歴史に押し潰された人々 | まじょねこ日記

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魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください

旅の日記から逸れてしまうが・・

ここでちょっとカースト制度について書かせてもらってよろしいか


興味のない方はスルーしてください




ネパールのカースト制は1854年にラナ王朝のジャング・バハドゥール・ラナによって制定された『ムルキ・アイン』という民法典による社会構造だ


カーストは4階層に分けられ


第一階層のタガダリは 「聖なる紐を持つ者」 「二度誕生しる者」 として バウン、チェトリ族などが挙げられる

また、デオバジュというネワール族の司祭もここに入る


第二階層のマトワリは {酒を飲む者} この階層は2つに分けられており

「カーストを失うことのないマトワリ」(ネワールの各カースト・マガル・グルン) 

「カーストを失いうるマトワリ」(ボテェア・リンブー・シェルパ・クマルなど)


第三階層は 「水を受けることが出来ない・触れても清める必要はない」 (ムスリム・カサイ・クスレなど)


第四階層は 「水を受けることが出来ない・触れたら聖水で清めなければならない」 (サルキ・カミ・ガイネ・ダマイなど)


こうして仕分けられた人々は職業を決められている

例えば

上級階層のバウン(ブラーマン)はヒンドゥー司祭階級、チェトリはヒンドゥー武士階級

第二階層のクマルというのは壺作りだ

第三階層のカサイは屠殺業

第四階層のサルキは皮なめし、カミは鍛冶屋


という具合だ


皆様には聞きなれない言葉ばかりだろうが

とにかくこうして下層に行くほど多くの民族、職業に別けられている


ただ、昨今はその限りでなく、土地持ちが多いバウンでもお金を活かして商店や工場を営む者もいるし、下層階級に人々の職業も綯交ぜになっている

しかしその身分が変わることは決してない


失業率が4割を超えるネパールでは、国内に就業を求めるのことを諦めた若者を中心とする男性たちが働き口を国外に求め、現在300~400万のネパール人が海外で働いている


因みにネパールの人口は約3000万人

その中で女性、年寄り、子供を外せば、この国の男性の何割が海外就労をしているか

これは驚くべき数字だ



話が逸れてしまったが

ネパールの人々は、それぞれがこうしたカーストの下、その苗字で分けられてこの160年近くを生きてきた

名を名乗ればその人のカーストがわかるのだ


問題はこの160年という歴史の中にある

下層にあたる、特に不浄階層(第三階層以下)とカースト外の扱いを受ける人々は

その縛られた中にあってもそれなりに生きる道を模索し、今日に至っている



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国連でも差別問題が取り上げられ、インド、ネパール政府も法の下、国民は全て平等と定めている

しかしその上下関係は生活の中の慣習化されており、実社会は変わりはしない

それで160年互いの身の置きどころを弁えて現実社会をある意味バランス良く築いて来たのだから、一朝一夕に彼らの意識を変えられるはずもないのだ


だが勿論、ダリットの人々に対する仕打ちは話が別だ

これは社会構築ではなく、厳然とした嫌がらせに過ぎないのだから、どのような状況の下でも決して許してはならない



話を戻して

今、カースト制度を無くすとしたら、この国は混沌としてしまうだろう


悪しき差別制度とは言え、長きに渡った身分別の生活は人々の意識をそれなりに定着させてしまった


社会は恵む者と恵まれる者とに別れ

恵まれる者は私たちで言うところのプライドを失い、恵まれるのが当然と考える

余裕のある者が、余裕のない自分たちに金や物を恵むのは当たり前という意識だ


私の友人たちには高カーストの人間も多い

彼らは、この身分差別は間違っていると認識し、このままではこの国は世界から立ち遅れると懸念しながらも、自分の力で人生を切り開こうとしない彼ら低カーストの人間をどう扱っていいかわからない状態だ


カースト制度は低カーストの人間の意識をこのように変えてしまった


ことほど左様に、カースト問題は根が深くて

先進国がこのような差別反対を唱えるのは簡単だが

それはあくまでも他国からの視点であって、それはただのきれい事と私は思う


カースト制度の意識はそう簡単にはなくならないし

もし今一気にそれをなくせば、返って混乱を招くだけなのだ


親から子へと流れ続けてきた、恵んで貰うのが当たり前、という下層階層の人々の考えを変えない限り、社会を変えるのは無理だと私は思う



過疎の村で学校建設や支援をする外国人団体もある

しかし村人は彼らが途中で支援を打ち切る、と訴える


それはあなたがたが援助を受けることばかりを要求し、自分たちが努力をしないからだ、と私は答える

外国人と彼らの意識のすれ違いはお互いの戸惑いを生むだけで・・ 要求と供給の間に存在する意識のすれ違いが要因となって物事は消滅する


人間の意識を変えるということは非常に難しい


そこで学校

学校はそういった階層の子供たちに勉強だけでなく、彼らの意識を変えることを教えなければならない

それが教育の本質


しかし貧しさがそれを阻む


それでも中の数人が人としてのプライドを取り戻して行けば・・

少しずつでも世の中は変わるのではないか


実際、ダリットの女性たちは立ち上がった

それは連鎖のように各地でフォーラムを築き始めている


恵んで貰い、簡単にお金を手に入れるのではなく

自ら働いてそれを手にするという教育を、私は望む


もっともっと教育支援が欲しい


しかし、地方に目が行かない政府

その殆どが高カーストの官僚で占められている


賄賂やコネが堂々とまかり通る政府

発覚以来、諸外国に金銭での援助を止められたネパール


以前は他国からの支援金で私腹を肥やしていた高官たちより、金を恵んでくれという人々の方がずっとマシだということを、恥知らずな政府の人間は悟るべきだ


いまだに国を変えられないのは

高カーストというだけで政治に携わっている彼らにもまた、プライドがないからなのだろう