野良猫物語 ~ 小さな命の誕生 ~ | まじょねこ日記

まじょねこ日記

魔女の大切な仲間の猫たちの日常をみてください


家族①は昨年7月、小さな2匹の仔猫が切り立った断崖を母親の後について必死で登っているのを目撃した

その光景はあまりに衝撃的であったようで、家族①の心に焼き付いて離れることはなかった


この猫の家族に関心を寄せた家族①は、その後も毎日のようにそこを訪れていた


私のブログでは住宅部北となっている

その住宅地の反対側が森に続く切り立った高い崖なのだ


当時、この親子は崖の上の森から住宅部に姿を現し始めていた



まじょねこ日記-Nora
        その後、2匹の子供たちは《バニャ1号》(右) 《バニャ2号》(左)と、

       そして彼らの母親(後方)は《おたえさん》と名付けられた 



        まじょねこ日記-Banya1
            昨年8月の画像  《バニャ1号》はこんなに小さかった


まじょねこ日記-Banya1
               茂みに隠れて母親の帰りを待っているところ



見守り続けて10ヶ月が経った今

親子はすっかり家族①に、そして私にも懐いていた


特に独り立ちをさせられてからの《バニャ1号》の家族①に対する懐きぶりは大変なもので

遠くから聞こえる足音だけでどこにいても走って来るようになっていた



先週のお話


家族① 「《バニャ1号》のおっぱいはうちの子たちと違ってとがってるんだよ」


魔女 「・・」


家族① 「聞いてる? みんなと違うのよ」


魔女 「・・それはお腹に赤ちゃんがいるのよ」


家族① 「えっ・・」


魔女 「そろそろ産まれるわよ」



それを聞いた家族①は心配の余り、夜だというのに森に出掛けて行った


暫くして・・ 

携帯の電話が鳴る



家族① 「《バニャ》(1号)が鳴きながらやって来た! 地面に血がついてる!!」


魔女 「もう産まれるわよ」


家族① 「どうしよう! 側を離れない!!」



まだ子供の《バニャ1号》は、ここまできても自分の体に何が起こってるか分かっていないようだった


初めての出産とはいえ、通常なら前もって安全な場所を探し出産に備えるのが猫の常だが

この子はそういうことが出来なかったようだ


体の変化を感じ、出産間近になって不安が最高潮に達していたところに

大好きな家族①が現れたことでその不安を訴える形になってしまったのだ


その後家族①は大急ぎでダンボールを用意し、中にタオルを敷いて

人気のない森の中に運び、そこに《バニャ1号》を入れた


また電話が鳴る



家族① 「大変だよ! 赤ちゃんが半分出てきてるのに《バニャ》が箱から出て暴れてる!」



電話からは家族①の慌てた声を掻き消すように《バニャ1号》の悲惨な鳴き声が響いている



家族① 「転げまわって悲鳴を上げながら苦しがってる! どうしよう、どうしよう このままじゃ赤ちゃんがつぶされちゃう!」


魔女 「あまりに転げまわるようなら押さえつけなさい」


家族① 「《バニャ》! 《バニャ》! お願いだから大人しくして!!」




電話の向うから《バニャ1号》を必死で落ち着かせようとする家族①の様子が伝わって来る



家族① 「赤ちゃんの頭が出ない!」


魔女 「慌てないで! 必ず出るから」


家族① 「あ、産まれた! 産まれたよ!!」



それから再び焦った声で言う



家族① 「赤ちゃんが動かない!」


魔女 「《バニャ》はどうしているの」


家族① 「頭が空っぽになったみたいにぼんやりしてる!」


魔女 「直ぐに子供の体を舐めさせるのよ! 赤ちゃんは膜を被っているからそれを破らせて臍の緒を切らせるの」


家族① 「わかった! やってみる!!」



そこで電話が切れた


その後、《バニャ1号》は必死の思いの家族①に声を掛けられ、我に返ったそうだ

そして産まれた子のを羊膜を破いて子供を取り出し、臍の緒を噛み切って子供を舐め始めた


その後、《バニャ1号》はもう一匹を産んだ

その時はちゃんとダンボールの中で足を踏ん張って産んだそうだ

2匹目は順調に産後の処理をし

子供たちは母親となった《バニャ1号》のおっぱいにすがりついているという


最初に産まれた子は白にかすかに薄茶が入っており

次に生まれた子は白黒だそうだ


先の電話を受けてから約2時間後にその報告の受けて

「《バニャ》もあなたも、ほんとうに良く頑張った」 と、私は告げた



ダンボールは深夜の森の彼らのテリトリーの範囲内で、雨の当たらない、人のやってこないところに置いて来たという



こうして家族①は毎日様子を見に行っている

この連休はそうやって過ごすのだろう


《バニャ1号》はちゃんと良いお母さんをやっているそうだ



生後1年にも満たない小さな猫が

自分の身に起こった運命を必死の思いで受け入れ

本能に則って懸命に子育てをしている


無邪気で幸せだった時期は束の間だった

母親に甘え、虫を追いかけ、日向ぼっこをして過ごしたのはほんの短い間だけで


生後半年もしないうちに独り立ちをさせられ

どうにか生き延びた先に待っていたのは過酷な冬だった


そうしてやっと巡って来た春

あどけない子供は早くも母親になった


小さな体で子供を舐めて排尿をさせ、授乳をさせ

少しだけ外の空気を吸おうと箱を出ても子供は母親を探して泣く

慌てて箱に戻り、わが子を抱いて安心させる


バニャ》は時々大きなため息をつく

疲れきった体を労わる方法は他にないかのように・・



家族①は、始めは自分の身に何が起こっているのかさえわからなかった猫が

戸惑い、苦しみながらも子供を産み

羊膜を破り、臍の緒を噛み切り、胎盤を食べ、仔猫を舐めて乾かし、そうして乳を与える

そんな生きものの本能の深さを知った


一方、それを目の当たりにしたことにより

そうした本能を失くした人間という動物にも驚愕するのだった



         出産翌日の画像  


                    (《バニャ1号》の許可を得て撮影させてもらいました)



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如何に過酷な運命だろうと

己の運命を受け入れるということは・・ 潔い


運命に抗って欲を出すのは動物の中でも人間だけだ


この心美しい動物達が幸せに暮らせる大地と環境を奪ったのも

私を含めて・・人間なのだ