朝、目を覚ますとワンちゃんは相変わらず隣のベッドにいた
しかし眠ってはいない
先ほどから遠慮勝ちにゴソゴソと動いている
トイレに行きたかったのだ
だけど私は眠気が先にたってうとうとと眠り続けていた
やっと起き出してベッドから降りたら、ワンちゃんも立ち上がり私の足元にやって来てやはり遠慮勝ちに尻尾を振っている
ドアを開けてあげると一目散に外に飛び出した
相当我慢をしていたんだな・・ ごめんね
この日の空も青く晴れ上がり、森の中は木の香りを充満させた新鮮な空気に包まれていた
なんと気持ちの良い朝だろう
外に出て庭の花を眺めていたら
そのままどこかへ行ってしまうだろうと思っていたワンちゃんが、戻って来てくっついた
昨夜の夕食の食器を下げるのは明日でいいわ、と言っていたので
食器を下げに来たドルバがそんな様子を微笑みながら眺めている
「昨夜は私の部屋に泊まったんだよ」 というと
「おっほう! ムッシー、ルッシーの強敵が現れたね」 と大笑い
泊まったことを叱られると思い、気にしてるのかな・・
さあ、お待ち兼ね、朝食の時間だ
ワンちゃんも一緒に食べるかい?
私は朝食をいつもテラスでいただくことにしている
ふと目を上げると、この時期には滅多に見ることが出来ないヒマラヤが姿をみせてくれていた
いつ観ても美しいし、雄々しい
そして何よりもNAMIさんにヒマラヤを見せることが出来たのが嬉しかった
ドルバがやって来て春にヒマラヤが顔を出すなんて・・
ほんとうに魔女は幸運だね! と言った
春だから、山は少しうっすらとしてはいたけれど・・
これを観ながらの朝食は何にも換え難い贅沢であり、それがこのホテルの醍醐味だ
新鮮なフルーツにマンゴージュース そしてポットにはたっぷりのコーヒー
極端に小食のNAMIさんはワンちゃんと半分っこ
私たちは爽やかな空気に包まれ、眼前に壮大なヒマラヤを観ながら朝食に舌鼓を打った
食後は庭で松ぼっくり拾い
「魔女がまた松ぼっくり拾ってるよ・・」 って、みんなで笑ってるんでしょう
そんなこんなで昼に近くなり
ハッティバンともお別れだ
2泊だと2日目の昼間にスタッフのみんなとお茶を飲みながらバカ言ってふざけ合えるけど、1泊はそんな時間はない
また次回、ゆっくりとふざけましょう
ホテルの責任者、サイレンドラが昨日事務所で囁いた言葉
「今回はフリーだな・・」
・・フリー = ・・タダ?
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ドルバが部屋にやってきた
そしてマネージャーの言葉通り
「今回は多大な迷惑を掛けてしまったので、お金はいただけません、とオーナーが言っていますから」 と言う
ラッキー !!
でも・・
それでいいのか?
たった一組の客の為に部屋を用意し、食事を作り・・
こんなに良くして貰って、それじゃ申し訳ないよ! というNAMIさん
そこで二人からチップという形で些かを置いてきたけどね
帰り支度を整え、部屋のドアを閉めた
そんなドアの前には・・