転して読みやすい(その分内容が薄い?)。

時代背景から紐解いた第1章とは異なり、『空手バカ一代』をはじめとする「大山伝説」の検証が中心。


戦後初の全日本選手権制覇の真相、力道山との確執と手打ち、大山道場の組手、ウィリー暴走の理由、

「空手百科」の顛末や後継者選び、日本の家族との軋轢(?)など、実に興味深い内容だった。

特に家族との仲は結構衝撃波でした。

ただ、“有明省吾”のモデル・春山一郎氏の話がまったく出てこなかったのは残念…


『空手バカ一代』の内容を鵜呑みにするほど純ではないし、

極真や大山総裁関連の書籍は割と数多く読んできた。

だから虚構によって生まれた“伝説”の真偽は、ある程度把握しているつもりだった。


しかし、正直ここまで民族運動に大山総裁が関わっているとは思わなかった。

また、この時代がなければ稀代の空手家は誕生していないのは分かった。

(ついでに、拓大卒が嘘で早大入学は事実だったことにも驚いた)


嘘と虚飾にまみれた現実の大山倍達像に失望する人も多いだろう。

だが、「ピストン堀口と実際に拳を交えた」「講道館柔道の段を正式に驚異の短期間で取得した

力道山と戦えば100%勝っていた」といった数々の証言からは、非凡な武道家の姿が見て取れる。


サラブレッドは、血統を辿れば必ず3頭の祖先馬のどこかに着くという。

現在の格闘家たちも、突き詰めれば数多くの選手が大山総裁のもとにたどり着く。


「大山伝説」は虚構だが、マス・オーヤマと極真の強さは決して嘘じゃない。

PRIDEなどを観て極真が弱いという人は、一度でも道場生の生脛の下段を食らってからにしてほしい。


大山倍達はやはり燦然と輝く巨星のひとつ。

自分の中の偶像を壊したくない人は別だが、そうでない人にはぜひ読んでほしい骨太の一冊でした。


以下は過去に読んだ図書の一部。

これらもおススメ。

大山 智弥子
わが夫、大山倍達
木村 修
『空手バカ一代』の研究
最強最後の大山倍達読本―三年祭メモリアル

 #読み終わったので格通にも目を通す。割と問題をきちんと論じていた(安西は別)。

 #指摘のとおり、秋山というより運営側がオッペケペーすぎる。

 #それと、セコンドは間違いなくローを「滑らせろ!」と指示していたようです。

 #自分の経験だけで語ってしまいすみませんでした…