《涼子》
久し振りに日記を言うわよ
私、困ってるの
だってさ、のんびりした廊下暮らしを満喫してたのに
いろんな猫が加わって
《アゾ》はまあいいの
武闘派だけど、ほとんどは さとーさんちの庭で修行してるから
《アゾ》の次に廊下に来たのは《バブ》ね
この子は大人しいし、先輩の私の邪魔にならないようわきまえて暮らしてるからオッケーよ
そして、いつの間にか現れた《パパ・ジョン》
ま、弱っちいけど、私の言うことはちゃんと聞くし、シェキュリティーで役に立ってるし
一緒にいてあげてもいいよ・・
問題はやかましい《かって》と、ぶっさいくなタヌキよ!
邪魔くさいったらありゃしない!!
タヌキのせいで最近来なくなっちゃったんじゃない? 《風太》・・
この子はいい子だったよ
私、気に入ってたもん
※ 《風太》が最近来ないのは、隣と前の土地に合わせて3軒の家の建築がやかましく始まったからであって、《タヌ吉》とは関係ありません・・ と思います
伐 「それにしても驚いたよな、この家のまわり、前と全然違っちゃってる」
インジゴ 「私も驚いた、ここ来る時、みんなしてちょっと迷いそうになったもん」
伐 「昔は良かったな、毎日みんなでテッケテケ梅林に散歩に行ってさ」
ジョン ブリアン 「テニスコートも行ったね」
インジゴ 「空き地もいっぱいあった」
伐 「今じゃどこもないじゃん・・」
私 「そうよ、住みにくい世の中になったものだわよ、まったく・・」
バブ 「おぼんは、人間と住んでた子たちだけが帰って来るの?」
伐 「そんなことはないさ、みんな自分が生きてて一番楽しかったところに帰るんだから」
バブ 「それは森とかでも?」
インジゴ 「町に帰る、っていう子もいたよ」
アゾ 「む、む、むっ!」
私 「わかった! 『無理じゃろ』、って 言いたいんでしょ」
アゾ 「た、たわけ! むっかえびは どうするんじゃ! って《あじょ》は言いたいんだろ?」
私 「自分の言いたいこと、私に聞かないでくれる?!」
伐 「迎え火がなくても帰れるんだよ」
アゾ 「じゃ、じゃ、じゃあ!」
私 「 『じゃあ何で迎え火をたくんじゃ!』 って言いたいんでしょ」
アゾ 「み、みなまで言うな! おろか者めがっ」
私 「あんたがさっさと言わないからでしょうよ!」
アゾ 「なんじゃとお~~~!!」
パパ・ジョン ブリアン 「ふたりとも やめなよ」
伐 「迎え火は念のため、ってのと、人間のしきたりでやってるのさ」
バブ 「じゃあ、人間と一緒に暮らしてなくても、お盆にはのらちゃんたちも楽しかったところに帰って来るんだね」
インジゴ 「人間と住んでたけどそこに帰らない子もいるよ」
私 「どうして?!」
インジゴ 「生まれて暮らした中で一番楽しかったところに帰るからだよ」
伐 「そうさ、ニャバーランドにいた飼われてた子も、お盆はのら時代に一緒だった仲間のところに帰るって言ってたぞ」
私 「人間の家族、待ってるんじゃない?」
インジゴ 「そうだよねぇ・・」
伐 「猫がしてもらいたいことと、人間が猫にしてあげたいことがすれ違うこともあるしさ」
私 「どういうこと?」
伐 「例えば最期の時とか・・ 俺も落ち着いてからわかったんだけど、俺ら猫はそれが最期とは知らない。 だからニャバーランドに行くつもりもない。 とにかくひとりになりたいだけなんだ。 そうなると可愛がってくれる家族さえうっとおしくなっちゃう。
だけど人間は病気の猫が可愛そうで一緒にいてあげたい、って人間の気持ちで思うんだよね」
インジゴ 「猫は病気やケガでほんとうに具合が悪い時はまわりにいるものがみんな悪者に見えちゃうんだよ・・ だからそんな時はひとりにして放っておいてくれた方が辛い中でも安心するの」
ジョン ブリアン 「僕が 『ひとりにして』、って頼んだ時、家族①は他の軍団を全員をリビングから違う部屋に移して、僕だけをコタツに入れて誰からも見えなくして、誰にも会わせないでくれた。 そして気がつくとぼくはいつの間にか虹の橋を渡ってた・・ 自分が辛いことを誰かのせいにしないで虹の橋を渡れたこと、僕は家族②にすごく感謝してるんだ」
アゾ 「《い、いんじょご》も そうだったのか?」
インジゴ 「具合が悪いな、辛いな、って思った時にはやっぱり何日も隠れたよ
でもなんかすごく変な感じがして、さいごに一回だけ魔女に会いたくなって出てった・・
その後、もの凄く苦しくなって、しばらく苦しんでて、 やっと楽になったな・・ って思ったらニャバーランドにいたの」
※ 《インジゴ》は安楽死でした
ジョン ブリアン 「猫には猫の尊厳死があるんだよね」
パパ・ジョン ブリアン 「あの・・ ぼく そういう はなし つらいです」
インジゴ 「辛かった話だって、私たちこうしてふつうに話せるようになったんだから」
伐 「とにかくさ、お盆はね、自分が一番幸せを感じてたところに帰るんだよ、ってこと!」
かって 「そうして生きてる時には辛い事ばかりだった子はみんなここに来て騒いでりゃいい、って話ですね!」
私 「なんであんたがここにいるのよ!」
かって 「一応家族ですから ね~、《ジョンさん》 」
アゾ 「なぐるじょ! おしゃべり おねえめがっ!」
かって 「きゃ~! 《アゾさん》が こわ~い」
私 「あんた、もしニャバーランドに行ったらお盆はどこに帰るつもりさ!」
かって 「ここで~す! 《ジョンさん》と一緒にかえりま~す 」
ジョン ブリアン 「・・」
パパ・ジョン ブリアン 「《かって》、 ぼくの むすこに かまうな・・」
タヌ吉 「おぼんって なんですか?」
バブ 「出たっ!」
伐 「あぁ、君が《タヌ吉君》だね、 まじょねこ軍団とはもう喧嘩してないんだろうね」
タヌ吉 「このところ いっさい してません」
伐 「偉いじゃないか」
タヌ吉 「けんか すると まじょが ごはんを くれないんで・・」
伐 「あ、そういうことね じゃあ君はそこで参加してなさい」
タヌ吉 「はい」
伐 「ところで兄さん、魔女はどこ行ったの?」
パパ・ジョン ブリアン 「かぞくちぃさんの いえに はなび みに いったよ」
ジョン ブリアン 「ねえ、月がとっても綺麗だよ! 僕たちも屋根に登ってお月見しようよ!」
私 「賛成ー!」
それで私たちはみんなしてドヤドヤと外に出て
ぴょんぴょんと車を伝い、家の屋根に登った
お月様はすっごく輝いていて
私たちは屋根のてっぺんにずらりと並んでお月見をした
タヌ吉 「あの・・ ちょっと しつもんが あります」
私 「なんなのよ・・」
タヌ吉 「・・こちらの ねこさんたち いったい どなたなんですか?」
みんな 「・・ ・・ ・・」
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今朝見たら
車のボンネットにも、屋根も
無数の猫の足跡が・・
参ったぜ
あまりのひどさに洗車しちゃったよ
そしたら雨になったし・・
さあ、今日はこれから送り火だ
あっという間の3泊4日・・
賑やかだった魔女家が急に淋しくなっちゃう