ホテルの入り口には既にセキュリティーのクマルとボーイが待ち構えていた
たいしてない荷物をボーイが持ち
門に立つ左右の軍人を眺めながらホテルへの道を進む
フロントに着き、いつも通りドアを開ける
部屋のソファに座っていた5~6人の年配者が一斉に振り向く
その中で立ち上がった一人に見覚えがあったが・・ 誰だかわからない
おじいちゃんたち・・ 誰ですか
取り敢えず 「ナマステ~」
おじいちゃん達も 「ナマステ~」
そこへ慌てた様子で飛び込んで来たボーイ
「魔女! そっちじゃない! こっち、こっち!!」
なんでだよ・・
通されたのはレストラン脇の事務所
なんでだよ・・
マネージャーがいつもの笑顔で握手を求める
魔女 「ナマステ~、元気だったぁ~?」
マネージャー 「元気じゃな~い!」
なんでだよ・・
私の好物のフライドポテト(ネパール限定)とチャーが事務所のテーブルに運ばれた
![まじょねこ日記-Fried Potato](https://stat.ameba.jp/user_images/20120715/17/majo-cats/43/70/j/o0605045412080267831.jpg?caw=800)
その後マンゴージュースを運んで来たドルバが、呆れ顔で事務所から繋がる厨房のドアを指差した
そのドアの上半分はガラスになっており
そこから真っ赤な顔をしたコック長のプレムがこっちに向かって何回も投げキッスをしているぞ
それに呆れたマネージャーが通常は開けないそのドアを開けてくれた
「魔女お~!」
プレムが抱きついてきた
あちいよっ!!
プレムがほっぺを触ってみてよ、と言うので触ってみたら・・
あぢいよっ!
どおりで真っ赤な顔をしていると思った
プレム 「昨日からここで300人分の食事を作り通しなんだ・・」
魔女 「マジか! そりゃ大変だじゃないか!」
プレム 「もうへとへとだよ・・」
魔女 「かわいそうに」
プレム 「見てごらんよ・・」
小窓から厨房を覗くと、そこにはセキュリティーのクマルやハクシャ(あだ名)それに、メイドさんや庭師のおじさんまでもが借り出されて、野菜を刻んだり、皿を洗ったりしていた
みんな情けない笑顔を向け、包丁や野菜や皿を持った手を振る
何も持たずに手を振るのが申し訳なく感じてしまったから・・ フライドポテトでも持つか?
本部から来た、このホテルチェーンの幹部に紹介された
彼女は勝手な来賓である政府要人に手抜かりがあってはならないから気が張り詰めているものの、その笑顔に憔悴が見て取れた
マネージャが自分の椅子に座り、先ずは今回のキャンセルを謝リ、詳しい事情の説明を始めた
ネパールの首相を始めとする各パーティ(政党)が一同に集まって重要会議をするとの連絡が一昨日入った
それから予約客の全てをキャンセルした
一部屋くらいなら大丈夫だろう、と魔女には連絡しなかった
ところが国連の職員などもやってきたので思ったより大人数になり、部屋が足りないくらいになった
それで昨日魔女にキャンセルを申し出るしかなくなった
昨日から政府首脳の料理の他に、700人ほどの軍隊の中のホテル周辺を警備する300名の食事を朝、昼、間食、夜の度に作っている
もう大変な騒ぎさ・・
とのこと
どれだけ我儘な政府なんだ!!
そういう訳で、私が会うのを楽しみにしていたジャーマンシェパードの番犬?《ムッシー》、《ルッシー》の姉妹も、彼らの実家であるグンバおじさんのグンバに昨日の早朝から預けてあるとのこと
なにいーーー 《ムッシー》と《ルッシー》がいない~!!
どんだけ迷惑な政府なんだ!!
事務所には電話がひっきりなしに掛かって来るわ
みんな忙しそうだわ
午前中には帰るはずの首脳たちはだらだらしてまだ帰らないわ
レストランではまだ国連からやって来た人間とネパール政府との話が続いているわ
落ち着かないから・・ グンバに行って来る!
私はそう言って事務所に荷物を置いたまま、外の空気を吸いに出た
そこには軍隊がうじゃうじゃいて・・
私たちはその間を通り、門を出て、山の尾根沿いにグンバおじさんのグンバを目指した
美しい景色を見たり、牛を撫でながら空気の良い森をサンダル履きで歩く
グンバに到着
門の右手にある家から《ムッシー》と《ルッシー》の声が聞こえる
まだ子供の彼らは落ち着きなく、2階の窓から覗いたり、一階の閉まっているドアから出ようとしたりを繰り返した
寺守りの若者が出て来て
「ハッティバンは大変なことになってますね」 と優しい口調で眉を寄せる
グンバを拝見したいと言うと、鍵を持って来て扉を開けてくれた
ここにはもうグンバおじさんはいない
各地に新しいグンバを建設するため、遠くに行ってしまった
グンバ内
これはギー(純度の高いバター)で作られた飾り
ここの曼陀羅は以前にも紹介しました