奇跡の猫たち Ⅱ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください


この話は今年4月に遡り

《キリット君》の突然の不調から始まることになります



4月19日

《キリット君》が突然吐き、以来一切の食べ物を受け付けなくなった


病院に連れて行っても原因がはっきりしない

食べないままではいけないので、強制食餌をさせながら原因を探ることになった


その後、血液検査もしたが、はっきりとした原因がわからないまま一ヶ月が過ぎた


注射器で与える食事量などタカが知れている

太っていた《キリット君》は日に日に痩せていった


軍団も心配のあまり、毎日《キリット君》を取り囲んで寝ている


かかりつけの病院の先生と話し合って

原因を特定する為に高度医療センターで検査をすることになった


ここまでは当時のブログで書いたことだ




検査は午前から始まり、昼をまたいでなされた

検査自体はレントゲンと血液検査だったのだが、その結果判定に時間が掛かった


その間、私は弱っている《キリット君》のストレスが気になって仕方がなかった



午後になって医師に呼ばれ、病室に入った

キャリーバッグの中の《キリット君》がぐったりした感じだったのを覚えている


原因が判明した


《キリット君》はコロナウィルスに侵されていた


コロナウィルスに侵されたなら助かる道はない

目の前が真っ暗になる


それに追い討ちをかけるように獣医師が言った言葉は

今も鮮明に頭に響く


「全員隔離!!」  



つまり

コロナウィルスを発症した猫と1ヶ月以上も共に暮らしていたとなれば

まじょねこ軍団への感染は逃れられない


即刻に全員をひとりずつ隔離することで

運がよければ生き残る猫がいるかも知れない


・・そううことだ



《キリット君》の入ったバッグを抱えながら

魔女は、そして一緒に行った家族②は

ひとことの言葉を交わすこともなく帰路に着いた


頭の中が熱せられているような、凍らされているような

何をどう考えればよいのかもわからず、なにもまとまらないままに



《キリット君》はもう助からないということ


まじょねこ軍団の生存が危ういということ


わかっているのはそれだけで

その事実をどう受け止め、これからどうしたらいいのか・・



《キリット君》をリビングの隣室にゲージを置いてそこに隔離した


すると、殆ど動けなくなっていたはずの《キリット君》が 「ここから だして!」 と、暴れ始めた


まだこんな力が残っていたのかと驚き

ゲージの扉を開けて《キリット君》をそこから出す

しかし、もう軍団と一緒にさせてやるわけにはいかないくて・・


私は《キリット君》を抱きしめて、どうかこの部屋で我慢して、 と頼んだ

《キリット君》はわかってくれたみたいで、リビングとそこを隔てるドアの前に横たわった


この1ヶ月間の《キリット君》がかわいそうで

無理に食事を与えてしまったことに深い後悔を覚えながら

溜まってしまった腹水がこれ以上増える前に楽にしてやりたいと、そればかりを思った


そして私は、息苦しくなってゆく《キリット君》を抱えて安楽死を考え始めていた



さらに、軍団全員をひとりずつ隔離しなければならない


どうやって・・



その時私の目に映ったのは

《キリット君》が横たわっているドアの反対側にまじょねこ軍団がいて

彼らは厚さ3cmの扉を挟んで互いに寄り添っていた・・



軍団を・・   引き離すことはできない


私はそれを悟った


私たち家族は軍団の全員隔離をやめて、これまで通り共に暮らす道を選んだ



この二日後に

《キリット君》は虹の橋を渡ってしまった


トイレに残された、小さな、小さな、うんちを見た時

涙が堰を切ったように溢れ出た


この7ヶ月間の《キリット君》の様々な顔つきが頭に浮かんでは消えていった



《キリット君》が虹の橋を渡った翌日

詳細な検査結果が報告された


ウィルスの値は通常の数倍もあり、信じ難いほどの数値を示していた


その値に心臓は高鳴り

明日の色も消えうせてしまった私たちだったが


それでも、まじょねこ軍団とこれまで通りに暮らす決意は揺らがなかった


それは

泥沼のような決意であり

絶望の決意であり

到底出来得るわけもない覚悟を、それでもしなければならないという地獄を見るような決意だった



つづく