第一 設問1
1 処分とは、公権力の主体たる国または地方公共団体の行う行為のうち、直接国民の権利義務を変動することが法律上認められているものをいう。C県知事の行為はC県に帰属するため、本件認可は地方公共団体たるC県の行う行為といえる。したがって、本件認可が法律上、直接国民の権利義務を変動するものであれば、本件認可は処分にあたることになる。
2 C組合の行政主体性について
C組合には、組合員に対する賦課金の賦課徴収権限や(40条1)これを怠った場合の過怠金の賦課権限(40条4)が与えられいる。また、組合員がこれらの納付を怠った場合、市町村に対しその徴収を申請したり(41条1)、場合によっては自ら滞納処分をする権限(40条4)が与えられている。これらの権限は、一方的に国民に対して義務を課すものであり、行政主体にのみ認められうるものである。このような行政主体特有の権限が本件組合に与えられているということは、本件組合は行政主体としての法的性質を与えられていると考えるべきである。
3 C県側の「下級行政機関である本件組合に対する本件認可は、処分には該当しない」との考え方について
(1) 都道府県知事は組合に対して必要な限度において報告若しくは資料の提出を求め、又は必要な勧告、助言若しくは援助をすることができるとされている(123条1項)。また、都道府県知事は、監督上必要がある場合においては、組合の事業又は会計の状況を検査することが出来るとされている。このように、都道府県知事の組合に対する様々な監督権限が付与されていることに照らせば、都道府県知事と本件組合は上級行政庁と下級行政庁という関係にあると考えるべきである。
(2) 上級行政庁による下級行政庁に対する認可等の行為は、行政の内部的行為であり、原則として処分性を有しないと考えられている。C県側としては、本件認可も上級行政庁たるC県知事による、下級行政庁たる本件組合に対する行為なのであるから、処分性が否定されると考えているものと思われる。
(3) しかし、行政の内部的行為が原則として処分性を否定されるのは、それが通常外部的効果、すなわち国民に対する直接的な権利変動を伴わないからである。そうであれば、たとえ行政庁の内部的行為であっても、それが国民の権利義務を直接変動させるものである場合には、処分性が認められると考える。
(4) これを本問についてみるに、本件組合は強制加入団体であるという法的性質を有しているのであり(25条)、組合員に脱退の自由はない。そして、法は組合に対して、賦課金につき強制徴収を行う権限を与えているところ(41条1項、4項)、補助金の増額や事業資金の借入れ等様々な対応を行ってもなお事業費不足が生じているという状況に照らせば、組合にとって組合員からの賦課金の徴収は是非とも必要であるのだから、組合は強制徴収権限を確実に行使すると考えられる。
そうであれば、本件認可は、脱退の自由の無い組合員を、確実に賦課金を徴収される地位に立たせるものであり、このような意味において本件認可は直接国民の権利義務を変動させるものといえる。
したがって、本件認可には処分性が認められる。
4 「条例の制定行為に処分性が認められないのと同様に、本件認可は処分に該当するものではありません」との主張について
(1) この主張は、市町村が土地区画整理事業を行う場合に制定される条例と、組合がこれを行う場合になされる本件認可は対応関係にあるところ、条例に処分性が否定される以上、同様に本件認可の性分性も否定されるはずだという考え方に依拠するものであると考えられる。すなわち、この考え方は、ある行為の処分性は、これと対応関係にある行為の処分性の有無を基準に決すべきであるとの考え方である。
市長村営土地区画整理事業計画決定の処分性が問題になった判例も、国営又は都道府県営の土地改良事業における「事業決定」には処分性が認められるところ、市町村営土地改良事業における「土地改良事業計画決定」はこれに対応するものであるため、処分性が認められると判断している。
(2) しかし、対応関係にある行為の処分性の有無は、法の仕組みを探る上で一つの参考にはなるであろうが、絶対的な基準にはなりえない。上述の通り、本件認可は組合員の権利義務を直接変動させるものである以上は、やはり処分性が認められると考えるべきである。
5 以上より、本件認可には処分性が認められる。
第二 設問2について
1 適法とする法律論
(1) 賦課金の徴収も法律上認められた権限なのであるから(40条1)、賦課金の徴収によって事業の遂行が可能であるならば「経済的基礎」(39条2項、21条1項4号)とはいえない。
(2) 賦課金の額が「公平」(39条2項、21条1項2号、40条2)か否かは宅地の地積等を考慮して実質的に決せられるべきであるところ、政策的見地から小規模宅地所有者につき賦課金を免除することもなお実質的平等の範囲内であり「公平」といえる。
(3) 白紙のままの書面議決権書500通は、理事Dへの白紙委任がなされたものであるから、Dが後でこれらに賛成の記載をしていたことは何ら問題とならない。
(4) 賦課金の算定方法の違法性が本件認可の違法性をもたらすわけではないから、結局本件認可は適法である。
2 違法とする法律論
(1) 賦課金の徴収に事業費のほとんどを依存するような状況下では「経済的基礎」を欠くといわざるをえない。
(2) あまりに特定少数の者に多くの負担を課す場合には、「公平」を欠くと言わざるを得ない。
(3) 白紙委任と解する明確な根拠は無い。
(4) 賦課金の算定方法と本件認可には密接な関係性があるから、前者の違法は後者の違法をもたらす。
3 私の考え
(1) 「経済的基礎」を欠くかどうか
ア たしかに、適法論がいうように、「経済的基礎」を欠くか否かを法律上認められた権限である賦課金の賦課徴収権限を一切無視することは、方の仕組みを無視するものであり適切でない。しかし、本件組合は強制加入団体であり、組合員には脱退の自由が無いため組合員の経済的負担はなるべく小さくすべきであるし、賦課金への過度の異存は事業の不合理性を推認させる。
そこで、事業の遂行が賦課金に過度に依存している場合には、「経済的基礎」を欠くものであると考える。
イ 本問では、事業計画が7度も繰り返されており、補助金の増額や事業資金の借入れによっても事業費不足が生じていることから、組合独自の財源は枯渇し、もはや賦課金に過度に依存せざるを得ない状況にあったといえる。
ウ よって「経済的基礎」を欠く。
(2) 「公平」かどうか
ア たしかに、適法論がいうように、「公平」とは実質的平等を意味すると考えられるが、実質的平等実現のための形式的不平等にも限度がある。
イ 本件のように、全体のわずか20パーセントにしかみたない少数の組合員に、15億円全額を負担させるという重大な不平等が生じており、不平等採取り扱いが限度を超えている。
ウ したがって、「公平」とはいえない。
(3) 白紙委任か
組合員は、書面または代理人を持って議決権を行使出来るとされており(38条3項)、白紙のままの議決権行使書面の提出は書面による議決権行使としてなされたものであった可能性がある(白紙である以上書面による議決権行使としては無効となる)。にもかかわらず、勝手に理事Dを代理人とする白紙委任と解することは、組合員の意思を不当に歪曲しかねず妥当でない。このため、違法論がいうように白紙委任と解する根拠は無く、Dの行為は違法である。
(4)賦課金の算定方法の違法性が本件認可にひきつがれるか
本件認可は、賦課金の算定方法を前提に認可の要件を充足するか否かを判断するのだから、違法論がいうように両者の間には密接な関係性がある。このため、ひきつがれると考える。