さて、昨日の続きです
意外なことに、引きこもりの《ボンネット》が《ふぁふぁ》を誘う
それも相当にしつこく
《ふぁふぁ》のゲージの前に散々おもちゃを並べ立て
出ておいでよ～、とそればかり
《ボンネット》って、こんな子だっけ・・
挙句、上からベッドを潰して無理矢理《ふぁふぁ》を出そうとし
魔女に叱られた《ボンネット》は部屋の隅に行ってしまった
《ひな》が乗っても大丈夫なように天板は紐で括ったし
《ボンネット》は叱れてしょんぼくれている
それで安心して出かけたのがいけなかった
夕方帰ってみると
《ふぁふぁ》のベッドの３分の２ほどががゲージから出され・・
ゲージの扉の幅より《ふぁふぁ》のベッドの幅の方が大きく
それを無理矢理引っ張り出したようで
最後に《ふぁふぁ》の入ったベッドは扉の入り口に引っ掛かって
両端はくちゃくちゃになって止まっていた
しかも、そこで止まってしまったことが気に入らなかったらしく
《ボンネット》はベッド内に敷いているフリースを引っぱって、そこに寝ている《ふぁふぁ》をフリースごと出そうとしたようで
ゲージからはみ出たベッドから、さらに敷物のフリースの殆どが外に出されていた
当然ベッドはその口に咥えて引きずり出すしかなく
《ボンネット》は渾身の力を振り絞ってベッドを引っぱり
それがダメとなると、今度はフリースを必死で引っぱったのだろうが
自分の目の前で繰り広げられる
ベッドの裾を咥えたり、自分が敷いているフリースを引っ張り出すという《ボンネット》の必死さに
《ふぁふぁ》は大いなる恐怖を覚えたようで
中途半端に引っ張り出されて敷物が失せたベッドの奥で目を見開いて固まっていた
そんな《ふぁふぁ》の廻りには・・ おもちゃがいっぱい散乱しており
《ボンネット》・・
面倒をみたいという気持はよぉ～くわかった
一生懸命なのもわかった
でも・・ もうやめてくれ！
魔女は《ふぁふぁ》の入ったベッドをゲージに戻し、扉を閉めてベッドの入り口を布で覆った
その夜
ゲージからベッドごと《ふぁふぁ》を出し、それを抱えて、アトリエに向かった
《ボンネット》が後を追って来て、目を三角にし、高く悲しい声で叫んだけれど
無視した
こうして《ふぁふぁ》はアトリエに戻った
当分はひとりでのんびり暮らした方がいいと思ってね
猫は余程寒いときでない限り、ひとりでいるのは平気だし、気楽だから
そうして魔女も自分のベッドに潜り込んだわけなのだが
突然２階のリビングが騒々しくなる
まじょねこの、多分全員が部屋中をドタドタと走り回る音が聞こえる
そのうちガシャン！とか、 バタン！！とか ドテン！！とか
不吉な音が響き始めた
それは延々と果てしなく続き
魔女は頭まで布団を被った
明日の朝が怖かった
惨憺たるリビングの様子が容易に想像出来たから
まじょねこ軍団は
《ふぁふぁ》が同じ部屋に来てからというもの、みんな大人しく過ごし続けた
初めての《ふぁふぁ》を怖がらせないよう、怯えさせないよう、みんなが一日中我慢をしていたのだ
それから開放された発散が無礼講という形となって、今リビングを襲っている
絶え間なく続くどっちゃんがっちゃんという音が遠くに聞こえ始め
魔女は諦めという眠りに陥っていた
決して迎えたくなかった翌朝
恐る恐るにリビングのドアを開けると
そこには案の定な風景が広がっていた
机の上のものは落とされ
掃除機は倒され
ゴミ箱は転がされて、その中身はそこらじゅうに散らかされ
受話器は外れ、子機は床の上
壁のカレンダーまで床に落とされている
台所を覗くと
散乱したキッチンペーパーが床を覆い
引き出しの全てが引っぱり出され、その中身も引っぱり出され
調理道具はもとより、割り箸やストロー、ナプキン類まで床に落とされて・・
猫砂は引きずりまわしたもよう
そしてシンクの蛇口からは水がちょろちょろ・・
シンクの中にはどうしてそこにあるのか・・
麻縄が投げ込まれ（《ふぁふぁ》の脱走防止に使ったものと思われるが、キッチンには置いてなかったぞ）
そして、その麻縄はちょろちょろと出された水に浸っていた
キッチンペーパーをズタボロにしたのは《インドラ》で
引き出しを引っ掻き回したのは《凜》
麻縄をシンクに放り込んだのは《インドラ》で
それに水を駆けたのは《凜》だ
それ以外は誰が何をどうしたのかわからない
魔女は一気に疲れ
何故か可笑しくなった
わかりやすい子たちだ
《ふぁふぁ》が移動したアトリエには《ユリぼうず》や《インドラ》が訪ねてくれるし
それに魔女の教室がある時、《ふぁふぁ》はリビングで過ごす
リビングではこうしていることもあるし
こうしていることもある
これがちょうどいいのかな