公園物語 ~ 《オダギリくん》 ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

 

《オダギリくん》の上皮癌は進行しており

毎日が辛くてなりません

 

鼻先とその横の頬の部分はなくなり、

上の歯茎も壊死してしまいました

 

因って口が閉まらなくなってしまったこともあり

今週あたりから固形物が食べられなくなりました

たぶん口腔内までにも悪い物が侵蝕していると思われ、噛むともがくのと

皮膚の侵蝕により口が開いてしまって、食べ物を口内に納める事ができないからで

食べたい気持ちから懸命に食べ物を口に運ぶのですが、その殆どが零れ出てしまい

終には食べることに疲れ果てて俯いてしまう・・ 

 

そんな日々が続き、《オダギリくん》はもう缶詰やパウチ、ドライも食べなくなってしまいました

 

今はペーストや流動食を与えています

それだと舐めて飲み込めますから

 

 

嗅覚も衰え

食事を確認させるためには、剥がれた表皮のせいで丸出しになった鼻腔に食べ物を押し付けるしかなく

そうすることで気づき、やっと舐め始めます

 

真皮が剝き出しになった患部は痛くはないのでくっ付いてしまったペーストは拭いてやる事も出来ます

けれど、大方の場合、《オダギリくん》は自分で拭き取ります

ただ、その際に手で擦るので患部から出血し、血がぽたぽた垂れる事もこともります

 

また、鼻腔が顕になっているせいで空気が直接当たるため

クシャミが止まらなくなります

一度クシャミが出るとそれがたて続き、血しぶきをあげながらクシャミを続けます

 

 

周囲の皮膚がなくなって常に口が開いてしまっている状態なので口からは涎が垂れ

それが首や胸を汚します

 

閉められない口からの涎と、手でもって食べ物で汚れた顔を洗うのと、その時出血で口のまわりと手は非常に汚れていますので

毎日顎から胸にかけて涎で固まった毛を解きほぐし、動物用ウェットティッシュで根気よく拭き取ります

しかし十分にきれいすることはできません

 

 

目は毎日拭いてやらないと目やにで開かなくなります

 

癌は右目から1.5cm、左目から2cmのところまで侵蝕してきていて

目を触られるのを異常に嫌がります

しかしこのところは我慢をして拭かせてくれます

目が見えないと大変ですから、これは必死で《オダギリくん》を説得をしました

 

体重も減り、体力も落ちてしまって

いつも飛び乗る短い斜面も危なっかしい状態です

 

 

 

 

 

2週間程前だったか

その朝も雨で

他の猫さんたちと共に濡れて待っているだろう《オダギリくん》にタオルを、と思い

そこにあった魔女がいつも手を拭いているタオルを取り急ぎバッグに入れました

 

公園に行ってみると案の定みんなは濡れて待っていて

取り敢えず病気の《オダギリくんの》体を拭きました

他の子たちは濡れるのを厭いません

 

 

食事を終わらせ、ふと見ると《オダギリくん》がタオルの上で寝ておりました

帰る時間になってもそこで寝ているのでそのままにして帰りました

 

 

 

 

 

 

 

翌朝も《オダギリくん》はそのタオルの上で寝ていました

その翌朝も、また翌朝も

 

 

 

 

 

 

 

 

横殴りの雨が《オダギリくん》の体をびしょ濡れにしても、彼はそこから動きません

ご飯もタオルの上で食べます

 

タオルは日に日に汚れてゆきます

 

新品のタオルを持って来て

その上に寝かせ替えてても、《オダギリくん》はすぐにまたお気に入りのタオルの上に移動してしまいます

 

 

そんなある日

公園に行くとタオルが増えていました

 

 

 

 

 

 

 

その後、また一枚増えていました

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてまた一枚と、タオルは増えていきます

 

 

 

 

 

こうしてみんながね

《おだぎりくん》を案じているのです

 

ある女子高生は

膝の上の《おだぎりくん》を見て 「涙でる・・」  と呟きました

 

私に事情を尋ねる人も何人かおりました

 

公園に来る母子

幼い子供が《オダギリくん》の顔を覗き込み

「ねこちゃん、とまと たべたの?」 と話しかけています

そのお母さんは《オダギリくん》の頭を撫で 「頑張れ・・」 と励まします

 

 

今、《オダギリくん》を奇異の目で見る者は誰もおりません

 

みなが彼に優しい心を寄せてくれています

 

猫ボラさんたちも深く気にかけてくれています

6月の終りから《オダギリくん》が10日ほど公園から姿を消したことがあって

あの時は近隣の猫ボラさんさんたちが深夜まで大捜索をしてくれました

 

 

 

 

 

朝、公園に行くと

涎が垂れるのを極力防ぐために、常に顔を上げている《オダギリくん》に

タオルの縁を持ち上げて顎を乗せやすくしてあったり

 

顔の横に小さく千切ったパンが置かれていたり

またある時は唐揚げが置かれたりしています

 

 

役所及び管理事務所の職員の方々の理解と援助

伐採や改修等、出入りの業者さん方の優しさ

トイレ掃除のおじちゃんはいつもにこやかで

 

 

 

 

 

以前は、ここで猫にご飯をあげているだけで大声で怒鳴られ

猫たちに石を投げつけたり、BB弾で狙い打ちなど、虐待を繰り返す者

心無い飼い主は飼い犬を猫たちにけしかけ

 

タオルなぞ置いていこうものなら即刻捨てられ

猫たちの食べ物は踏みにじられ

水は容器ごと崖下に投げ捨てられたものでした

 

何度そんなひとでなしたちと喧嘩をしたことか

その度に猫たちは私の後ろに身を隠し震えていたものです

 

 

私は猫のことでの喧嘩では絶対に後には引かない

 

私との喧嘩に負け

恐ろしく気の強い女が公園にいる! と役所に怒鳴り込んだオヤジは無駄足を踏みました

 

 

こうした猫たちの生活の場所を確保するための壮絶な戦いは8年にも及び・・

 

 

 

気づくと世の中が変っておりました

 

 

《おだぎりくん》

ここに来る人間のみんながあなたに心を寄せ、思いやりを持って接しています

 

公園のみんなが耐えて、そして必死で守った自分の場所

 

みんな偉かった

決して諦めなかったもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨宿り