のらねこ物語 ~ マミーエプロン ~ Ⅰ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

 

 

 

鳴き続ける《ドナ》の赤ちゃんについてあげていたのは

《ドナ》の母親である《マミーエプロン》だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《マミーエプロン》にはとても悲しいお話があって・・

 

 

私はそれについて書くのが辛いし

またか、という話で悔しさも記さなければならないこともあるのだけれど

今の彼女のことを語るにはそれを書かないことには始まらない

 

 

 

昨年6月初め

自分が生んだ4にんの子供が少し大きくなり、おっぱいだけでは足りなくなった母親(マミーエプロン)は餌場がある公園に子供を連れて来た

それは当然ながら夜のことで

夜のご飯は例のお兄さんがあげている

 

母親に連れられた仔猫たちを見たお兄さんはこともあろうに公園猫たちがいる前で仔猫にご飯をあげてしまった

お腹を空かせた子はご飯に食いつくわけなのだが

 

見知らぬ仔猫がいることに警戒した若い公園猫たちが仔猫を退けようと追かけ始めた

仔猫の中のひとりはそこにあった木によじ登って追い詰められ

木から落ちて仰向け状態のまま動かなくなってしまった

背面から落下し、脊椎を損傷したのだ

 

このとき母親は、動けない子の側につききりで

その後人間が子供を抱えあげてもその場を離れなかった

公園猫ではないので、それまで人の近くでさえも寄ったことがなかったというのに

 

 

仕事中にお兄さんからの連絡を受け

取り敢えず猫ボラさんにこの子連れに行ってもらい、その夜遅くに魔女が引き取った

 

それからは仔猫を医者に診てもらいながら、時間のある限りこの子の世話に明け暮れる日々を過ごしていたが

面倒を見たいという人が現れ

今は《あおい》という名で家猫となって幸せに暮らしている

 

 

 

 

魔女が家で下半身不随になった仔猫の面倒を診始めて2日後のこと

住宅部東の駐車場で《たんぽぽ》たちにご飯をあげていると、ひとりの見知らぬ猫が現れた

じっとこちらを見詰めているのは・・  あの母親だ

 

私はそれまで母猫の姿を見た事はなかったのだが

お兄さんの写真で見た特徴のある顔はあの子の母親に違いなかった

 

魔女は少しだけ近寄り、しゃがんで言った

 

「あなたの子供の匂いがする? あの子は大丈夫だよ 私といっしょにいるからね」 

 

母親は逃げることもなく目の前でじっと私を見詰め続けた

 

「あなたの子供は元気です 心配しなくていいのよ」

 

 

その後、母親はゆっくりと立ち去った

こんなエリア違いのところまでやってきて・・

余程動かなくなった子供のことが心配だったのだろう

 

それにしてもどうして会ったこともない私のことがわかった?

 

猫は不思議

いつもそう思う

 

 

 

 

その後、母猫は用心しながら公園にご飯をもらいに来るようになったと聞く

しかしそれは夜に限られていて、昼間人前に姿を見せることはなかった

 

 

 

昨年の暮れ

お兄さんから その母親が自分に懐いたという話を聞き、避妊手術のため彼女の捕獲を頼んだ

 

しかし彼はそれを渋った

それはつまらない自身のプライドのためで

 

彼は猫の避妊、去勢手術や病気治療の支払いは一切しない

お金がないのか、払いたくないのか、何らかの事情があるのか

とにかく人の事情はどうでもいい

魔女にとっては猫の事情が最優先なのだから

 

これまでもすべての支払いは私がしてきたし

それで構わないと思っている

 

 

 

お兄さん 「手術代ですが・・」

 

魔女 「私が払うから」

 

お兄さん 「いや、魔女さんばかりに負担をかけられないから、どこか無料で手術をしてくれるところを探しますんで」

 

魔女 「そんなこと言ってられない、春になるとまた子供を産むんだよ」

 

お兄さん 「とにかく無料のところをさがすので待っていてください」

 

魔女 「半月しか待たないからね!」

 

 

 

その後お兄さんからは何の連絡もなく

業を煮やした私は捕獲器を置こうかと思ったが

あの用心深い母親より、警戒心がなく、食いしん坊の《ちずのすけ》や《オダギリくん》が入る確率の方が断然高く

中で暴れでもしたら大変なことになる

 

それで捕獲器での捕獲を諦めた

 

 

そうこうしているうちに既に冬は終わりかけていた

 

 

つづく