ライガーのこと Ⅱ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

弱ってゆく《ライガー》に

私は自分の首にしていた聖地、ムクティナラヤンで授かった聖なる紐を結んだ


《ライガー》はやせ細り、毛は乱れ、艶もなくなり、顔も手も汚れきっていった


《ライガー》が眠り込んでいる隙にそっとお湯で顔や手を拭く日々

ちゃんと綺麗にはできないけど・・


そんな弱りきった《ライガー》に少しでも体力をつけなければ


それには先ず食事だ


なるべく噛まずに済む、身が細かくて柔らかい缶詰をあげるが食べようとしない

だが、それを手で食べさせると少しずつだが食べてくれる

顔を落として食べると口内炎が疼くのかな・・


それでもじきにいらないと言い出す


この時点で、まだ《ライガー》が食べようとするものが残っていた


それは猫のおやつ、『カニカマドライ』と、《ユリぼうず》のストルバイトケアのドライ


療法食であるストルバイトケア以外の普通のカリカリは全く口にしない

それを言うと病院の先生は苦笑いをしながら 「あげちゃって」 と言う

何も食べないのならいた仕方ない、というところだろう


だが、歯茎が腫れて噛めない《ライガー》にはそれを飲み込むしかなく

咥えることも出来ないから舌で口に運ぼうとするのでその殆どが食器から床に溢れ出るばかりだ


残るは大好きなカニカマドライ

それを細かくちぎってあげるとその多少を自から食べる

しかしもっと食べたい気持ちはあっても固いので途中で嫌になる


猫15匹を抱える魔女家にはカニカマドライは高価でそればかりを食べさせる余裕もないし、ましてやそれだけでは栄養も偏る


そこで家族①が考え出した食事が、身の柔らかい缶詰にカニカマドライを細かくちぎって混ぜたもの

そうすれば水分を含んでカニカマが柔らかくなり食やすくもなる

《ライガー》はカニカマを食べたい一心でそのご飯を手から飲み込む


それを続けているうちにだいぶ食べられるようになってきた

しかし少しずつしか口にできない《ライガー》の食事に掛かる時間は30分以上

本猫が 「もういい」 と言うまで側に付いて食べさせる


とっくに食べ終わった他の猫たちが《ライガー》のまわりに集まる


「いいな・・」 「いいな・・」  みんなが口を揃えて言う


みんなも大好きなカニカマドライが食べたくて仕方がないのだ


だけど猫はすてきな性格で

《ライガー》だけ、ずるい! とか 《ライガー》だけ、いいな、というふうには思わない


ただ・・ いいな、いいな、 って、 よだれを垂らして見つめるだけ


毎朝、毎夕・・ 《いいな、いいな、軍団》が《ライガー》のまわりを囲んで見つめる中

それがまるで応援歌に聞こえるかのように自らも頑張り始める《ライガー》



9月、魔女と家族①は話し合っていた

旅行に行く直前に《ライガー》にインターフェロンを打って行こうね、って


そうして相変わらず毎日カニカマドライ入のご飯を根気よく、時間を掛けて食べさせ続けた



食事時間は大変だ

お代わり!の声が乱れ飛び、《ライガー》にばかりついていてやれない

早食いで食べ終わった子が遅い子の茶碗に顔を突っ込むのを止めながら《ライガー》を気にして足りない子につぎ足す


廊下組は廊下組で

《バブー》が《かって》にご飯を取られたと泣く


そんな《かって》を《パパ・ジョン ブリアン》がボコし

ボコしている間に《パパ・ジョン ブリアン》のご飯を《涼子》が食べちゃって戻ってきた《パパ・ジョン ブリアン》を愕然とさせる


《アゾ》が 「おかわりを持ってきまっせい!」 と階段の手すりで喚く


そのうち舞い戻って来た《かって》と《アゾ》が、手すりで一騎打ちとなり、《かって》が負けて下に突き落とされる


それが日常で・・


家族①がいる時は手分けして何とかできるが

魔女が一人の時はもう大変


そうして最後は 《いいな、いいな、軍団》に囲まれた《ライガー》に食事をさせて終了

1回の軍団の食事に何だかんだで1時間近くを要する


だけど、《ライガー》の食事途中で他の用事をしても、《いいな、いいな、軍団》はそこに置かれた《ライガー》のご飯を誰も食べたりはしない


ただよだれを垂らして目の前のカニカマ入りご飯を穴が空くほど見つめているだけ


みんな、《ライガー》のこと、ちゃんとわかってる


猫って凄いな

猫ってなんて愛らしい生きものなんだ


つづく