言い寄って良いよって君は
ガードの緩い目線で僕を見る
グラスも飲み干していないのに
きっと君に酔い始めていた

綺麗にお化粧を決めた顔で
あんまり不埒に乱れないで
僕の方がなんだかそわそわして
落ち着いて楽しめなくなるから

アドレスを聞くより前に僕は
君に愛のことばを囁いてみた
それなのに君はさりげなく僕に
アドレスを聞いてきて困ったけど

君の嘘の後ろ側にあった誘惑に
僕は負けそうになって出掛けた
君じゃなければ誰でも良かった
ただ、一つの愛してるを君に。

ひとつの夏の火遊びだったとしても
今の気持ちを大切にしたいから。
『ねぇ、終わってよかったの?』
君は未だに聞いてくるよね
僕は全然ダメだったけれど
答えはイエスと言わせてほしい

桜の木が緑に染まる季節に
青白いあなたがふわっと舞った
軽率な僕は思わず近付いて
…多分答えはもう出ていた。

順番なんて誰が決めたんだろう
あんな面倒で頑なな方法で
純粋な行為を汚すなんて。
恋はしたい事をした奴が勝ちだ。


きっと、まだ時間が足りなかった
太陽が傾いて茜色に染まる空を
手を繋いだ二人が見ている空気は
もう夏の匂いで溢れていたけれど

すべてを見せてくれる君の優しさに
僕はずっと溺れてたのかも知れない

口に出すことをためらったその一言は
海より深く、あなたを涙で染めていって
明日からの僕らはきっと赤い糸が解けて
違う景色を見ることを知っていたつもりだけど

今、僕を抜けてゆく真夏の夜の湿った風は
きっと君の優しさを選ばなかった後悔だ。
知ろうとする行為を非難なんて
結滞で無神経な発想なのかしら
いっそ、あなたの思惑を逸脱した
可愛い家鴨の様に騒ぎ立てて嗤おうか

意外に中途半端な意識で振り向かれて
上唇の左の方が厭に逆剥けている

皆同じ様に興味を持った所で
形の無意味さに気付いた頃
もう一つの理由に早く感付けば
後ろの秘め事を知らずに済んだの?

折角 月が欠ける寸前の夜に、背中に
理不尽な痕跡を残してあげたのに

そんな隙間も埋める間柄だったら
この先も謙虚の無い悪戯になっちゃう


こんな夜には意識が水の中に飛んで
…早く会いたくなくなれば良いのに。