現金な男
《魔女》
一週間ほど前のお話
水玉 「魔女、何がしたんだ?」
魔女 「え・・」
水玉 「俺らの毛をむしって・・」
魔女 「むしってんじゃなくて梳いてるの!」
水玉 「どっちにしろ 毛を取ってるんだベ!」
魔女 「家族ちぃが、みんなの毛が欲しいんだって」
水玉 「どして・・」
魔女 「みんなの毛で可愛い指人形を作るらしいよ」
水玉 「おお、前にけっきょんしきに飾ったってやつか!」
魔女 「うん ちょっと《水玉》、毛を入れた袋が風で飛んで行きそうだから押さえてて」
水玉 「わかった」
魔女 「あのお人形、軍団のみんながすごく可愛いって、お客様に評判だったんだよぉ!」
水玉 「それでまた作るのに俺らの毛が大量に必要だってわけだな」
魔女 「そういうこと」
水玉 「それはそれはご苦労様です ぺろっ!」
魔女 「なにやってんだ・・」
ユリぼうず式活用術
《ボンネット》
昨日魔女が作った高ぁ~い落とし穴
それを僕らは夜中に力を合わせて倒した
それから何人かの猫が箱の中に入って
何人かが箱の上に飛び乗って中の猫たちを脅す、っていう遊びを繰り返した
朝になって、すっかりひしゃげた箱は・・
《ユリぼうず》の遊び道具に変わっていた
魔女 「好きなだけやってろ・・」
憎いあんちくしょー
《バブー》
私も大嫌いなテレビの前のトゲトゲ
前に遊んでいて後ずさりし、それを踏んじゃった《ジョン ブリアン》
よっぽど痛かったみたいで
それ以来ずっとトゲトゲを憎んでる
今日は魔女が何かの箱から出しっぱなししていたポヨポヨしたものをくわえて来てトゲトゲにかぶせてた
それから自分でちょっと踏んでみて・・
いいかも・・ とつぶやいてた
私もちょっと踏んでみた
いいかも・・ と思った
こちらはちょっとトゲトゲが突き抜けている
《ジョン ブリアン》は頭がいいな
自虐的な女
《ジョン ブリアン》
僕はいまだ勝手、これほどある種の生きものからモテる人間を見たことがない
(勝手じゃなくて、かつて!)
とにかく魔女がいるところ、それらは群れを成してつきまとい
中にはストーカーみたいのもいる
そのことについて、僕がテレビから得た知識から質問したいと思います
僕 「あなたの体温は高いほうですか?」
魔女 「かなり低いです」
僕 「あなたは汗をかきますか?」
魔女 「かきません」
僕 「あなたのけちえきがたは何ですか?」
魔女 「Oポジティブ・・?」
僕 「はっきりしませんねぇ・・」
テレビから得た知識にはあまり当てはまらないようだ
魔女はへーしょきょーふしょーなので家中開けっぱなのがいけないと、僕は思う
網戸も嫌いなんだし
その生きもののあまりのしつこさに
魔女はこのところ幻覚をみるようになってしまったようだ
魔女の目が腫れてる・・
赤くなっちゃってる
それはいきなりのことだった
魔女が自分の目を思いっきりぶったんだ
僕らはびっくりして全員で目をおっぴらき、痛がってのけぞる魔女を見詰めた
《ユリぼうず》が走って行って、魔女の髪をかきむしる
《ユリぼうず》は魔女が苦しんだり痛がったりすると必ず魔女におっ被さってそういう風にする
それは魔女の痛さを増しているようでもあり、痛みを紛らわしているようでもある
僕 「魔女、いったいどうしたの?!」
魔女 「目が痛い・・」
僕 「それは分かってるよ・・ どうして自分の目をぶったりしたのさ」
魔女 「目の前に蚊がいた・・ い、今もいる」
僕 「どこ・・」
魔女 「こ、ここだ、ほら、今も上下に飛んでる!」
僕 「・・それ 毛だよ」
魔女 「け?!」
僕 「目の上に生えてる毛」
魔女 「まつげ・・?」
僕 「自分で目をパチパチさせるから動くんじゃん」
水玉 「何だよ! 魔女は自分のまつげとやらを蚊と間違えてぶちまくったのかよ!」
魔女 「・・」
凜 「それじゃ、《ボン兄ちゃん》よりもバカじゃないですか!」
僕 「え・・? 自分じゃないんだ・・」
水玉 「しかもよ・・ あんな小さな生き物相手に どんだけの力で殴ってんだよ・・ 大人気ねえよ」
魔女・・ とにかくその顔
早く治した方がいいよ