《ジンジン》
魔女と家族①の留守中
家族②の厳しい指導の下、《インドラ》がカリカリを食べるようになった
魔女たちがいない最初の日の朝
家族②がみんなにカリカリをあげてた時
《インドラ》はいつものようにそれを食べないで缶詰を待っていた
だけど《インドラ》のお茶碗には無情にもカリカリが入れられてしまったんだ
《インドラ》は泣きそうな顔でカリカリを見つめた
家族②が《インドラ》に 「食べな」 って勧めて
《インドラ》が家族②に向かって、小さな声で 「かんづめ・・」 って言った
すると家族②が 「そんな我儘を言うなら食べなくていい!」 って言ったんだ
家族②が仕事に行った後
《インドラ》はひゃーひゃー泣きながら部屋の中を果てしなく歩き回った
僕 「《インドラ》、いつまでそうやってる泣いてる気なんだ・・」
インドラ 「かんずめ くれるまで」
僕 「缶詰じゃなくて日がくれるぞ」
インドラ 「日はくれないでいいから かんづめをくれてほしい」
凛 「家族②は魔女みたいに甘くないわよ、私、経験で知ってるんだから」
僕 「そうだよ、そんなことしてたら飢え死にしちゃうぞ」
インドラ 「うえじになんてしない! だって夜だけは かんづめだもん」
凛 「でも魔女みたいに好きなだけはくれないと思うよ、朝も夜食もちゃんと食べておかなきゃ一日一食になっちゃうよ」
僕 「悪いことは言わない、とにかくカリカリでも何でも我慢して食べることだ」
インドラ 「」
僕 「いくら泣いたって魔女はいないんだぞ!」
僕らの勧めで《インドラ》は渋々カリカリを食べ始めた
お腹が減ってどうしようもなかったんだ
それで家族②に凄く褒められてた
《インドラ》は魔女がいない間、朝に夜食にちゃんとカリカリを食べた
家族②はさらに《インドラ》を褒めた
僕たちもまた、《インドラ》がカリカリを食べられるようになったことをみんなで褒めた
すると《インドラ》は嬉しそうな感じにした
そんな日々が続いて、遂に魔女が帰って来た
家族②はとっても嬉しそうな顔をして、《インドラ》がカリカリを食べるようになったことを魔女に報告した
帰って来た日も、疲れ顔の魔女の代わりに僕らは家族②から夕食や夜食をもらった
《インドラ》はちゃんと夜食のカリカリも食べた
次の朝、魔女が起きてこないから
やっぱり家族②が朝食のカリカリをくれた
家族②が見守る中、《インドラ》はそれもきちんと食べた
そうして家族②が仕事に出掛けた後
お日様が木の横を照らすくらいになってやっと魔女が起きてきた
いつも通り寝起きでバカのような顔をしてぼんやり座っている魔女のまん前に
トコトコと《インドラ》がやって来て座り、じっと魔女の顔を見つめた
《インドラ》がキリッとした上目づかいで魔女を見つめて姿勢を正して
魔女は目の前の《インドラ》をぼんやりとした下目づかいで見ていた
そして・・
そしたら・・
突然《インドラ》が
魔女に向かって さっき食べたカリカリを全部吐いた
その一部は魔女の膝にもかかり・・
僕らは全員その場で固まった
それから少しして
魔女は黙って立ち上がり・・
その時、膝にかかったブツの一部がボロりと床に落ちたんだけどね
魔女はそれをまたいで台所に行き
缶詰を開けて、それを《インドラ》のお茶碗に入れ
《インドラ》の前に置いた
このひと吐きで・・
魔女がいない間の家族②の努力というか、躾っていうか
そういうののすべてが無になったわけだ