カグベニ脱出 | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください



苛立たしい気持ちを抑えながら

いったいどのくらい待っただろうか・・


ネパールに 『ケェ ガルネ』 という言葉がある


どうしようもない、どうしたらいいかわからない  そんな時に発する言葉だ


『ケェ ガルネ』 魔女の頭の中で、その言葉が風車のように回り始めていた




そんな時、チケット売り場から声が掛かった


「ジョムソン! ジョムソン!」


ラクちゃんが再びチケット売り場に急ぎ、同様に他のネパール人たちも一斉に押しかけた


売り場の一番前を、ラクちゃんが眉間に皺を寄せて陣取る

私もラクちゃんの応援に行こうと思っていたその時


売り場小屋の横のドアを開け、誰かが係りの男達に声を荒げ気味に何かを言い始めた

見るといつの間にやって来たのか、先ほどの革ジャンの男性だ


彼は年の割に貫禄があり、どう見てもごく普通の男という風体ではなかった


男性は暫しチケット係りの男たちを怒鳴りつけるようにして何かを言い

それからゆっくりと人混みに紛れて立ち去った


少しして

ラクちゃんが飛び跳ねるように、然も満面の笑みでこちらに向かって走って来た



「魔女! 400ルピーだった! ジョムソンに行けるよ!!」 (400ルピー=約¥450)


「400ルピー・・って  3人で?」



3人で400ルピーって半端じゃねぇ?



「とにかく、これでジョムソンに行けるんだ!」 



この一瞬で、ラクちゃんの先程までの老人顔が一気に30歳程若返った


4500ルピー  400ルピー ・・


すんげえ若返り効果だな Σ(・ω・ノ)ノ!



私たちは踊るようにして、チケットに書かれた車体ナンバーの車を探し始めた


あった! 


・・だけどジープだよ


いいのか?  バスじゃなくてジープで?


ラクちゃんが 「いいんだよ!」 とはしゃぐ


運転手が車を停めたので乗り込んだ

チケット売り場が混み合っていたので大勢の人たちが乗り込むと思ってリュックを抱えて座席の端に寄った

このジープは詰めれば17人以上乗れる


するとラクちゃんが



何やってるんだ広々と使いな

これは僕たち3人のためのジープなんだぜ


すっごく威張り顔の自慢顔でそう言うのだ



マジっすか?!


それで400ルピーって、ゲキ安くないですか?



4500ルピーがジープ貸切で400ルピーになった・・


私たちは一列の座席にひとりずつ乗り、それぞれが前、中、後部座席ではしゃぎまくった



全てはあの革ジャンの男性の計らいだった


あの時、騒ぎ立てずちゃんと 「エクチン」 しておいて良かったなぁ

情けない顔はしとくもんだな



やっぱ・・ 情けな顔、役に立つんじゃん!!



それにしても誰? あの人

いったい何者?


ラクちゃんに聞いても、わからないと言う


何が何だかわからないうちに貸切ジープは走り出す


先ほどの革ジャンが人混みに紛れながらチラリとこちらを見て笑っているのが車窓から見えた



どこのどなたさんかは知らないけれど、本当にありがとうござんす


このご恩は、今のところ忘れてはおりません



カグベニを出発したジープはじきに河原に出た


・・河原?


道じゃなくて河原?


それは何? 運転手さんの趣味?


そんな私の思惑などお構いなしに、ジープは河原を、時には水飛沫を上げて突き進む




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           どっぷりと日が暮れた川原を爆走するジープ




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        乾季の川は水が少ないので浅い水の中までもガンガン走る



道は何のためにあるんだえ?


結局ジープは一度も道を出ることなく、延々と川を走り続け・・



そうして辿り着いたジョムソンでは

怪しい空模様から逃げるように、ヤギの群れが家路を急いでいた


あぁ・・ この安らぐ風景



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と思ったら・・



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      みなさんこれから何処へ?      ええ~! カグベニ?!



慌てたラクちゃんが


「カグベニに行ってもホテルはどこもいっぱいで泊まる所るなどないよ!」


と、伝えるも・・



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                    皆さんそれを無視



ラクちゃんは再三そう言ったが、それを信じないのか、はたまた覚悟の上なのか、誰も聞く耳を持たない


きっとみんな何もかも覚悟の上での弔いなんだろうね


私がそう言うと

ラクちゃんは、 「覚悟の上なもんか! あのバス乗り場で混乱する人間たちを見ただろう!!」


そして 「もう知らない!!」 と怒った



折しも冷たい雨が降り出し

それはもう止む気配もなく


辺りはすっかり暗くなり

私たちは雨よけにウィンドブレーカーのフードを被って街中に向かって宛もなく、しかし急ぎ足で歩いた


あぁ、宛などないさ

だって宿が決まってないんだもん