北陸新幹線と観光列車「花嫁のれん」から読む地方振興モデル | 是徒然也

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北陸地域内需の掘り起こしと東京間外交からの国家観光資源へ

2015年3月14日に長野ー金沢間を結ぶ北陸新幹線がついに開業される。
日本の玄関となる東京と金沢が直結することで、
北陸への外国人観光客の誘導が期待されている。
また、同年10月より実施される北陸デスティネーションキャンペーンに合わせて、
豪華な七尾観光列車「花嫁のれん」が新規導入されることで、
金沢ー和倉温泉駅間の移動を華やかに演出することで地域振興を図ろうと画策されている。

東京五輪が地域振興を後押しする

北陸新幹線の画像
画像:「北陸新幹線」の外観イメージ(出展:北陸新幹線 SPECIAL SITE

北陸新幹線について、着工中の金沢ー敦賀間の開業を2022年、
金沢ー福井間の延伸を2020年へそれぞれ前倒しすることを、
政府・与党がつい先日の1/7に発表し、大きな話題になっている。
またこれとは別に、整備新幹線の北海道新幹線・新函館北斗-札幌の開業時期については、現行計画(35年度)から5年前倒しする方針を打ち上げ、
2020年開催予定の東京五輪に向け、国内観光網を駆け足で整備している様子が伺え、
いつの間にか「アベノミクス 三本目の矢」に取り込まれた東京五輪と合わせて、
国内の地域振興を急ぎ足で図ったものと考えられる。
<新幹線>福井延伸前倒し 20年五輪目指す


上記の記事では1月14日にまとめる予定の合意文書に「福井駅の先行利用」を盛り込み、
先行開業の調査費(福井駅周辺の車両基地の必要性、乗り換え方法)を
15年度予算案に盛り込むことを視野に入れている、とある。
また北陸新幹線・金沢-敦賀間と北海道新幹線・新函館北斗-札幌の前倒しに必要となる財源に
約5400億円が国費として投入されることが決定されており、
さらに金沢-福井間の先行開業には追加費用も随時、財源を確保していくという。


東京五輪2020のオフィシャルロゴ画像
すでに東京五輪のために国が確保した財源は、
主にメインスタジアムの建設費用として計上した歳出は約3600億円にものぼり、
北海道新幹線と北陸新幹線の建設費用と合わせれば約1兆円に達する。

2013年9月にみずほ総合研究所が試算した東京五輪の経済効果は直接的経済波及効果として3.1兆円に達するとされていたが、
その後の2014年1月に公表された竹中平蔵慶大教授が所長を務める森記念財団都市戦略研究所の試算では、直接的経済波及効果以外にも付随する関節的経済波及効果(竹中氏はソフトパワー効果と呼んでいる)も含めると19兆4千億円にものぼるとのことだ。

市民団体によるリニア中央新幹線の検証文書ではその巨額な建設費9兆300億円と、
環境破壊や特に採算性に対して強い懸念と反対意見が多く読み取れるが、
東京五輪で得られる経済波及効果を正とする向きで考えれば、
10兆円にも上る東京五輪関係の公共事業としての費用は、
仮に追加費用としてその1.5倍に当たる15兆円として換算してもPayすることができるという主張に繫がるが、
この試算された経済効果はあくまで規制緩和などを達成したり、
東京五輪への期待感からの関連消費に名を付けた「ドリーム効果」が、
期待どおりに波及することが前提となっているために、
仮に東京五輪開催までの期間で施行される消費税増税や世界金融不安によるインフレが起こると、
その試算は水泡に帰すことになると容易に考えられる。


そしてビル・ゲイツを初めとする世界的な経営者たちに読まれているThe Economistの記事においても、
高速鉄道に対しては常にコストと採算性について論争が起きると書かれている。
アメリカのカリフォルニア高速鉄道においても納税者たちから税金の無駄遣いと非難されたとも。
ただし欧州委員会は300ー800kmほどの距離における都市間を行き来する場合には、
他の主な輸送手段よりも移動効率が高くと環境負荷は少ないと主張しており、
高速鉄道に対して積極的であるようだ。


