公園物語 ~吹雪の中のふたり~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください


それは元旦のこと


いつもより高級なご飯を持って公園に出向き

大き目のベンチにご飯を広げ

それを御節と称してのらねこ軍団に食べさせていた


穏やかな元旦を期待していたのに

この時は折りしも吹雪で


背中に粉雪を積もらせて食事をする彼らが不憫で

風の向かう方に立ち、彼らを雪から庇おうとするも

雪は四方八方から吹き込んで、魔女のやることなぞ何の意味もなさなかった



食事も終わる頃


雪の中を、向うから一頭のマメシバを連れたオヤジがやって来るのが見えた



突然のらねこ軍団が警戒する



あれがマメシバオヤジか・・


私は遭遇したことはなかったが、噂は何度か聞いていた


そのオヤジは猫に向かって石を投げるのだという話だ


ある女性は

つい先日、そのオヤジが猫を油断させ、30センチほどのところまで近づいたかと思うと

いきなりのらちゃんに石を投げつける場面を見たと言う



のらちゃんの中にもおっとりした子が何匹かいて

人が近づいてもなかなか逃げ出さない子がいる


その点ああ見えて《くろまるこ》は賢く

しっかりと人を見分けるし、用心深い


一方、とてもフレンドリーな《ちずのすけ》や、おっとりしている《サンボ》などは被害に遭いやすい



最近《ちずのすけ》の様子が変わって

やたら人を恐れるようになった


《キリット》も、以前ここで暮らしていた頃

人好きだったのが、ある日を境に人間を恐れるようになった


実際、魔女が生徒たちと公園清掃そしている時

《キリット君》がどこかのオヤジに石を投げられたと言っていたことがある



聞いていた特長からしても、このオヤジに間違いない・・



私は雪の舞う中、犬を連れて歩いて来るオヤジを目で追った


案の定オヤジは猫たちがいるのを確認したようで

魔女が一緒にいるにもかかわらずこちらに近づいてきた


何匹かの猫は既に逃げ出し

他の子は椅子の下に潜り込んで身を隠した


吹雪きで視界が悪い中

オヤジは椅子の下を覗き込むようにして側までやって来た


猫に何かしたら、恐ろしい魔女の反撃を食らうとも知らずに・・



私は手ぐすねを引いていた

私は目撃談なぞ話すつもりはない


今回は目撃だけでは済まないからねぇ


どう値踏みしても一撃で倒せる相手だし



いよいよオヤジが近づいたその時

一匹の猫が椅子の下から飛び出してきた


それは《サンボ》で


《サンボ》は椅子に飛び乗り、私の膝を飛び越えて

オヤジの前に立った


小柄ながらその目はしっかりと相手を睨みつけ、さらにオヤジが近づいても一歩も引かない



魔女は立ち上がった


《サンボ》がひどい目に遭う前にコイツを倒さねば



立ち上がった魔女を見上げたオヤジは

5秒ほど私を凝視していた後・・


目を伏せてゆるゆると後ずさった



雪を舞い散らす風のせいで

魔女の長い髪は頭から四方八方へと束になって巻き上がり

そうして恐ろしい目でオヤジを睨んでいて


魔女の前には・・ 図らずも舌を出す猫



オヤジは目を伏せたままゆっくりと後ずさり・・

その後は私がいるのと反対側に首を捻って足早に立ち去った


なにか・・

悪いものでも見てしまったという態で、吹雪の中に消えていった



《サンボ》は私をかばった

私の前に立ち、身を挺してオヤジからかばってくれた


犬が人間をかばうというのは聞いたことがあるが

猫も人間をかばうんだ・・



《サンボ》、ありがとうね


魔女は背中に雪を乗っけた小さな《サンボ》を抱きしめた


この時もやはり、 《サンボ》は舌を出したままだった・・




       

魔女が帰る時 「もう茂みに戻りなさい」 と言っても言うことを聞かず、椅子の下でいつまでも見送ってくれる《サンボ》