《バブー》がこんな真剣な面持ちで人の話に耳を傾けている訳
それは私たちが、ティハールで賑わう街に繰り出そうか、って話をしているからで
以前はよく《バブー》を連れて街に出たものだ
一緒にダルバールスクェアを歩き回り、デパートにも入れてもらった
けれどそれはまだ《バブー》が子供だった頃の話で
このところは成長した《バブー》が他の犬と喧嘩になるのを懸念して遠出をしていない
どこに行くにもいつだって私と一緒だった《バブー》にはそれが不満だった
夜になると人々で溢れるティハール中の街を嫌がって、他の野良ちゃんたちは裏道に引っ込んでいるに違いない
《バブー》、久しぶりに一緒に繰り出そうか!
大喜びの《バブー》
じゃあ暗くなるまで待っててね
店の中では風邪っぴきのママが家族①の髪をチベット女性がやるように赤い糸を混ぜ込んだ三つ編みにし、腕には赤いガラスのチュラをはめてくれていて
外では相変わらず子供たちに構われ続ける《バブー》
この後調子に乗った男の子が《バブー》の耳元でおもちゃのピストルを鳴らし (小さな火薬の粒の入った紙を撃芯で鳴らすヤツ)
それに怒った私に追い掛け回され、散々逃げ回った挙句取っ捕まって殴られた
(友人アミタの結婚式で魔女と結婚する宣言をしてしまった恐いもの知らずの男子)
今か今かと街に繰り出すのを待つ《バブー》
よし! 《バブー》 みんなで街に繰り出すよ!