北陸振興のために導入される観光列車「花嫁のれん

七尾線観光列車「花嫁のれん」の外観イメージ画像
画像:七尾線観光列車「花嫁のれん」の外観イメージ(出展:北陸新幹線 SPECIAL SITE

画像のように豪華なデザインのこの列車が、七尾線観光列車「花嫁のれん」。
平成27年10月から始まる北陸デスティネーションキャンペーンに合わせて
七尾線(金沢~和倉温泉駅間)に導入する観光列車の目玉だ。

車両デザインを担当されたのは、
近畿日本鉄道「しまかぜ」のデザインを担当した山内陸平氏、井上昭二氏の両氏と、
かつてSuica自動改札機のあの形状を作り上げた山本俊治氏。

昨年投稿した豪華列車「ななつ星」の兄弟列車で行く、信濃路旅!!でも取り上げたが、
豪華列車とその地方の観光資源を活用した独自のトラベルサービスを切り口に、
地元ボランティアも巻き込んだ地方振興活動へ繋げてようとしている。
こうした事例が今後の地方振興型ビジネスモデルを生み出すキッカケになって欲しい。

なお、この列車の詳細な情報については以下のサイトをご参照頂き、ここでは割愛する。

  1. 北陸新幹線 SPECIAL SITE
  2. 北陸を代表する「七尾線観光列車」について(イメージムービーの掲載あり)
  3. 七尾観光列車「花嫁のれん」の詳細資料(PDFファイル)


花嫁のれん」の由来が列車にストーリーという付加価値を与える

七尾線観光列車「花嫁のれん」の客室内イメージ画像
画像:七尾線観光列車「花嫁のれん」の客室内(出展:北陸新幹線 SPECIAL SITE

画像:花嫁のれんのイメージ(出展:北陸新幹線 SPECIAL SITE

花嫁のれんとは、婚礼の際に娘の幸せを願って、
色鮮やかなのれんを嫁ぐ娘に持たせるという、
幕末より明治にかけて始まった旧加賀藩の風習なのだそう。
この列車には、デザインコンセプトである「和と美のおもてなし」の魅力に加え、
「花嫁のれん」に込められた女性の幸せを願う思いを「幸」というキーワードでつなぎ、
旅の魅力を提供したいという思いが込められているとのこと。


こうしたストーリーを列車のデザインと関連させることで、
列車の乗客が車内外のデザインから旧加賀藩へのイメージを連想させ、
目的地となる和倉温泉への期待感とともに、
列車での過ごし方が単なる移動という味気ないものから、
加賀の歴史や文化を堪能し、話題として会話を楽しめる時間へ変えてくれる。
こうした体験が豊かな時間を生み、長く記憶や想い出として深く留められ、
利用者による口コミへ転換され、ブランド化されていき、
新たな利用者の呼び込みとリピーターの確保に繋がっていく。

既存の地方資源を”再生”する現代の地域振興

列車が単なる移動手段から観光対象や目的になるーー。
これは既存の価値を拡張し、新たな価値へと変換した、
すなわちイノベーションであり、
輸送機関であれば、バスやタクシーなどでも同様な価値転換の機会がある。

Web時代になり、Google Mapで全世界のストリートビューで、
その街や場所の様子を画像や映像で視覚による体験はできる。

しかし、その場所の空気感や太陽の下で直接見て、漂う匂いを嗅いで、
そこにあるものを直接肌で触れてみなければ、鮮明な記憶として留まらない。

地域振興はそこへ行かなければ体験できない、
その土地や地域が持つ資源の価値を創造し直すこと。
豪華列車による地域振興の事例がそれを教えてくれている。


観光列車をもっと知りたい・探したいための一冊

以下に、観光列車や豪華列車について紹介されたり、
特集記事が乗せられた書籍を一部、ご紹介する。
これから各地へ列車旅をお考えの方へ、
その列車の魅力を知る上での助けとなれば幸いである。


観光列車の書籍一覧
書籍名 書籍の写真 金額(円)
日本全国 話題の観光列車大集合 (JTBの交通ムック) 1,512円
旅が10倍面白くなる観光列車―SLからイベント列車まで (平凡社新書) 821円
乗車ルポ!  最新豪華列車の旅 (NEKO MOOK) 980円
最高に贅沢な旅 憧れの寝台列車 (JTBの交通ムック) 1,512円