平成25年民法 分析と再現 213.52点 | makemakeintoのブログ

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22歳。匿名で行きます。

分析
 出題趣旨の公表前なので、設問2について自由な分析をしてみます。

 設問2では、ひとことでいうと、従来の履行補助者論の再検討がテーマだったのではないかと考えています。

 履行補助者とは、従来、債務者が「自分の債務の一部」を履行させるため、「自己の手足として」利用する者であったと思います。

 本問では、Hの行う内装工事は賃借人の債務ではないので、HはFの「債務の一部」を履行するものではありません。また、なにより大きいのは、Hは請負人であって独立性を有するから、Fの「手足」となる者ではありません。しかも、BはHに内装工事をさせることを承諾しているという事情もあります。

このように、従来の通説を当てはめると、Hは余裕で履行補助者にはあたらない事案だと思われます。

では、だからといって履行補助者論を容易に否定して良いのでしょうか。従来の通説にしたがって履行補助者論をさくっとあきらめることは、いわゆる予備校の弊害と言われる事態だと思われます。

「予備校の本でそう書いてあった」という理由で、簡単に履行補助者性を否定してしまうのは、思考停止に陥っているに等しく、まさに試験委員の思うつぼだと思われます。論パをひたすら覚えまくってる受験生のことをきっと試験員はキモくてたまらないと思っており、そいつらをいかにして落としてやろうかを考えて問題を作っているでしょう(もちろん過言ですが)。

そもそも、なぜ主張反論型になっているのか。それは、従来の通説を批判的に検討しろというメッセージなのではないかと考えます。主張反論型で書くためには、異なる立場を想定することが不可欠ですので、たとえ通説が確立している論点でもそれを異なる立場から批判的に検討せざるを得ないからです。

つまり、①履行補助者の従属性、②債務者と履行補助者の債務の共通性を要求している従来の履行補助者論を本当に維持すべきなのかどうかという点、また、③債権者の承諾を得ている点をどう考えるのかを自分なりにその場で考えることができるか、という点を試験委員は聞いていたのではないかと思われます。

なお、僕は不法行為については検討しなかったのですが、それはなぜかというと、請負人を「使用者」とするのはさすがに難しいだろうと思ったからです(無理かどうかは分かりません)。

