台風の日の野良猫軍団の様子はいつもと違っていた
何かに苛立っている様子で、あちこちで諍いの声が絶えない
やめなさい! と言うとすぐに止めるが、また少し経つと同じことを繰りかえす
そうかと思うとみんなが異常に甘ったれで、座り込んでいる魔女にべったりとくっついてくる
しかしそのべったり同士でまた喧嘩を始める
その夜は特に《オッドアイタ》が怒ったり甘えたりと、感情の起伏が激しかった
すがりつき君 「まじょ・・」 魔女 「なんだか疲れてるみたいだけど大丈夫?」
この台風で憔悴してしまった様子の《すがりつき君》
魔女が 「もう大丈夫だよ」 と声を掛けながら頭を撫でていると・・
《オッドアイタ》は魔女の側に来ようとする《黒丸》にも襲い掛かる
私は諍いを起こす《オッドアイタ》を何度も叱らなければならなかった
そして、叱られる度に《アッドアイタ》は何を思ってか私にしがみついた
私の手を乱暴に引き寄せ嚙んだりしたため、指から血が出た
私がわざと痛そうにしてみせると、《オッドアイタ》はひどくしょんぼりし
水道で血を洗っていると、すぐ側で心配そうに目を見開いて見上げている
昨夜は《すがりつき君》にもその傾向がみられたし、みんなもなんだかイラついていた
台風でひどく心細い思いをし、そしてまた相当不安だったのだろう
そんな中、魔女が姿を見せたことで、苛々と嬉しさがごちゃ混ぜになってこんなことになってしまったのかな・・
とにかく この辺りの主だったみんなも全員集まってくれた
結局昨夜は《すがりつき君》や《オッドアイタ》を始めとする果樹園部の数名も公園について来た
濡れていた猫の体をタオルで拭いたり
甘えたい子を撫でているうちに
みんなの気持ちは次第に落ち着いて来たようだ
空には綺麗な月と無数の星が姿を現して
野良猫軍団はいつものように月明かりの中、思い思いの格好でくつろぎ始めた
少し成長した《虎丸》と《おかんのお子さま》は相変わらずじぃーっとこちらを見詰めていて
《黒丸》がいつも通りひっそりと横になり、私に気付いて貰えるのを待っている
長い長い時間をみんなといた
台風が去り穏やかに空気が流れ、月の冴えた光りが辺りを照らし、無数の星がきらきらと瞬いている
濡れた猫の毛は乾き始めて、みんなの心は落ち着きを取り戻していた
もう深夜だ
帰りは台風で飛ばされた葉っぱの道を、いつも通りみんなで送ってくれた
あんなに用心深かった《虎丸》も、最近はいっちょまえに送ってくれるようになった
《すがりつき君》に言われた
「ぼくたちは まじょが おもってるより おりこうなんだよ」
そうだね、毎日苦労して工夫して生きてるもんね
おりこうに決まってるよね