シャクラの物語 Ⅲ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

 

それから更に数日が過ぎ・・

 

 

彷徨い続けたシャクラは

目が殆ど見えなくなっておりました

どこをどう歩いたのかもわかりません

 

何かにぶつかっては方向を変え

またぶつかると向きを変え

そうしているうちに

自分がどんなところにいるのかもわからなくなり

疲れ果てて、足を踏み出すことも叶わなくなりなした

 

 

その夜

シャクラは終に一歩も歩けなくなってしまい

やっとの思いでやって来たその場で

くたんとうずくまるのです

 

 

自分は何のためにここに来たのか

既にそれを思う余裕もなく

これからどうなるのかを考える余地もなく

 

それは最期の時を迎えるかのような不思議な感覚であり

また 同時に、その小さな心に溢れるのは絶望でありました

 

 

朝が来て

自分に意識があることはわかりましたが

シャクラのには起き上がる力はもう残ってはいません

 

 

 

シャクラが動けなくなっていたところは大きな建物の駐車場でした

 

登校途中の子供たちがうずくまる小さな仔猫を発見します

 

彼らはうずくまる仔猫を見つけ、心配そうな顔をし、何度もその姿を振り返りながら学校に向かいました

 

 

 

そのうちシャクラの意識は遠のいて行きます

もう顔をもたげることももう出来なくなり・・

 

その間、何人もの人間が通りすがりましたが

だれもそんなシャクラに関わろうとはしませんでした

 

 

 

先ほどの子供たちが午後になって下校して来ました

朝と同じ場所で、今はコンクリの床におでこをくっつけて意識を失った仔猫を見つけた子供たちは騒ぎ出します

 

そんな子供たちの中にまじょの生徒がおりました

その子は急いで家に戻り、まじょに電話をします

 

 

まじょが駆けつけるまでの間

子供たちは仔猫を取り囲んで守っておりました

 

 

動かなくなった仔猫を

まじょは急いで抱き上げます

 

 

 

それは、確かにあの時の仔猫ではありましたが

 

最初に出会った時とはまったく異なった姿であったため

まじょはひどい衝撃を受けることになります

 

 

白かったはずの体毛は鼠色に変わっており

その所々にはどこでつけたのか黒い染みが点々として

 

さらにその顔は見る影もなく

目はどろどろとしたものが乾いた塊で硬く覆われ、瞼を開くことなど到底出来ず

どろどろとした物はシャクラの目だけでなく、シャクラの顔中に張り付いて

その乾いた部分がシャクラの顔を髑髏のように見せていました

 

シャクラはもはや猫どころか、生きものの顔ではなくなっておりました

 

 

 

骨と皮だけのようになってしまった仔猫は片手の掌に収まるほどの小ささで

しかし、乗せているのがわからないほどに軽く

けれども、痩せた体から突き出た刺さるような骨の感触は

そこに確かに仔猫がいることを示しておりました

 

 

まじょは仔猫を胸に抱え、後悔の念で溢れる涙を拭う事もせず

そのまま車を医者のもとに走らせます

 

 

その途中でシャクラの目を覆っているものを必死で剥がします

このままでは失明してしまう

その一心で無理矢理にも張り付いた塊を剥がすのでした

 

 

生きてください

 

こんな姿のまま逝かせる訳にはいかない

 

どうか生きて

生きて少しでも幸せを感じてください

 

まじょは仔猫を抱え

ひたすらそればかりを念じておりました