のらねこ物語 ~ 厄日 ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

 

公園組にとって

日曜は厄日

祭日も春休みも夏休みも、人間の休みは猫のみんなの厄日

 

 

今日も頑張る《かぎすけくん》

 

 

かぎすけ (きょうこしょ まじょの おひじゃに のるじょ!)

 

 

 

かぎすけ (がんばるからね)

 

 

 

かぎすけ 「ちじゅのしゅけさん・・」

 

ちずのすけ 「なんだい?」

 

 

 

かぎすけ 「ぼくも おひじゃに のりたいです おねがい します~」 

 

ちずのすけ 「はい だめ!」

 

 

 

《ちすのすけ》に押されてベンチから落ちかけてる《かぎすけ》

《かぎすけ》のお尻は今日も魔女が手で支えていたし

 

 

 

そんなのんびりとした時間も束の間で

 

続々と公園に現れる幼児たちとその親

 

 

 

後ろのどなお 「こわいよぉ!」

 

かぎすけ 「いっぱい きた!」

 

ちずのすけ 「こっちからも きたぞ!」

 

かぎすけ 「おっきな こえ だしてる!」

 

もりだくさん 「きょうは そういう ひなのよ」

 

 

 

ちずのすけ 「それにしても このところ にんげん やってきすぎじゃねぇ?」

 

かぎすけ 「ぼくが さいしょに ここ きた ときは こんなに いなかったよ」

 

もりだくさん 「・・すごく いやだわ」

 

 

 

 

人はますます増えてゆき

小さな子供の甲高い奇声と、彼らが猫に向かって突進してくるのとで

それまで日向ぼっこをしていた猫たちはみんな逃げ出し

 

残ったのは魔女にしがみついた《ちずのすけ》と《つんでれ》だけになってしまった

 

長年ここに住んできた彼らにしてみれば

自分たちの住処をどくものか! という思いがあるのだろうが

残念なことに、公園は人のためのもの

 

だが、猫たちにしてみればそれは知らぬこと

 

 

 

ちずのすけ 「なんだよ あの にんげんたちは・・」

 

つんでれ 「うざい・・」

 

 

 

ちずのすけ 「まじょ いままでは こんなじゃ なかったよな」

 

つんでれ 「なんか・・ ぼく きょうは もう つかれちゃったな・・」

 

 

 

 

 

最も住みたい街(市) ・・ってなんだよ

 

そんなことでどこもかしこも家だらけになっちまったよ

小さな土地にいっぱい家を建てて

山も森も削ってしまって

動物の住処を片っ端から無くして

 

地元民はどんどん住みにくくなり

我が市独特の雰囲気や気性はすっかり希薄になり

 

車で道を譲っても礼さえ言えない人間が増えてゆき

風光もかつてと様変わりして今や港町とも思えない

 

新築の住宅は密集していてひたすら狭いだけ

ほんとうにこんな所に住みたいんですか?

 

 

魔女家から遠くに見える森の向こうから、昇る朝陽が見えていた

しかしここから200mほどのところに大きなマンションができていて

昇る朝陽が見えなくなった

 

隣のお化け屋敷には3軒の家が建築中だ

以前は一軒建っていた区画に、今では庭のない家が3軒建つ

 

 

そうして越してくるのは若い夫婦ばかりで

庭がないから小さな子供を連れて公園に来るわけだ

 

親御さんの中には猫に気を配ってくださる人もちゃんとおられる

しかし、気を遣ってくれる親の大抵は何故か母親ではなく、 父親という・・

 

 

 

 

公園横のここは 数年前まで桃源郷だった

 

 

 

春にはたくさんの種類の梅や、ずらりと並んだ河津桜、ソメイヨシノ、八重桜

2月から遅い春までの長い時期を、美しい風景を眺めながら公園組と魔女は長年過ごしてきた

 

 

 

河津桜の香りはほんとうに素晴らしく・・

 

 

 

 

そこもやむなく売らざるを得なくなり (よそ様の事情は書かないが)

元の持ち主の方が土地はお渡しするから、どうかこのまま保存を・・

と頼んだらしいのに

市は財政難だとか言ってここを売ってしまった

緑化推進地域だと記してあったのにも関わらず

 

自然を壊してまで金が欲しいか? 

情けないにもほどがある

 

観光場所に金をつぎ込みすぎなんじゃねぇ

そんなとこより地元住民の意向をしっかり聞きなさいよ

みんなも もううんざりだと言っている

 

カジノとかいらないし

バッカじゃないの?!

 

 

生きもののみんながゆとりをもって共存できる場所をつくろうと思わないかな

みなが住みやすい街をつくってこその行政でしょうが

 

 

あら・・ ちょっとイラついちゃったわ

 

 

 

 

12月の或る日

 

 

壊された果樹園の跡の住宅建築現場の端に、工事を見つめるひとりの老人の姿があった

 

 

 

その人は、故・果樹園に向かって掌を合わせておられた

 

 

 

涙が出たよ

古くからここの近くに住んでおられるこの方の・・

後ろ姿を見ながら泣けて仕方がなかった

 

 

忘れもしない

梅の蕾が膨らんできた冬のさ中

まさに花を咲かせようとしていた木々がショベルカーでなぎ倒れる悍ましい光景

 

蕾を持った桜も、その他の木々も

みんなの悲鳴が聞こえるようで 

あまりにも悲惨なその様子を見てはおれず

ぎゅっと目を瞑って掌を合わせ続けたあの日のこと

 

木々だけじゃない

これまでここにいた、そして今もここにいる子たちの多くは

果樹園で生まれ、そこで最期を迎えた

 

悲鳴は、何十本もの木々と彼らの心が合わさって

泣き崩れるほど悲しかったんだ

 

 

 

こうなると、あっという間に家が建つ

これは先週の写真だけど、今日はもうこの3倍の家が出来上がっていた

 

 

 

 

春には21戸の家に若い夫婦を中心とした人々が越して来るだろう

 

公園組はどうなってしまうのか

毎日それが心配でならない

 

そうなると

あの子たちが信じてやまない

『昨日と同じ今日』 は・・ もう来ない

 

今でさえ幼児の来園者が増えているのに、今後さらに増えるのは必至で・・

公園猫は大きなストレスを抱えこむことになる

そうしてここからいなくなる子も出てくるだろう

 

 

わかってるよ

人間のための公園なんだから、人が来るのは当然のことだって

 

 

それでもね

この10年の殆どの時間はここには猫たちしかいなくて

私たちは浮世から離れた美しい桃源郷を眺めながら長年を共に過ごしてきたんだ