ですが、今思うと、不法行為責任を否定したうえで、なぜ債務不履行と不法行為で結論が変わるのかについて捕捉できれば良かったのではないかと思います。

再現答案
第一 設問1
1まず、AがCに対し、保証債務の履行を請求するためには、どのような主張をする必要があるか。
(1) 保証債務の履行を請求するためには、保証契約の締結とそれが書面によりなされたことを主張する必要がある(446条1項)。また、保証債務の附従性(448条参照)から、保証契約の締結を主張するにあたっては主債務の発生原因事実を主張しなければならない。
 そして、本件では、保証契約の締結は、代理形式でなされている。代理の要件事実は顕名、法律行為、これに先立つ代理権の授与であるが、無権代理人に対し本人が事後的に追認した本件事案においては、代理権の授与に代えて本人の追認を主張すべきである。以上より、Aが本件で主張すべき事実は、①主債務の発生原因事実、②顕名、③法律行為、④本人の追認、⑤保証契約が書面でなされたことに該当する具体的な事実である。
(2) したがって、Aは、①平成22年6月11日、AがBに対して甲土地を代金6000万円で売ったこと、②保証契約書にBがCの代理人である旨を示して署名をすることで顕名を行ったこと、③①の売買契約に基づきBが負う代金債務についてCが連帯して保証する旨を示す保証契約書をBがAとともに作成することで、BがAとの間で保証契約を締結したこと、④Cが、Aに電話で連帯保証人になることに異存はないと告げることで追認を行ったこと、⑤AとBが③の保証契約を書面の作成を通じて行ったこと、という事実を主張する必要がある。
2 そうだとしても、本件保証契約書は、契約締結当時無権代理人であったBにより作成されたものであるから、「書面」(446条2項)にあたらないのではないかという問題点により、上記主張の正当性に疑問が生じる。
(1) そもそも、446条2項が書面の作成を要求した趣旨は、保証人が重い責任を負いうることから、書面の作成を通じて保証意思を明確にする点にある。そうであれば、書面作成当時無権代理人であった者が作成した書面であっても、書面を確認したうえで追認を行うことを通じて本人の保証意思が明確になっているといえるのであれば「書面」に該当すると考える。
(2) 本件では、BはCに対し、契約内容が記載された契約書を示したうえで、締結した契約の内容とその経緯を説明しているから、Cはもし自分が負うことになる債務の内容を正確に理解したといえる。このため、Cは軽はずみな気持ちでは追認をすることはできなくなっていた。また、本人に直接口頭で追認の意思表示をすれば、相手に契約の有効性に関する期待を持たせることになる以上、もはや後戻りはできないことは、Cも十分理解していたはずである。にもかかわらず、Cは、あえて契約の相手方であるAに対して電話をして追認をしていることから、Cの保証意思は明確になっていたといえる。
(3) よって、本件書面も「書面」に該当する。以上より、Aの主張は正当である。
第二 設問2
1 Bは、Eに支払った報酬に相当する金銭の支払をFに求めるために、以下のようにFの債務不履行責任を主張することが考えられる。
(1) まず、Fは善管注意義務(400条、616条、597条1項)の内容として、賃貸目的物を破損を生じさせない義務を負う。にもかかわらず、丙建物の一部に亀裂が生じており、かかる義務に対する違反が認められるから、債務の不履行が認められる。
(2) また、たしかにかかる亀裂を生じさせたのはHであるから、Fには過失が無く、Fに帰責事由が認められないとも思える。しかし、契約関係に入った当事者は信義則(1条2項)の支配する緊密な関係に立つことから、履行補助者の過失は信義則上債務者の過失と同視され、債務者の帰責事由に含まれると考える。Hは履行補助者にあたるところ、亀裂はHが誤って生じさせたものである以上、Hに過失が認められ、これがFの過失と同視される。したがって、Fには帰責事由が認められる。
(3) そして、BにはEに支払った報酬に相当する金銭額につき「損害」が生じており、これと上記債務不履行の間には因果関係がある。
(4) よって、Fは債務不履行責任を負う。
2 Fは、以下のように主張することが考えられる。
(1) まず、H建物に生じた亀裂の修繕費用は、「必要費」(608条1項)として賃貸人の負担すべきものであるから、これを支出したことはBの「損害」にあたらない。
(2) また、以下のような理由から、HはFの履行補助者にあたらず、帰責事由が認められない。
 履行補助者とは、債務者が自分の債務の一部をかわりに履行させるため、自己の手足として利用するものをいう。Hは請負人であることから、独立性があり、Fが「自己の手足として」利用できるものではない。また、賃貸目的物の内装工事は賃借人が賃貸人に対して負う債務ではないから、HはFの「債務の一部」をかわりに履行しているわけではない。したがって、HはFの履行補助者にあたらない。
 Hの独立性に照らすと、Hはいわゆる履行代行者に近い立場にあり、Bの承諾がある本件事案においてはFにHに対する選任監督上過失が無い限りはFの帰責事由は認められない。Hは飲食店の内装工事を専門とする業者であるから、FがHを選任したことに過失は無い。また、FはHと共に内装の仕様及び施行方法を検討しており、不適切な工事を防止するための努力をしているから、Fに監督上の過失もなかった。
 したがって、Fに帰責事由は認められない。
3 では、いずれの主張が認められるか。
(1) 「必要費」(608条1項)とは、目的物を使用収益可能な状態に維持するために必要な費用のうち、賃借人の帰責事由によらずに生じたものである。このため、本件修繕費用の「必要費」該当性は、結局Fの帰責事由の有無に依存する。
(2) では、Fに帰責事由が認められるか。
ア Fの主張は、①Hの独立性と②HとFの債務の非同質性からHの履行補助者性を否定し、③Bの承諾を根拠にFの帰責事由を限定するものである。しかし、そもそも、履行補助者の過失を債務者の過失と同視し、債務者の帰責事由に含まれるとする根拠は、信義則にあった。信義則は、民法の究極のり理念である公平を実現するための原則である。そうであれば、他人の過失が債務者の帰責事由に含まれるか否かについては、①他人の独立性、②債務の同質性、③承諾の有無等に拘泥することなく、当該他人の過失を債権者と債務者のいずれに負担に帰することが公平かによって決すべきであると考える。
イ 賃貸人は、目的物を通常の使用収益に適した状態にして賃借人に引き渡せば足りるのであって、コーヒーショップとしての利用という具体的な使用収益を可能にするために内装工事を行うことまでは賃貸人の役目ではない。このため、かかる内装工事での出来事は賃借人の支配領域内にあるといえるから、内装工事の過程で生じた他人の過失については、①その他人の独立性の有無や②債務の同質性いかんにかかわらず、賃借人の負担に帰することが公平であるといえる。また、③Bの承諾については、工事を行うことを認めるという趣旨のものにすぎず、工事の過程で生じた他人の過失について自分の負担に帰することを認める趣旨まで含むものではないと考えられるから、上記結論を左右しない。
ウ よって、Hの過失はFの帰責事由に含まれるといえるため、Bの主張が正当である。なお、このように考えても、FはHに対して請負人の担保責任(634条)を追求できるから、Fに酷ではない。
第三 設問3
1 Gが報酬相当額の支払いをBに対し請求する権利を有するのは、外気が吹き込む状態で建物を利用することはできず、これを修繕するための費用は「必要費」(608条1項)にあたるためである。これによって、GのBに対する必要費償還請求権が発生する。
2 次に、Gは以下のようにして、判例の射程は本件事案に及ばないと主張すべきである。
(1) 判例は、「相殺することに対する賃借人の期待を物上代位の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はない」ことを理由とするものである。そうであれば、相殺への期待を優先すべき特段の事情がある場合には、判例の射程は及ばず、賃借人は抵当権者による差押後も抵当権登記後に発生した債権を自働債権として賃料債権との相殺を行うことができると考える。
(2) 判例の事案で主張された自働債権は、現在継続中の賃貸借契約ではなく、すでに終了した賃貸借契約との関係で発生した保証金返還請求権である。これに対し、本件事案における自働債権は、現在継続中の賃貸借契約から生じた必要費償還請求権である。
 賃貸借契約が継続的契約であり、出来る限り金銭を実際に手渡す労力を省略したいと考えるのが通常であることに照らせば、現在継続中の賃貸借契約から生じた債権については、賃料と適時相殺されたものと期待することが通常である。
 そうであれば、現在継続中の賃貸借契約から生じた債権を自働債権とする賃料債権との相殺への期待は、そうでない債権を自働債権とするものより強いといえる。
 したがって、本件事案においては、判例の事案よりも相殺に対する期待が強く、相殺への期待を優先すべき特段の事情があるといえる。
(3) よって、判例の射程は本件には及ばず、相殺できる。